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第996話 ホルボス村に向かって飛行する

 おしゃべりをしながらお茶を飲み外を見ていると、だんだんと景色が変わってくる。

 高度も上がっているね。

 高高度じゃないので甲板にも出られる。

 バリアが張ってあるので風も吹き込まないし良い感じだなあ。


 甲板で剣術組が木剣で稽古を始めた。

 やっぱコイシちゃんの動きは綺麗ね。

 カトレアさんはまっすぐだなあ。


 船舷から外を眺める。

 結構高い高度を飛んでいるので眼下の景色に実在感が無いね。

 街道を芥子粒みたいな小さな馬車が動いていた。


 船内に戻りラウンジを通って螺旋階段を降りて行く。

 貨物室のドアを開けるとヒューイが首を上げてこっちを見た。


「狭くない? 大丈夫」

《へーき、狭い場所落ち着く》

「そうなんだ」


 バケツにお水を入れておいてくれたのは馬丁さんかな、助かるな。

 ヒューイの横に座ってぼんやりと考え込む。

 貨物室はエンジンの静かなブーンという音だけで、たしかに落ち着くね。


「ヒューイは幸せ?」

《主と居ると楽しくて幸せ》


 そうかそうか、可愛いやつめ。

 彼のすべすべした首を撫でる。

 鱗がつやつやだね。


「じゃあ、また来るね」

《うん》


 私は貨物室を後にした。

 螺旋階段を上がって二層目へ。

 相変わらず御令嬢部屋は盛りあがっているようだ。


 メイン操縦室に戻った。


「おかえり」

「ただいまー」


 私はよっこらしょと艇長席によじ登った。


「エルマー、飛行はどう?」

「問題無し……」


 順調のようだね。


「カロル、錬金釜を飛空艇に付けるとなると、三等船室かな」

「そうね、スイートは客間だし、一等、二等はみんなが居る場所が減るし」


 ただ、三等に入れるとメイドさんたちの居場所が無くなるのよね。

 まあ、今の所、船中泊は無いから良いけどね。

 貴族のお嬢様には一人に一人はメイドさんがついているからのう。

 意外にかさばる。

 かといって二層目のミニキッチンはお茶を入れるのに使うし。

 シャワー室も無いと困るしね。


「三等に入れるかな」

「小型ので良いわよ、そんなに量を作る事はないでしょうから。錬金の下ごしらえと緊急の錬金に使えれば良いわ」

「解った、明日にでも鍛冶部の部長に聞いて見よう」

「助かるわ」


 なんのなんの、私はカロルの笑顔の為なら何だってするよ。

 ガドラガに行くときも活躍するだろうしね。


 カロルと二人でガドラガかあ。

 うぇひひ、夢が広がりんぐ。


「また変な顔をしているわね」

「エロい事を考えている……」


 おおっと、にやけていてもしょうが無いね。

 飛行に集中だ。

 といっても艇長は何もすることがないけどね。

 エルマーも自動操縦に入ったのでのんびりお茶を飲んでいる。


 そんな感じで何事も無く見慣れた景色に入って来た。

 王都近郊だね。

 ヒューム川が懐かしい感じ。


「広場……? 基地……?」

「基地に入れましょう、帰りはカタパルトで加速できるし」

「了解」

【ホルボス山基地へのアプローチコースを表示します】


 デインと音が鳴って地図ウインドウにアプローチコースが描かれた。

 エルマーが操舵輪を回す。

 船は速力を落とし、旋回し始めた。

 渓谷の中に入り込み、ホルボス山基地の着陸岩場が見えて来た。


【相対高度、十クレイド、九、八、七、六、五、三、二、一、ホルボス山基地到着です】


 エルマーは操舵輪を前に倒して微速前進し、エントランスに入った所で回頭させた。

 アダマンタイトの扉が開くと数が少なくなった学者さんたちが飛び跳ねてよろこんだ。


 まだ、残ってる人が居るのか。

 魔法塔に帰れよなあ。


 エルマーは危なげなく格納地点に着陸させた。

 私は伝声管の蓋を開ける。


「おしらせします、艇長のマコト・キンボールです。当船は予定通り、十六時十分ホルボス山基地に到着いたしました。三十分ほどの休憩を挟み、最終目的地王都へと出発します」


 よし。


 ぞろぞろと扉の向こうを歩く人の気配がする。


「マコト、下りても良いんだよな」


 カーチス兄ちゃんがドアを開けて聞いてきた。


「別に良いけど、すぐ出発だから早めに戻りなさいよ」

「兄貴にちょっと邸宅を見せるだけだな」

「すごい基地だね、聖女さん、あの人達は?」


 リチャードお兄さんはタラップの下でたむろっている学者さんを指さした。


「魔法塔の学者さん、ここはビアンカさまの遺跡だから調べているのよ」

「刑死した悪の聖女さんゆかりの場所なのかい」

「まあそうよ、この船もビアンカさまの遺産なの」

「それは凄いなあ」


 ビアンカさまは悪名高いから素人の人に事情が説明しにくいね。


 みんなと一緒にタラップを下りると邸宅の方から、トール王子とティルダ王女がドドドと走ってきた。


「聖女さまっ!! アダちゃんっ!!」

「アダちゃん!! 聖女さまっ!! 派閥のみなさまっ!!」

「おーい、帰ってきたよう、トール、ティルダ」


 三人は抱き合ってキャイキャイ喜んでいた。

 遅れてリーディア団長とガラリアさんがやってきた。


「聖女さま、お帰りなさい」

「そ、送迎、お疲れさま」

「アイアンリンド城でお土産一杯貰ったから一部下ろして行くわ、学者さんたちと食べて」

「かの鉄壁の城、アイアンリンドですか、一度見て見たいですね」

「秋にも行くから、よかったら付いて来なさいよ」

「良いのですか?」

「かまわないわよ」


 甲蟲騎士団は、もう身内だしね。


「アイアンリンドいきたーいっ」

「どうだったアダちゃんっ」

「大きくて立派だった、良い所みたいだ」


 秋にはトール王子とティルダ王女、甲虫騎士団の希望者も連れて行ってあげよう。

 そうしよう。

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[良い点] 999話!! [一言] 「ヒューイは幸せ?」 《主と居ると楽しくて幸せ》 そっか、そっか(*´꒳`*) リチャード兄さん、初めての領外のお出掛け。 トール王子とティルダ王女と守護竜ア…
[一言] そして明日で1000回目の更新…
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