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第968話 晩餐後に怪しい提案が来た

 みなでぞろぞろと食堂に入る。


「今日のお献立はなに?」

「今日はシチューハンバーグ、人参のスープ、トマトサラダ、黒パンよ」

「おーっ」


 寮の晩餐にシチューハンバーグは初めてかも。

 これはおいしそうだ。


 トレイに料理を乗せていき、最後にケトルからお茶をカップに注いでテーブルに持っていった。


 シナモンの良い匂いがするね。


 みなが揃ったので食事のご挨拶だ。


「いただきます」

「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」


 パクリ。

 おお~~、これは美味しい肉汁たっぷりのハンバーグだね。

 ハンバーグ専門店のような味だ。

 シチューも、こくがあって美味しい。

 うまうま。


 やっぱり寮の食事は美味しいね。

 トマトサラダもさっぱりして良い感じ。


「明日はアンドレア領とブロウライト領に父兄を送っていくのね」

「そうそう、朝から直接タウンハウスに飛空艇で乗り付けるよ」

「助かりますわ~。お父様もお母様も旅費が節約できるって大喜びですの」


 メリッサさんがパンをむしりながらそう言った。

 たしかに一週間ぐらいの旅だし、お金が掛かるのよね。

 もっとも家臣団の移動は変わらないから、節約できるのは領主の旅行費ぐらいだけどね。


「派閥のみんなで週末旅行だなんて、素敵ですわ~」

「旅程は決まりましたか?」

「アンドレア領に昼頃ついて、領城でお昼ご飯、その後ブロウライト領に夕方ついて領城で一泊、日曜日のお昼頃学園に戻ってくる感じよ」


 フィルマン父さんとクリスチャン父さんが喧々諤々けんけんがくがくの議論を重ねてこうなった。

 明日はカーチス兄ちゃんの城で一泊であるよ。

 楽しみだなあ。


「お父様も蒼穹の覇者号に乗れるってとても喜んでいましてよ」

「滅多に乗れる物じゃないですものね」


 まあ、最近は気軽にマイクロバスみたいな扱いをしているが、とんでもない豪華飛空艇なんだよなあ。

 とりあえず、ひさびさの長距離だから今晩はちゃんと寝ないとね。


「ああ、黄金週間が終わってしまう」

「いろいろ楽しかったみょんよ」

「まだまだダンジョンに行き足りないっ」


 またカトレアさんが脳筋な事を言ってるなあ。


「旅行中、ヒューイはどうするの?」

「あ」


 どうしようかね。

 二日だから別に厩舎に預けっぱなしでも良いと思うけど……。


「飛空艇に積めるかな」

「船尾の貨物室なら大丈夫じゃない?」

「まあ、旅行先でヒューイ号に乗れますのね、素敵だわ」

「立派な竜馬ですものね」


(ヒューイ、旅行に行く?)

《いく》


 おお、ここからでも念話が届くな。

 快諾であった。

 蒼穹の覇者号を空中空母みたいに使う練習とかしようかな。

 発進着艦訓練だ。


 さて、ご飯が終わったので、食器を返却口に置いた。

 あー、美味しかったなハンバーグシチュー。


 席に戻るとダルシーがお茶を入れてくれていた。

 ありがとうありがとう。


 お茶を飲んでいると、食堂入り口から煌びやかなご令嬢がやってきた。

 ご令嬢はしゃなりしゃなりと歩いて来て私の前に来た。


「聖女候補さん、お話があるのですけれど」

「なんですか?」


 知らないご令嬢だな。

 ドレスの豪華さを見ると伯爵以上かな。


「ノエラ・ゲッド伯爵令嬢……」


 ヒルダさんが小声で名前を教えてくれた。


「お人払いを願いたいのですけれど」


 食堂で何言ってんだ、こいつ。


「密談したいの?」

「そうですわ、あなたと、できればオルブライト様も」


 なんの用かなあ。

 あんまり友好的な感じがしないのだけれども。


「私の部屋に行きますか?」

「オルブライト様のお部屋ですか、良いですわね」


 ノエラ嬢は羽扇子をぱしりと開いて口元を隠し、おほほと笑った。


「私かユリーシャ様をご同席なされてください……」


 ヒルダさんの小声は良く通るなあ。


「ヒルダさんも一緒で良い?」

「……」


 ノエラ嬢はヒルダさんを上から下までじろじろと見た。


「まあ、よろしいでしょう。許可いたしますわ」


 なんか上から目線令嬢だなあ。


 あまり気がすすまないが、席を立ってエレベーターホールに出て、エレベーターに乗った。


 五階について、カロルの部屋まで歩いた。

 部屋に入るとノエラ嬢は鼻を鳴らした。


「変な匂いですわ」

「錬金してますから」


 さて、応接セットにみんなで座った。


「お願いと言うのはですね、あのワガママ者のケリー・ホルストを懲らしめますから、手を貸して欲しいのですわ」

「は?」

「もちろん嫌とは言いませんわよね、あなたは女神を呼ぶほどの聖女候補かもしれませんが、貴族の位としては男爵の娘、私の言う事を聞く義務がありますわ」


 私は机をバンと叩いて立ち上がった。


「お前かっ!! 毒飼い令嬢はっ!!」

「お、おまえ? し、失礼じゃなくって、パン屋の娘の分際でっ」

「ダルシー、護衛女騎士ドミトリーガードさんを呼んで来て、こいつとっ捕まえるわ」

「はい、マコトさま」


 ダルシーが姿を現した。


「お、お待ちなさいっ! あなたもケリーに酷い目に遭わされていたのでしょう、鬱憤を晴らすチャンスですのよ、なぜ解りませんのっ」

「鬱憤は自分で晴らしたから問題無い、お前は護衛女騎士ドミトリーガードに捕まって放校されろ」


 放校と聞いてノエラ嬢は顔色を変えた。


「そ、そんな事、わ、私は王府の中枢にいるゲット家の……」

「ゲット家の王府での役職は厩舎監督、領は中規模、普通のご令嬢ですから、恨みを買ってもなんでもありません。ちなみにゲット家は王家派閥です」

「な、なにを言うのっ!! あなたは誰っ?」

「申し遅れました、ヒルダ・マーラー、マーラー家の当主です」

「ひ、ひいいいいっ!! ど、毒蜘蛛令嬢っ!!」


 なんだ、知らなかったのか。

 毒業界令嬢の横の繋がりは無いのかね。

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[気になる点] 他の話では『ノエラ・ゲット』『ゲット家』だけど、この話だけ『ゲッ【ド】』になってる?
[良い点] 自分から(絶望コースに)入っていくのか···(例の虐待おじさん並みの困惑
[一言] 毒業界令嬢ってなんじゃよwww パワーワードめいたものを感じる。 さてマーラーさん家の舎弟コースか、はたまたポイしちゃうのか。
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