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第989話 アイアンリンドの広場でセージくんのお披露目をする

「さて、触れ番が走って伝えたと思うが、このたび我がアイアンリンドの街も王都のように竜が守護してくれる事となった。ご存じの者も多いかと思うが、ドレザ山域に居た緑の賢者と呼ばれたワイバーンだ」


 朝っぱらだというのに、アイアンリンドの街の広場は庶民が押すな押すなの人出である。

 触れ番と言って公報の人が走って町内会に知らせて回ったらしい。

 フィルマン父さんは威厳のある態度で台上に立ち、朗々と宣言した。

 民衆が熱狂的に拍手をした。


「おらが街にも守護竜さまが」

「それもこれも聖女さまのお陰だなあ」

「また洗礼して女神さまを呼ぶのかなあ」


 呼びません。

 そうポンポン来られてたまるか。


 セージくんが台上に出て頭を下げた。


「お、おはようございます、ご紹介にあずかりましたセージと言います、皆さん仲良くしてくださいね」

「格好いいぞー、セージさーん」

「ドラゴン頭が素敵よ~~」


 アイアンリンドの民衆は乗りが良いなあ。


 セージくんはとことこと広場の真ん中に歩いてトンボを切り、ワイバーンの姿を取り戻した。


「「「「うおおおおおっ!!」」」」

「緑に光って素晴らしいわ」

「アイアンリンドにふさわしいドラゴンだっ!!」

「万歳、万歳っ!! 緑の賢者、万歳っ!!」


 民衆は盛りあがって凄い熱気だ。


「おおおおっ! 王都の守護竜もいるぞーっ!!」


 セージくんが持てはやされて我慢ができなかったのか、アダベルが広場の真ん中に駆けだしてトンボを切った。


 ボワンと煙が上がり、どでかい聖氷竜さまが現れた。

 セージくんもでかいが、アダベルは、その倍ぐらいあるね。


「うおおおっ!! 王都の守護竜アダベルさまだーっ!!」

「凄いっ、この目で見られるだなんてーっ!」


 アレだよね、アダベルって基本的に目立ちたがり屋だよな。

 アダベルの登場と共に無数の紙吹雪が舞い、楽団が陽気な音楽を鳴らした。


『飛ぶぞ』

『飛びますか』


 アダベルとセージくんは羽ばたき始めた。

 ぶわっぶわっと強い風が民衆に、我々に叩きつけられる。


 そして、二匹の竜はふわりと舞い上がって飛んだ。


「飛んだ~~」

「なんて綺麗なんだ……」


 街の上を舞い踊るように飛ぶ二頭のドラゴンは、それはそれは幻想的な光景で、うっとりするね。


「すごいっ!!」

「守護竜万歳~~!!」


 カロルが隣にいて、うっとりと空中の竜を見ていた。


「すごいわね、こんな光景が見れるなんて」

「マコトのおかげだな」

「そうね、コリンナ」

「よせやい」


 照れくさい。

 セージくんとアダベルが偉いのであって、私は縁を繋いだにすぎないよ。


 私たちはうっとりと何時までも竜たちの空中乱舞を見ていた。

 ああ、きっと、この光景は大人になっても思い出すなあ。

 派閥のみんなと、アダベルと、セージくんと、ブロウライト家の人達と、良い思い出が作れたな。


 ふわりと二頭の竜は下りてきて、ぼわんと煙につつまれて人化した。

 民衆の拍手喝采の中で、二人は手を前にした小洒落たお辞儀をして、セージくんのお披露目式は終わった。


 民衆は興奮して街に帰っていく。


「良い街ですね、フィルマン父さん」

「ああ、皆、単純だが気持ちがいい民が多いんだ」


 国境の街だからなあ。

 住民も脳筋が多いんだろうねえ。


「さあ、お昼まで自由行動です。アイアンリンドの街は滅多に来る事ができないので、色々と楽しみましょう」

「「「はーい」」」


 一応領袖なので皆に号令を掛けてみた。


「マコトはどこに行くの?」

「金物屋さん、エクスカリバー包丁を買わねば」

「あれは良く切れるよな、私も買おう」


 アダベルが買っても料理とかしないでしょう、とは思ったが、大人なので黙っていた。


 男衆と剣術部がフル装備で通りかかった。


「どこいくの?」

「平原で狩りだ、マコトも来るか?」

「いかない」


 まあ、何か倒して来てくれたまえ。


「んじゃ、行ってくるぜ」


 カーチス兄ちゃんたちは勇ましく街門の方へと去っていった。


 お洒落組とヒルダさん、ジュリちゃんの組が通りかかった。


「みんなはどこに行くの」

「お買い物ですわ、近くに宝石の鉱山があって、アクセサリーが安いのですよ」

「銀山も近いですしね」


 さすが辺境、天然資源も豊富だなあ。


 しかし、最近は、剣術組、お洒落組、執行部と三つに分かれる事が多いね。


 さて、私は金物屋だ。

 商店街はあっちだな。


「知らない街は空気が違っていて楽しいわね」

「うん、街を散歩するのも好き」

「街によって、本当に色々なんだなあ」


 話ながら商店街へと向かう。


 う、僧服の人が物欲しそうな目で私を見ている。

 アイアンリンド教会の人かな。


 やばい、ミサを頼まれたりするかな。

 と、思ったら、いきなり坊さんはビターンと石畳に体を投げ出した。

 ご、五体投地?


「聖女さまっ、ご尊顔を拝し奉り、このリンドン恐悦至極にございますっ」

「は、はい」

「ああ、お言葉を掛けて頂くとは、なんというありがたき幸せっ!」


 というと、また立ってビターンと五体投地した。

 や、やべえ、狂信者の人だ。


 と、思ったらワラワラと兵隊さんが現れてリンドン師を拘束した。


「リンドン師、聖女さまは、今、休日でございますぞ」

「いや、しかし、アイアンリンドの民の為にミサを、ミサを是非お願いしたくっ!!」

「御領主さまからの厳命です、聖女さまの休日を侵害することまかりならぬ。だそうです、あきらめてくださいっ」

「ええーっ!! せっかくの聖女さまのご来訪なのに、そんな、そんな殺生なあ」


 リンドン師は兵隊に両肩を押さえられて、子供のようにうわーんと泣いた。

 私らはドン引きである。


 兵隊さんが、早く行ってください、と目で合図してくれたので、足早に現場を立ち去る。


「坊さんって、すごいな、いかれてる」

「まあ、信仰心があらぶっているのだからしかたがないね」

「ミサしてやればいいのに」

「あちこちでミサしてたら、マコトの時間が無くなっちゃうわよ、コリンナ」

「入場料を取って儲けろ」


 コリンナちゃん、お金で時間は買えないんだよ。

 最近はあまり困って無いし。

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