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第982話 アイアンリンド城の大ホールに通される

「カーチスの父ちゃん、馬屋はどこだ? ヒューイを入れたい」

「馬屋は下だな。そのガタイでは階段はつかえぬな」

「なあに、飛んでいくさ。んじゃ行ってくる」

《行ってくる、主よ》

「はい、行ってらっしゃい」


 アダベルはヒューイに跨がって発着場から飛び出した。

 鞍もついてないのに上手いなあ。

 というか、ヒューイが勝手に飛んでるっぽいな。


「おい、馬屋に行ってヒューイ号を丁寧におもてなしするように伝えよ。聖女さまの騎獣だ」

「はっ!」


 フィルマン父さんが部下の人に馬屋への伝言を伝えて送りだした。

 やっぱり武張った辺境伯領だから、部下の人もキビキビしてるね。


 しかし、これがブロウライト領の空か。

 私は空を見上げる。

 もうすぐ夕暮れだ、東の方から夜がゆっくり近づいて来ている感じだね。


「うおっ」


 さすがに北の方なので風が冷たい。

 私はドアを開けてお城の中に入った。


 フィルマン父さんの案内でアイアンリンド城の中を歩く。

 あまり装飾がない簡素な廊下だね。

 質実剛健な感じだ。


 甲冑が飾ってあったり、壁に十字に剣が飾ってあったりするな。

 アップルトン城は華麗で美しいが、アイアンリンド城は無骨でどっしりしておる。

 実際に戦う城って雰囲気で凄みさえ感じるね。


 廊下の突き当たりの部屋が大ホールのようだ。

 ここは城主の謁見の間であるし、宴会の間でもあるし、一族が晩餐を取る部屋でもあるな。

 というか、まあ、お城の最上階に広い部屋を作っておいて、状況に応じて色々使うのである。

 古いお城だから個別に執務室とか、ダイニングホールとか作らないのよね。

 今は謁見の玉座も、晩餐用の大テーブルも部屋の隅に片付けられていて、ソファーなどの応接セットが並んでいる。


「さあ、みな、長旅で疲れたろう、くつろいでくれ」

「おほほ、全然疲れてはいませんですわ」

「まあ、旅から帰ったならば、こういうのがお約束だ。我が家が一番」

「そうですわね」


 フィルマン父さんとイザベラ母さんが率先して座ると、リチャード兄ちゃんとカーチス兄ちゃんも座った。

 私たちも思い思いの場所に座る。


「父上、飛空艇はどうでしたか」

「素晴らしい乗り心地であった。リチャード、飛空艇ならお前も王都に出るのが簡単だぞ」

「そうですわね、地上の旅はリチャードには無理ですが、飛空艇なら平気ですわね」

「そうなんですか」

「帰りに乗って行くか? 兄貴がタウンハウスの面倒を見てくれると親父も助かるだろうし」

「ああ、そういう手があるのか、だけど、聖女さまにご迷惑では?」


 おっと、リチャード兄ちゃんがこっちを見てきた。


「こちらはかまいませんよ、とりあえず王都には帰るので、十人ぐらいまでは余計に増えても問題は無いです」


 重量とか問題ならばヒューイとか積んでられなかったしね。


「そ、そうなのか、憧れの王都に行けるのか……」

「聖女さま、リチャードは病弱なのでブロウライト領から出た事がありませんの。遠乗りでも熱を出して寝込むぐらいですのよ」


 それは体が弱いなあ。

 だけど、蒼穹の覇者号ならラウンジでくつろいでいれば王都だしな。

 旅行に掛かる苦労がべらぼうに少ない。


「よし、良い機会だ、リチャード、お前にブロウライト家の名代としてタウンハウス管理の仕事を命じる。ついでに王都で他の貴族と交流を深めてこい」

「はっ、それは、父様ではなく辺境伯閣下としての命令でございましょうか?」

「そうだ、リチャードも、カーチスも王都に行ってしまうのは少し寂しいが、可愛い子には旅をさせよ、ということわざもある。王都で見聞を深めてまいれ」

「は、はいっ、ありがとうございますっ」


 おー、リチャード兄ちゃんが入れ替わりに王都に来るのか。

 これは良いね。


「聖女さま、よろしくおねがいいたします」

「まかせて、部屋でくつろいでいれば、すぐ王都だし」

「ああ、なんだか楽しみだなあ。いかん胸がどきどきしてきた」


 あはは、子供みたいな所もあるんだなあ、リチャード兄ちゃん。

 温厚で良い人っぽいな。

 こういう人は好きだよ。


「さて、今日泊まる部屋へ荷物を運びたまえ。部屋割りはユリーシャ殿、おねがいできるか?」

「お任せ下さいフィルマン閣下」


 ゆりゆり先輩が深くお辞儀をした。

 うーん、部屋割りといえば彼女の出番だなあ。


 アダベルがドアを開けてホールに入って来た。


「ヒューイを頼んできたよ」

「ありがとうアダベル」

「私はお姉ちゃんだからさ、弟分の面倒はみるんだ」


 偉いぞ、親分ドラゴンよ。


 家令さんを先頭に泊まる部屋を案内してもらう事になった。


「このお城は何人ぐらい泊まれるんですか?」

「何万人でも籠城できますが、貴族のお客様の場合、百名程度ですか」


 まあ、お城の曲輪の中に街があったから、何万人でも籠城できるのだろうさ。

 お城で快適に過ごすのは百人ぐらいか。

 王家の巡行があった場合の最大規模ぐらいの感じなのだろうね。

 あまり王族来ないらしいけど。


「騎士ユーリンゲン様はご希望はございますか?」

「うむ、女子と二人で泊まりたい……」


 べしっとゆりゆり先輩がロイドちゃんの後ろ頭にチョップをくれた。


「男衆は全員同じ部屋でよろしいですわ」

「ええー、それは狭い」

「続き間で、四人四人でお別れになるのがよろしいかと」

「それが良いですわね。領袖とカロルさまはお二人部屋ですか」

「え、あー、あのその」

「コ、コリンナとアダベルが一緒が良いわ」


 そ、そうだよねカロル。

 うんうん、いつも通りが安全だ、うん。


 このヘタレめという目でゆりゆり先輩に見られたが、いいのだ。

 そんなに急速に仲を深めても良い事はないのだ。

 たぶん。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 騎士ユーリンゲン殿、今居る女子メンツで貴方と二人きりになって楽しい女子がいないのでは……?w
[良い点] ゆりゆり先輩チョップ!!(  ̄∇ ̄)ノ★)) [一言] カーチス兄ちゃんのリチャード兄ちゃんは奥ゆかしい感じですな。 アップルトンは重工業ではないので、空気もそんなに悪くなさそうだし。 …
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