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茄子鉈の一族記

作者:マーたん
茄子鉈埻平は、ごく普通の人生を望んでいた。
安定した仕事、誰にも怯えずに眠れる夜、家族という言葉に胸を締めつけられない日常。
だがそれは、生まれた家を考えれば最初から叶わない願いだった。

茄子鉈家は、代々「人の人生の後始末」を生業としてきた一族である。
表向きは平凡な家庭の顔を持ちながら、裏では密告、口封じ、破滅の誘導――
誰かの不幸に深く関わることで生き延びてきた。

家を出て逃げたはずの埻平は、結局、父の一言によって呼び戻される。
断れない「仕事」。
殺しではなく、“人生を終わらせる”という役目。

最初は拒絶と嫌悪を抱きながらも、埻平は気づいてしまう。
自分がその役目に「向いている」ことを。
罪悪感を抱えたまま行動できる冷静さ、
人の壊れ方を直感的に理解できる感覚――
それは血か、環境か、それとも逃げ損なった結果なのか。

仕事を重ねるほど、埻平の中から「普通でありたい」という願いが削れていく。
家族を憎みながら、家族と同じ場所に立ってしまう恐怖。
善と悪の境界が曖昧になり、
やがて彼は問い始める。

――人は、生まれから逃げられるのか。
――それとも、逃げようとすること自体が、最初から許されていないのか。

これは英雄の物語ではない。
抗う者の物語でもない。
血縁という泥に沈みながら、それでも呼吸をやめない男の、
静かで残酷な人生の記録である。
第一回目
2025/12/13 11:49
第二回目
2025/12/13 11:55
第三回目
2025/12/13 12:03
第四回目
2025/12/13 13:35
第五回目
2025/12/14 07:26
第六回目
2025/12/15 07:10
第七回目
2025/12/17 07:07
第八回目
2025/12/17 07:15
第九回目
2025/12/21 16:34
第十回目
2025/12/24 07:02
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