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30 物思い

 パフェを食べえたらもう16時過ぎになっていた。土曜日の門限は18時。後一軒、本当はケーキを食べに行く予定だったが、結局私たちはそのまま学園に帰って来た。もう一軒寄ると、門限に間に合わないかもしれなかったからだ。


 大きなパフェを食べたおかげでお腹は減っておらず、夕食には食堂に行かない事にした。


 みんな朝から動き続けていて若干疲れ気味だった。

 明日のダンスの練習は、午前中にダンス練習場で行う事にして、それぞれの部屋に解散となった。

 マクアダムス卿には、明日の待ち合わせ場所と時間を伝えてある。ダンスの講師としてマクアダムス卿を推薦したところ、キース先生はなぜか大喜びしていたので、なんとなく善行を積んだ気分になった。


 明日も絶対忙しい。


 部屋に帰ると、明日のダンスの曲を思い出すために、ピアノの楽譜を取り出した。明日は練習のために誰かがピアノを弾かないと。

 私もそれなりに弾けるが、練習なしで明日ダンスの伴奏に臨むのはちょっと不安だ。机に指を置いて、イメージトレーニング。それなりに、弾けるはずだ。


 今日買った紺色のベルベットのリボンを袋から取り出す。新しい紺色のリボンと、元々持っていたもう少し細いサテンの濃紺のリボン重ねて、ボウタイ風に結び、新しいヘアゴムにちくちくっと縫い付けた。すごく簡単だけど手っ取り早く可愛いヘアゴムが作れる。


 それにしても、今日は眼福だったな。


 キース先生の魅力をみんなに披露することが出来たし、先生によく似合う服やスーツ一式を見繕うことができた。

 パフェも美味しかったし…。

 初めて男性に、あーん、されてしまったし…。


 それにしても、あれは、無理矢理私がやらせてしまったんだろうか。

 何度も思い返すが、私、そんな事やってって言ってませんよね!?

 その前のあの発言、物欲し気に聞こえたのだろうか。

 いやいや、貴重な機会なんだからそんな辛気臭い顔やめてくださいって意味だったし、かなり直接的表現でそのことを伝えたつもりだけど。

 もしくは、騎士殿は誰かステキな女性とよくスイーツを食べに行っては「あーいう事」をしてて実はやり慣れてるのかも。それで、面倒くさい女子に遭遇したら、あーん、しときゃいいっしょ!? みたいに思ってるとか?


 あれほどの美形。キース先生みたいにオタクのベールに隠されていたならまだしも、周りは放っておかないだろうし女性経験もきっと豊富だろう。今日の私へのちょっとしたサービスも、一種のボランティア的に考えてもらえればいいや。


 それにしても、私って、前世でも今世でも、男慣れしてなさ過ぎて情けない。

 前世でも、男性とカフェに入った記憶はおろか、あーん、なんて経験は全くないんだから、我ながら正真正銘の干物女だったんだなあ、私って。

 前世なら、あの騎士殿よりも年上だったのに。


 シャワーを浴びてから部屋着に着替えて、ベッドに横になりつつ、日記帳に今日あった事をつらつらと書き連ねていく。


 今年の四月からが原作ゲームで描かれている世界のため、毎日何があったのかつぶさに記載しているのだが、これって本当に自分の生存のために必要な情報なのか、最近は少々疑問に思いつつ書き留めている。


 原作ゲームでは既に開始されている悪役令嬢からの嫌がらせは、まだ起きていない。なぜなら私が何の嫌がらせもしていないからだ。この世界の日常ではヒロインに誰も害悪を与えていないはずだ。

 一方、アルバートと私の関係は、原作ゲーム以上に冷え切っている気がするが、今のところ婚約破棄の瑕疵は完全にアルバートにある。

 学園内でのセシリアとの破廉恥な振る舞いも、このまま続けていたら王宮に届くことは避けられないだろう。

 我が家と血縁になることで、王位継承争いの現国王派閥に我が家を引き込む狙いがあった国王陛下の目論見が、息子の王子の不義で水に流れるのは、政治的にもマズいはず。

 そんなことが分からないアルバートではないのに、それでもどうしてもセシリアの魅力には抗えないということなのだろうか。


 愛って本当に盲目なんだわ。

 私には、よくわからん!


 前世でも「この人イケメンだなあ」って思っている人はいたけど、愛とか恋とか、そんな風に思うほど異性に焦がれたことはなかったなあ。

 一回くらい、あーもうこの人超大好き!死んじゃう!っていう恋に狂う気分を味わってみたい。

 生きるの死ぬのってガタガタ言ってる恋愛モノは前世でもたくさん読んだり見聞きしたけど、本当にそんな事って世の中に存在するのだろうか。

 お酒に弱い人がいるみたいに、恋で頭のタガが外れてしまいやすい人だけが体験できる、特殊な事なのだろうか。


 我ながら、寂しい独白だ。


 取り止めもなく書いているうちに、どんどん睡魔が押し寄せる。

 あ、こりゃこのまま寝てしまうな、と思った次の瞬間、やっぱり私は眠りに落ちていた。


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