第957話 子供達と王都観光三昧
子供達と一緒に大神殿を出発である。
ヒューイの上に子供達が鈴なりになって道行く人達が微笑んでいるね。
彼も心得ていて、小さな羽でちびっ子が落ちないように押さえている。
まあちびっ子はニャーリンを胸に抱いて危なっかしいのだけれども。
ヒューイに乗り切れなかった子供はぶうぶう不満を漏らしている。
「喧嘩しないの、順番に乗っていきなさい」
私はヒューイの轡を取って併走している。
「ねえねえ聖女さま、最初はどこにいくのう」
「最初は女中通りの向こうのお土産通りね」
「そんな心躍る場所があるんだっ」
「わりとお店とかは固まっているのよ」
子供達は魔物と一緒で動きが読めないのでダルシーにも監視して貰っている。
保母の女官さんの苦労が解るね。
国立劇場が見えて来た。
女中通りは劇場の先の路地を入った所だ。
皆を引き連れて通りに突入する。
「おお、ここが女中通りか」
「歩いているのはメイドさんばっかりだよ」
「わ、このメイド服可愛い」
子供達はわきゃわきゃ言いながらあちこちに注意を向けるから大変だな。
「なによ、今日は子守なの聖女さン」
「なんか女中通りに行くと会うわね、アンジェリカ」
ポッティンジャー公爵派の諜報メイドのアンジェリカであった。
「ああもう、あぶないわよ」
ヒューイから落ちそうになった子供をアンジェリカは助けてくれた。
意外に良い奴であるのだ。
「王都土産を買いに来たのよ、なにかお勧めある?」
「お土産かあ、王道は消え物ね、お菓子とか、この奧のお土産街に沢山王都銘菓を売ってるわ」
「やっぱり消え物ね」
「記念品だったら大神殿で女神様グッズかしらね。お土産街の物は質があまり良く無いわよ」
一昨日の女神様降臨事件で大神殿ではアダベル洗礼式記念グッズが売れに売れて嬉しい悲鳴を上げているそうだ。
便乗して女神様グッズなどを出して売り上げを伸ばしているらしい。
巨匠の描いた女神様版画がそろそろできあがるかな。
「それじゃがんばってね」
アンジェリカは行ってしまった。
敵ながら良い奴である。
女中街を抜けると、お土産物が軒を連ねるお土産物街である。
「あんまり一人でうろうろしないのよ、ヒューイをここに繋いでおくから迷ったらここに帰ってきなさいね」
「「「「「「はーいっ!」」」」」
子供達がわあっと散らばった。
やっぱりお土産物屋は華やかで楽しいね。
王都近郊で作られた陶器とか、お皿とか、カップとかも売っている。
村の三馬鹿も真面目な顔をして見ているな。
お土産の銘菓はクッキー系が多いね。
生菓子は傷むからね。
「ペナント買おうかなあ」
「やめとけよう、ペンとかインク壺とかどうだ? 王都って書いてある」
「記念品は良いなあ」
「お兄ちゃん、何か買うの」
「ガラリアに何か買ってあげたいな、クッキーとかゴーフルとかどうだろう」
そういやお土産が必要なのは村の三人とトール王子とティルダ王女だけだな。
孤児院の子供は関係ないや。
まあ、こういう場所は楽しいから良いんだけどね。
「ポスターとか、絵はがきは後で巨匠がくれるよ」
「あ、そうか、大神殿の方がいいものが多いよね、聖女さま」
「そうそう」
無料だしね。
大神殿には雰囲気が壊れるからって大きいお土産屋は無くて、宿坊にちょっとコーナーがあるだけなんだけど、お菓子を置く店舗とかあっても楽しいかもなあ。
修道院のワインの飲み比べとかも面白いかもね。
トール王子の影からペスが顔を出していたので、わしゃわしゃ撫でてチーズをやった。
ティルダ王女の影からもジョンが顔を出したので撫でてチーズを上げる。
君たちもお疲れだったね。
「お、今日はペスだった」
「私はジョンだったー、いつもありがとうねー」
王子と王女も影犬たちをわしゃわしゃした。
「私にもチーズをくれ」
食いしん坊守護竜が私の袖を引いた。
しょうが無いなあ、アダベルの口にもチーズを放り込んだ。
「うまいうまい」
ヒューイが物欲しそうな顔をしていたのでチーズを口に放り込んだ。
《うまいうまい》
竜族だからか同じ反応だね。
「おいガキっ、テイムしてない魔物を街にいれんなっ!」
「きゃーっ!!」
うお、チンピラ風味の冒険者たちが剣を抜いて孤児の角兎に斬りかかろうとしたぞ。
障壁を張って角兎を守る。
ガッチャーン!
「え、なんだこりゃ」
「やめろおまえ、この子のペットだぞ」
アダベルがタタタと冒険者の前に出た。
「ああ? 隷属の首輪をしてねえだろっ、魔物だろうがよっ!」
「首に鑑札かかってるだろっ」
「はあ、何言ってんのお前っ」
うーん古式テイムとか滅多に見ないから認知がされてないんだなあ。
孤児のみんなが従魔を連れてきているわけじゃなくて、半分ぐらいの子は孤児院に置いてきてある。
ちなみにアダベルの頭にはカエルが乗っている。
「やめなさい、聖心教の司祭、マコト・キンボールです。この鑑札の札が古式テイムの証明となります。従魔はこの子たちの財産です、害してはいけません」
「はあ? 聖女、嘘つけっ」
「にゃろー、私は守護竜だぞっ」
「嘘つけ嘘つけ、俺は冒険者だ、魔物を狩る権利があるっ」
チンピラ冒険者たちは、なおも剣を振り上げた。
そしてすすすと寄ってきたダルシーに思い切り殴られた。
「聖女さまのお顔を見て解らないような罰当たりは徹底的に粛正します」
「な、なんだこのメイドはっ!」
「にゃろーっ!!」
顔はにこやかだが目が笑ってない聖騎士が五人、三人のチンピラ冒険者を囲んだ。
「ちょっと君たち大神殿に来てもらおうかね」
「な、なんだよーっ!!」
「いいからいいから」
そう言って、聖騎士さんたちはチンピラ冒険者を連行していった。
うん、まあ、強く生きろ。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




