第985話 アイアンリンドの晩餐は肉づくし②
コッペリアさんがワゴンを押してきて、私たちにスープを配膳してくれる。
透明でタマネギが入ってる系のスープだね。
BBQコンロに付属するように六人掛けぐらいのテーブルがあってお客さんはそこで飲み食いするようである。
ああ、良い匂いだなあ。
「みなさまお飲み物の方は? 皆様がお運びになったアンドレアの新酒をお持ちできますよ」
どうしようかな。
この世界、ワインとかお酒の内に入って無いんだよね。
子供でも結構カプカプ飲むのである。
そのせいでアルコール依存症の人が沢山いるのだが。
「それでは一杯だけ、お願いします」
「はい、お持ちします」
コッペリアさんは他の人にも飲み物を聞いた。
大体はメリッサさんのお家の赤ワインを頼んだようだ。
ちょっと味を見てみたいものね。
燃えさかるコンロの上で肉の塊がジュウジュウ音を立てて焼かれていく。
味付けはシンプルに塩と胡椒みたいだね。
「よし、焼けたぞ、最初の一枚はみんなで少しずつ食べろ」
そう言ってフィルマン父さんはエクスカリバー包丁ですぱすぱとお肉を切って皿に入れてくれた。
「おおっ、いいなっ、あ、ピーマンは要らない」
「食べないと駄目だ、守護竜」
フィルマン父さんに怒られてアダベルはしおしおとなった。
なんで肉ばっかり好きかなこのドラゴンは。
ピーマンとか、人参とか、火の通りやすい野菜も一緒に付けてくれるみたいだね。
私の前にもお皿が来た。
おお、湯気を立てたお肉、美味しそう。
少しと言っていたが、普通に前世のステーキ二百グラムぐらいはありそう。
こっちの世界の人は沢山たべるからね。
パクリ。
あつあつあつあつ、ジュワーでうまうまである。
「おいしいぞっ、カーチスの父、肉を焼くの上手いな!」
「まかせろ、戦場では肉焼きのフィルマンと有名なんだ」
戦場でもこんな感じに楽しくご飯を食べていたのかあ。
それはそれで楽しい光景だね。
「お肉が柔らかくて、美味しいな、これは良い肉だ」
「うまいよなっ、コリンナっ」
コリンナちゃんはモグモグしながらうなずいた。
コッペリアさんがパンが入った籠とサラダのボウルを運んで来た。
パンは白パンで美味しそうだなあ。
「懐かしいわね、昔もこうやってみんなでワイワイとお肉を食べたなあ」
「小さい頃に知り合っていれば、もっと色々楽しかったのだけどなあ」
「そのころマコトはただのパン屋の娘だろ」
「それはそうか」
聖女になって、魔法学園に入ったからカロルに出会えたわけで、子供の頃は世界が違いすぎで接点が無いか。
そう考えると、ここに集まったみんなは何かの奇跡みたいに思えてくるから不思議だなあ。
お、スープも味わいがあって美味しい。
肉とか野菜とかはジュージューとその場で焼くけど、他の物はキッチンでちゃんと作った味だな。
「タマネギが甘いわね。ピーマンも美味しいわ」
「辛くないか、このピーマン」
アダベルは文句を言いながらも、もぎゅもぎゅとピーマンを食べている。
えらいぞ。
というか、フィルマン父さん、どかどか肉をこちらに載せすぎである。
そんなには食べないぞ。
「うむむ」
コリンナちゃんがもうすでに負けそうになっているな。
カロルがささっと、コリンナちゃんのお皿からアダベルのお皿にお肉を移した。
「おお、ありがとう、肉ならどれだけでも入るぞ」
「いやあ、さすがは守護竜、食べっぷりがいいな」
「うむ、竜は体が資本だからなっ」
ピーマンはたしかにうっすらと辛い。
唐辛子の仲間だからだろうかね。
でも、この品種の味わいは好きかな。
一息ついて、グラスに入ったワインを頂く。
うーん、真っ赤で良い色のワインね。
もともと前世からお酒を飲む方じゃないので味とかは解らないのだけれども、なんだか飲みやすくて、味が深い気がするね。
アダベルは葡萄酒が好きじゃ無いのか、葡萄ジュースである。
子供だからだろうね。
ああ、気取ったフルコースの食事もいいんだけど、こういう雑な肉宴会も良いねえ。
美味しくて楽しい。
派閥のみんなも楽しく食べているようだ。
「うむ、この肉の食べ方は気取って無くて良い。楽しいし美味しい」
「そうか、解るか守護竜どの」
「婆っちゃの牧場で今度やってみよう」
「あそこの肉は凄いからなあ、確かに一度やるべきだ」
「そうだろう、カーチスの父よ」
ああ、ダシャ婆ちゃんの牧場のお肉だと凄い事になりそうだなあ。
そういや、カーチス兄ちゃんにコンロを寄贈してもらって船に乗せてあるから出来るな。
今度、牧場に行って相談して見よう
みんなでたらふく肉をたべ、野菜を食べて楽しい晩餐会は終わった。
いやあ、美味しかったなあ。
食後にはお茶と林檎が出たので、皆でシャリシャリと食べる。
「林檎も美味いな!」
「隣の領の特産物だ。林檎酒にしたりするぞ」
ああ、ゲームの方でのバッドエンドのカロルの林檎酒はここから来てるのか。
「カロルはリンゴ酒作れるでしょ」
「うん、作れるよ、でもどうして?」
「作れそうだったから。体に良いリンゴ酒とか作れないかな」
「体に? 滋養強壮みたいな」
カロルはうーんとあごに指を当てて考え込んだ。
「滋養強壮剤をつけ込んで常飲すると体が強くなるようなお酒が造れないかなって思って」
「ああ、なるほど」
カロルはリチャードさんの方を見た。
今、彼は楽しそうにセージくんやエバンスと話していた。
「良いわね、調べてみるわ」
「おねがいします」
よし、林檎養命酒でリチャード兄ちゃんを健康にする計画の開始であるのだ。
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