マイカの学院生活
今回は、ダークエルフのマイカが主役です~。
マイカ(使用メーカー様:五百式立ち絵メーカー)
「……なあ、俺に何か用か?」
さっきから、いや、ここ数日ずっと後をつけられて、いい加減うんざりしてきた。最初は無視してたんだが、ここまでしつこいとさすがに気になる。
「あ……ご、ごめんなさい、あの……その……」
「悪いが急いでるんだ。言いたいことがあるならはっきり言えよ」
あ~、みるからに良いところのお嬢様って感じ。正直苦手なんだよな……。まあ、高慢ちきな勘違い令嬢さまよりは幾分かマシだけどよ。
「す、すいません! もし良かったら、お友達になってくれませんか?」
「……へ? 友達? 俺と?」
「はい!! お願いします! 中々声をかける勇気が無くって……」
友達か……これまでの人生にはいなかったからよく分かんねえけど、断る理由もないしな。
「別に構わないぜ。俺はマイカ。えっと?」
「私は、アミファです。よろしくお願いします、マイカちゃん!!」
ま、マイカちゃん!? うえっ!? そんな呼ばれ方されたことないからこそばゆいんだが!?
ここ領都バドルにあるバルバロス学院は、アルカリーゼ国内でも五本の指に数えられるほどの名門校らしい。特にこの学院は、家柄は関係なく、特殊な能力が無いと入学できないとあって、入ろうと思って入れるわけではない。
他でもない俺も、辺境伯令嬢であるりーぜロッテさまの推薦があって入学できたわけで。
正直、場違いじゃないかと思うけどさ、せっかく推薦してくれたりーぜロッテさまに恥をかかせるわけにもいかないし、あいつの役に立てるように死ぬ気で勉強は頑張っている。
それに、ここは変わり者ばかりで思ったほど堅苦しくないのが良いよな。このアミファだって、この俺に声をかけてくるなんて間違いなく変わり者だぜ。友達になりたいなんて言ってきたやつ、これで二人目だな。
「何々~? 今、私のこと考えたでしょうマイカ?」
そう、もう一人の変わり者は、こいつ。他人の心が読めるとかいうスキルを持っているネルだ。ただし、何でも分かるというわけではないらしい。詳しいことは知らねえ。
「遅かったなネル。早く飯食いに行こうぜ!」
ここの学院の最高なところは、美味い飯が食い放題ってところ。しかも無料だっていうから、食わねえともったいないだろ?
「……また食べるの? マイカったら、一日何食食べるつもり? あら? アミファじゃないの!」
ネルがわざとらしく俺の後ろに隠れていたアミファに声をかける。もちろん最初から気付いていただろうけどな。
「う……ご、ごきげんよう、ネルさま」
「ごきげんよう、アミファ。そこでなにしているのかしら?」
ネルは、フランドル伯爵の令嬢らしいけど、あまり貴族だということをひけらかさないからな。知っているってことは、やっぱりアミファも貴族なんだろうけど。
「ああ、俺の友達になりたいっていうから、今日からよろしくな!」
「そ、そうなのね……まあいいわ。よろしくアミファ」
「マイカさん、一緒にお昼でもどう?」
三人で食堂へ向かおうとすると、次々と他の男どもから声がかかる。奢ってくれるならともかく、ここは無料だ。何で一緒に飯を食わなくちゃならないんだよ!
「あ? とっとと失せな!!」
「ご、ごめんなさーい」
にらみを利かせればこんなもんだ。まったく情けない奴らだぜ。
「……マイカ? 良かったの、結構カッコよかったけど?」
「は? カッコイイ? あんなの(カケルさんに比べれば)オーク以下だろ?」
「さすがです……マイカちゃん、カッコイイ!!」
呆れるネルと瞳を輝かせるアミファを連れて食堂へと入る。
「何かしら? 人だかりが出来ているわね……」
ネルの指さす方を見ると食堂の一角が女子学生の人だかりになっている。ちっ、よりにもよって、俺たちの指定席じゃねえか。
「マイカちゃん、あ、あれは……王子さまがいらしているんだよ」
「王子さま? なんだそりゃ?」
「神聖ガーランド王国の王子コンラッド殿下よ。わざわざこの学院に留学してきたの。それにしても、本当にカッコいいわね。さすが本物の王子さまは違うわ……」
うっとりと王子を見つめるネル。
ふーん、サラさまとシルフィさまの弟ってことか……たしかに似てるな。
「仕方ねえ、今日は違う席で食おうぜ」
いつもの席が王子の取り巻きたちに占領されているので、少し離れた席で食べ始める。
いわゆるビュッフェスタイルなので、食べたいものを好きなだけ山盛りよそって大満足……だったんだが、例の王子さまがこちらにやって来やがる。
「これはこれは、貴女が噂のマイカさんですね。僕はコンラッド、同席させていただいても?」
なんで王子さまが俺のことを知ってやがるんだ? 大体噂ってなんだよ……。
「まあ、これはコンラッド殿下、どうぞどうぞ、お座りください!」
追い返そうと思ったら、ネルの奴が先に座らせちまった。まあいいか、飯の邪魔さえしなければ。
「ありがとうネル嬢、それにアミファ嬢も初めまして」
キモッ!? こいつ……まさか女全員の名前覚えてやがるのか?
「実はね、マイカさんに結婚を前提としたお付き合いをお願いしたい」
は? 突然何言ってんだこの王子さまは?
「……断る」
「そうか、ありがとう。実は君に一目ぼれしてしまってね、ってええええええええ!!? こ、断るって言ったの?」
「悪いな、俺は先約があるから、他を当たってくれよ」
「う、嘘だああああああ!!?」
泣きながら走り去るコンラッド殿下。
「ち、ちょっと本当に良かったの?」
「か、カッコイイです……マイカちゃん」
「ああ、良いんだよ、好きな男以外興味ないんだ」
そうだよ、あんなカッコイイ男知ってしまったら、みんなゴブリンかオークにしか見えなくなっちまった。ちゃんと責任とってくれよな、カケルさん。
「マイカに先約がいるって本当だったんだ……もしかして、その男、ロリコン?」
「いやあああ!! 私のマイカちゃんがロリコンの毒牙に……」
ロリコン? ああ、なんか美琴さんたちが言ってたな。貴族って異世界の言葉よく知ってるよな。でも違うんだよな、何だっけ、カケルさんが言っていた言葉……ああ!! 思い出した!!
「違うぞ二人とも、あいつはロリコンじゃない、オールラウンダーなんだよ!」
「「お、おーるらうんだー?」」
自慢げに胸を張るマイカと、初めて聞く単語に目をぱちくりするネルとアミファであった。