第977話 アンドレア領城を発ってブロウライト領城へと向かう
物見台から一階まで下りる。
こっちのウイングはワインセラーになっているようで、カーチス兄ちゃんとか男衆がワインを飲んでいた。
「おお、マコト、お前達も飲めよう」
「飛空艇の操縦があるから飲めないんだよっ」
酔っ払ったカーチス兄ちゃんがムカつくのでエリアヒールを掛けて全員の酔いを覚ましてやった。
「あ……」
「おっと、酔ってたなあ」
「よっていましたぞ、殿」
「酔っていたみょん」
エルマーも飲んでたけど、彼の酔いは大人しいっぽいね。
「助かりましたわ、マコトさま」
カーチス兄ちゃんのお世話をするエルザさんは大変だよなあ。
「いやあ、今年の新酒が良い出来でなあ」
「カーチスは飲み過ぎだ……」
しかし、結構大きい施設だね。
今は稼働してないのか、大きな絞り器や巨大な鉢が置いてあった。
「葡萄酒の仕込み時期以外は静かな物ですわ」
「そうなんだ、へー」
地下に下りる階段があるから、貯蔵は地下でやってるのかな。
生産施設って、なんかワクワクするね。
「さあ、そろそろブロウライト領に飛ぶわよ」
「お、もうそんな時間か」
「今度はお泊まりで来てくださいませ」
「良いワインの領に泊まるのは良いな」
男衆は酒盛りが好きだなあ。
カーチス兄ちゃんたちと合流して中庭に出た。
領城の人がワイン樽を沢山転がして並べている。
フィルマン父さんとイザベラ母さん、クリスチャンお父さんとロジーヌお母さんも居るな。
「ああ、聖女様、お土産のワインは五樽ほどで足りますかな」
「五樽……」
「ブロウライト閣下には三樽お分けしますぞ」
「それは助かる、感謝する、クリスチャン」
「いえいえ、何をおっしゃいますやら、閣下とお近づきになれた喜びは、こんな物では表せません」
「もう、お父様ったら」
「あと、聖女さまには、これを、秘蔵の六百十三年物です」
「あ、ありがとうございます」
なんだか古びた瓶のワインを貰った。
ビンテージワインなんか貰っても困るぞ。
「本当にメリッサと仲良くして頂いて、感謝の念にたえません、今後ともどうか、我が娘をお願いいたします」
「よかったな領袖、凄く貴重な年のワインだ」
すっごい高そうだなあ。
教皇様か学園長にあげようかな。
ヒューイに乗ったアダベルが中庭に入ってきた。
「やあ、もう行くのか、マコト」
「そろそろ出発よ、城下はどうだった?」
「楽しい街だった。みんな付いて来て最後には領歌をみんなで合唱したぞ」
それはそれは、楽しいイベントだったなあ。
《くしやきはうまかった》
「よし、また食べにこような、ヒューイ」
《うん》
ヒューイを後部貨物室に入れると、オスカーとアダベルが鞍を外すのを手伝ってくれた。
【ワインは甲板に積みますか?】
「おねがいできるかな?」
【了解しました】
蒼穹の覇者号の脇からマジックハンドが展開されてワイン樽を甲板に運び上げる。
「なんでも出来るのだな、そうか、甲板に物資を載せて動かせるのか」
フィルマン父さんは蒼穹の覇者号の軍事利用を考えておるな。
補給用の輸送船にしても相当に便利であろうね。
みながぞろぞろと船に搭乗していく。
クリスチャンお父さんが一歩前に出て、私の手を取った。
「このたびは素晴らしい経験をありがとうございました、聖女様。また秋にお願いすると思いますが、その時には是非領城にお泊まりくださいませ」
「はい、また来ますよ、沢山のワインありがとうございました」
「また是非いらしてくださいましね。メリッサ、お勉強を頑張るのですよ」
「はいママ、パパ、行ってきます」
メリッサさんは笑ってタラップを上がっていった。
さて、私も乗り込もう。
タラップを上がってメイン操縦室へ入る。
艇長席によじ登る。
「操縦は……?」
「行きは私が、帰りはエルマーがお願いね」
「解った、カロリーヌ……」
帰りも仕事が無いのか私は。
楽でいいけどね。
「エイダさん、乗り遅れている人は居ない?」
【はい、エバンズ博士もエンジンルームに居ます】
なんであの人はエンジンルームが好きかな。
とりあえず、みんな乗ったようだ。
ディスプレイにスイートに移るゆりゆり先輩とお洒落組が見えた。
すばやい。
「エンジン始動、出力上げます」
【了解、蒼穹の覇者号、テイクオフ】
ふわりと浮遊感があって船は垂直離陸を始めた。
どんどん、領城が下に下がって行くような感じ。
クリスチャンお父さんとロジーヌお母さんは、船を見上げていつまでも手を振っていた。
カロルが操舵輪を切って船首を回頭していく。
出力を上げて船の速度を上げて飛ぶ。
曇って少し風が出てきたけど、船が流されるほどじゃないようね。
「ワイバーンとか悪い奴出てこないかな」
「にゃーん」
「げろげろ」
やめろ、フラグを立てんな。
低山の深い森の上を快速で飛んでいく。
だいたい一時間弱で着くね。
意外に近い。
【マスターマコト、アンノウン出現】
え?
【照合、グリーンワイバーンです】
んもう、アダベルがフラグを立てるから。
緑色のワイバーンが高山からこちらに向けて飛んで来ているみたいだ。
「よし、やっつけよう」
アダベルが立ち上がった。
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