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 医務室で目覚めると、既に朝の十時を回ってしまっていて、一限の授業には間に合わなかった。

 昨夜ここまで運んでくれたマクアダムス卿は、医務室の先生達に「ひどい頭痛で医務室に行こうとしていた私をたまたま発見し、連れてきた」と説明してくれていたようだ。

 昨夜の宿直は、先日パティとお世話になったばかりの看護師さんと先生だったため、再び心配をかけることになってしまい、ちょっと申し訳ない。


「今日は無理しない方がいい」と再三忠告を受けたものの、今日はどうしても教室に顔を出したかった。もしかしたら、私に例の人型を送った人物が、呪いの成功を確かめるために、私の行動を探っているかもしれないと思ったからだ。

 授業に出席するには一旦居室に帰り、身支度をしないといけない。昨日部屋着のまま部屋を出てしまったので、一度制服に着替えなくては。病室で髪を整えていると、看護師さんがノックをしながら病室の外から声をかけてきた。


「ラヴィニアさん、すみません。

 アルバート殿下がどうしてもお見舞いされたいとこちらに来られていますが、どうされますか?」

「え~、アルバートがですか。もう大丈夫なので、適当なことを言って追い返していただけないですか?」


 私の返事を待たずに、病室のドアが急に開けられる。


「――聞こえてるよ、レイラ。ちょっといいかな」


 全然良くない。


 が、アルバートはずんずん病室に入り、ベッドの横の椅子に腰掛け長い足を組んだ。制服姿ということは、授業に出席している途中にここに立ち寄ったのだろうか。アルバートは少々苛立っているようだ。

 開いたドアの隙間から、すまなそうな表情の看護師さんがお辞儀をしながら去って行くのが見えた。


「授業はどうされたんですか」

「休んだよ。それより、どうしてこんなに事件ばかり起こすんだ。そんなに僕の気を引きたいの?」


 アルバートは言葉に静かな怒気を孕ませて私に尋ねた。


「なぜそんなことを言うのですか。今日ここにいるのは体調不良だからです」


私はアルバートの自意識過剰な勘違いに面食らってしまった。もしアルバートが、私の周りで起きる事件が自作自演だと思っているなら、相当な勘違いだ。


「それに、以前の誘拐は私が起こしたものではありません。あなたの関心を引きたいから起こした狂言だと思われているなら、本当に、本当に心外です」


 そう言い終わって、はたと気付いた。


 アンジェラ王后陛下も「私による狂言」の可能性を考えているのではないか。

 王后陛下は、「嫉妬に狂った息子の婚約者()が、息子の気を引くために問題を起こす可能性」を案じて、騎士団を送り込んでいるのでは。胸にざらりとした感触が広がる。


「王后陛下はアルバートと私をとても案じている」と、昨夜マクアダムス卿は言った。何を心配しているんだろう、と思ったがその時は深く考えなかった。

 もし、私が、学園内の騒動を手引きしていると誤解されているのだとしたら、辻褄が合う。学園内を護衛するにしては、少なすぎる騎士の人数。休日の外出先まで騎士にマークされていた私。なぜか、昨夜、部屋を出た私をタイミングよく見つけたマクアダムス卿。彼は、あの時たまたま庭園を通りかかったのではなく、私の行動を見張っていたのでは。

 マクアダムス卿はこれまで、ことあるごとにアルバートのことを気にしていた。昨日もそうだ。私が苦痛の中アルバートを呼んでほしいと伝えると、「『アルバートに』助けてもらいたいのか」と、彼は確認した。あの時は全く意味が分からなかったが、マクアダムス卿も私のことを、婚約者の気を引くための狂言を起こしている女だと思っていたのだ。

 騎士殿がこれまで私に見せてくれた気遣いも、さりげない優しさも、私に対する猜疑心を隠しながらの行動だったことになる。騎士殿がこれまでに見せた表情が、頭をよぎった。


 そんな風に思われていたなんて。――苦い感情が押し寄せる。


 アルバートも、王后陛下も、マクアダムス卿も誤解している。

 でも、私にはそうではないと言える証拠がない。


 アルバートは透き通った水色の瞳をまっすぐに私に向けてている。怖いほど整った顔には、全く表情がない。


「わかった。

 では、君は僕と今後、どうなりたい?」

「どう、とは?」

「結婚したいと思っている?」

「――わかりません」


 考える間もなく、反射的に答えてしまう。

 そこに私の意志なんて存在しない。あなたが、私をどうするか、それだけなのに。王族との婚約を断れる人間などいない。断る理由などないし、むしろ皆、望んで、喜んで輿入するはずだ。


「――アルバートはどうですか」

「わからないよ」


 長い沈黙が訪れた。

 自分は結局空虚な存在なのだ、と思い知らされた。どう振舞ってもヒロインと攻略対象の愛を深めるための小道具として動く駒なのだ。


 アルバートが急に立ち上がり、お大事に、とだけ言って去って行った。


アルバートは髪質やわらかめのシルバーブロンドで、少し癖がある髪型を気障な感じに流しています。

瞳はライトブルー。

ちなみに、ゲーム内では最初は優しいのにだんだんドS王子様っぽくなる…という想定です。

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