第981話 船はアイアンリンド城に着陸する
前方ディスプレイ一杯に大きないかめしい城が映し出された。
領城のアイアンリンド城だな。
さすがは辺境防衛の要の城だけあって、天守閣に飛空艇発着場がしつらえてあった。
「まあ、築城してから飛空艇が着陸した事は無いがな」
「主にバーベキューパーティなどに使っていましたわ」
そりゃまあ、でっかいベランダだもんな。
王家の人もなかなかブロウライト領には来ないだろう。
「いやあ、潰さなくてよかったよ」
「戦争の時とかに王家の人は飛空艇で来なかったんですか?」
「虎の子の白銀の城号を戦場近くに持って来たく無い、というのと、戦地には軍隊と一緒に来るから普通は行軍なんだよ」
ここらへんは何度も戦場になっているのだが、飛空艇は用事が無かったのか。
アイアンリンド城は名にし負う堅城で、これまで何度もジーンの侵攻をはばんできた。
何回か落ちた事もあるんだが、それも軍ではなくて、味方の裏切りが原因なのだ。
しかし、大きいお城だなあ。
カロルは巧みに蒼穹の覇者号を操って、するりと発着場に着陸した。
【蒼穹の覇者号、タッチダウン】
わあっと拍手が上がった。
「カロルお疲れ様」
「いえいえ、なんでもないわ」
カロルも上手くなってきたなあ。
艇長として負けられん。
私は伝声管の蓋を開いた。
「お知らせします、こちらは艇長のマコト・キンボールです。本船は少しのトラブルで時間を食いましたが、十五時三十二分に目的地、アイアンリンド城に到着しました。押し合わず係員の案内に従って下船してください」
みなが席から立ち上がった。
「よーしついたのかっ、ここがカーチスの城か」
「そうだぞアダベル、アイアンリンド城にようこそ」
「うむっ、よきにはからえっ」
アダベルはいつも偉そうであるなあ。
「ありがとう、領袖、とても快適な旅だった」
「本当に夢のような速度ですわね。朝に王都に居たとは思えませんわ」
そりゃあ、街道を行くと一週間半とか掛かる距離だからねえ。
飛空艇があると世界が狭くなるね。
さて、みんなが下りるまでまって、メイン操縦室をチェック。
エンジンルームのエバンズとセージくんも廊下を歩いているね。
「私がヒューイを出してやろう」
「おねがいねアダベル」
「まかせておけ、可愛い弟分だ」
そういってアダベルは飛空艇の奧に駆けていった。
「エイダさん、後部ハッチを開けてあげて」
【了解です】
さて、私も下りるかな。
カロルと連れだってメイン操縦室を後にする。
タラップを下りると、線の細いカーチスみたいなイケメンが出迎えてくれた。
「アイアンリンド城にようこそ、聖女様。カーチスの兄のリチャードです」
「これはこれはお兄さま、マコト・キンボールです、よろしくおねがいします」
「リチャードお兄さん、その、ひさしぶりです」
「カロリーヌ、ああ、懐かしいね、来てくれて嬉しいよ」
リチャード兄さんはふんわりと笑顔を浮かべた。
ああ、そうか、カロルはこの城に来た事があってリチャード兄さんとも知り合いなんだな。
「兄貴、元気そうだな」
「ああ、春になってだいぶ楽になったよ、おかえりカーチス」
どうやらリチャード兄さんは今日は具合が良いようだ。
こっそりオプティカルアナライズを掛けてやれ。
ピッ。
おー、どこも異常は無いなあ。
病弱な体質なんだろうね。
これは養命酒案件ですわ。
船の後部からヒューイを引いてアダベルがやってきた。
「おお、お前が噂のリチャードか、私は守護竜のアダベル、この子は弟分のヒューイだ」
《ヒューイだ》
いや、ヒューイ、念話は私とアダベル以外聞こえないからね。
「これはこれは、高名な守護竜さまにお目にかかれて光栄です、リチャードともうします」
「うむ、そこの二人がカーチスの妾のカトレアとコイシだ、本妻はエルザだ」
おい、なに仕切ってやがる守護竜。
「ひあああっ、ここここんにちはでござる、カトレア・ピッカリンでありますっ」
「コイシ・コミンビッチだみょん、北方生まれですみょん」
「これはこれは、可愛らしいお嬢さんがた、カーチスをよろしくね。兄のリチャードです」
アダベルがきょろきょろと見回して、エバンズとセージを引っ張って来た。
「こいつがセージ、緑の賢者とかいうワイバーンだ。こいつはエバンズ、飛空艇博士だ」
「こ、こんにちわ、セージです、ワイバーンをさっきまでやってました」
「エバンズです、単なる飛空艇技師です」
「おおっ! これは高名な二つ名ワイバーンの方、お噂はかねがね。エバンズ博士もお目にかかれて光栄です、栄光の極天号の建造記は読ませてもらいました」
「お、お恥ずかしい」
やっぱりリチャード兄さんはインテリだな。
「さあ、みな、ホールに入りたまえよ、ここは吹きさらしで少々寒い」
「そうですわ、くつろいで旅の疲れを癒やしてくださいませ」
フィルマン父さんとイザベラ母さんがドアを開けて領城の中へ皆を誘った。
「あとで、他の奴も紹介してやるからよ、兄貴」
「なんだか凄い派閥だね……」
急にリチャード兄さんが膝をついた。
「ロイド王子、ご尊顔を拝し奉り……」
「ちがう、私は遍歴の騎士、ユーリンゲンである、ゆめゆめ間違えてはいけない、というか、立ち上がってください、体に悪いですよ」
「暖かいお言葉ありがとうございます。というか、ユーリンゲン様ですか、そうですか」
「そうなのです、リチャードさん」
まったく、無駄に身分が高い王子様は邪魔だな。
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