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 苦々しい表情で二人を見送った後、


「レイラ!!」


 シャローナ、ミシェル、ローラが私に駆け寄り一斉に話し始める。


「まさかとは思ったけど、本当に殿下もターゲットにするとはね、あのクソ女!」

「怒ってる?大丈夫?」

「あんなにイチャついてたくせに、あの言い訳、二人とも頭おかしいわ!」


 いつもの賑やかさに思わず顔がほころぶ。重たい拡声器はベンチに置いて、おしゃべりに参加する。


「私なら全然平気よ、二人ともドクズでお似合いだと思うわ。婚約破棄の証拠が手に入って、せいせいした!みんな、協力してくれて、ありがとう。

 あ、シャローナ、頭に葉っぱ乗ってる。今回は張り込みが長かったもんね。出てきたとき、ミシェルもヨロヨロしてたし、ローラは出てこないし、――みんな大丈夫?」


 シャローナの頭の葉っぱを取ってあげる。シャローナの髪はツヤツヤの栗色だ。


「あらら。頭に葉っぱが乗ったままじゃ、かっこ悪かったわね」

「あたしはずうっと屈んでいたから足が痺れてたの。急に立ち上がったから、ふらふらしちゃったわ」

「ローラの録画はどうだった?」


 先ほど登場が遅れたローラを見ると、にんまりと微笑む。


「ばっちり撮れてるわよ~、殿下の浮気現場!」

「どれどれ!?」


 一斉に三人がローラが取り出した手のひらほどの手鏡をのぞき込む。この手鏡には、ウィル・オ・ウィスプの力がこめられていて、短い時間であれば映り込んだ像を保存することができる。こちらも、風紀委員の活動を開始するにあたり、誂えてもらった最新製品だ。

 手鏡の柄にはかわいらしい蔦の飾りがデザインされていて、その一部がスイッチになっている。ローラがそこを強く握ると、鏡には先ほどのシーンが鮮やかに映し出される。


「改めて見ると、本当にいやらしいシーンよね」


 ローラのつぶやきにコクコク頷いて同意する私たち。

 手鏡の中には、ひしと抱き合いイチャイチャしている二人がしっかり映し出されている。続いて、セシリアがびっくりした様子で何かを見ると、映像には風紀委員の三名が現れる。会話をしているが、この手鏡は映像しか映し出すことはできない。映像の中の私は、自分が想像していたよりもずっと冷静な表情だ。セシリアの手を引いて校舎に向かうアルバート。二人の後ろ姿を最後に映像は消え、手鏡は元のとおり覗き込む私たちの顔を映し出した。


「は~、ムカつくわ! 次から次へと男を漁って。学園を何だと思ってるのかしら」


 シャローナが自分のことのように怒りを露わにしている。怒っているのか、傷ついているのか、複雑な表情のミシェルが彼女の両手をぎゅっと握っている。怒って当たり前だ、彼女らもこの事件の当事者なのだ。

 むしろ、ここにいる四人は同じ被害にあったと言っていい。

 私は決意を改めて口にする。


「計画通り、コトを進めるわよ。これ以上、被害者を増やさないためにも…!」


 私たちは、お互いの顔を見合わせ、深く頷き合った。

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