第956話 金曜日はキンボール家で目を覚ます
小鳥の鳴く音で目が覚めた。
一瞬自分がどこに居るのか解らなくなったが、キンボール家だと思いだした。
んくっと伸びをする。
カーテンを開けると朝の光があふれて、今日も一日良い天気のようだ。
洗顔や用足しをして乗馬服に着替える。
足下はブーツだね。
ハーフブーツしかないから長いのが欲しいなあ。
ダイニングに行って、お養父様、お養母様、お義兄様に朝のご挨拶である。
キンボール家に居るとお嬢様モードになって上品な感じ。
女子寮だとコリンナちゃんに引っ張られて下町の地が出るよなあ。
「あら、乗馬服、かわいいわね、マコトちゃん」
「良く似合っているね、ブラッドが小さい頃の服か」
「ぴったりで良かったよ」
家族にも乗馬服は好評のようだ。
「ダルシーちゃん、出てきなさい」
「は、はい、奥様」
ダルシーが現れた。
「みんなで朝ご飯を食べますよ、ダルシーちゃんも座って座って」
「い、いえ、そのおかまいなく」
「養女のメイドは娘と同じよ、観念して席につきなさい」
「は、はい」
お養母様のコミュ力は底がしれないぜ。
ダルシーも交えて私たちは朝食を食べた。
そんなに凝った朝食じゃないけど、雰囲気が良いよね。
アットホームである。
「マコトは今日は何をするのかね?」
「今日の予定は、飛空艇でホルボス村にトール王子とティルダ王女をつれて行くぐらいですか」
「ああ、王子さまたちの王都見物も終わりなんだね」
「王子様と王女様は王都を楽しめたかしら」
「すごく喜んでいましたよ」
子供達はみんな楽しそうだったわね。
良い黄金週間の思い出ができたんじゃないかな。
女神様にも会えたし、テイマー体験もしたしね。
来週には皇弟さんが王都入りするからホルボス村に居てほしいな。
もう諜報部隊は連れてこないとは思うけど、念の為ね。
さて朝食が終わったので、私はぴょこたんと椅子から飛び降りた。
「では、私は帰りますね、また来週末に泊まりにきますよ」
「まあ、もう行っちゃうのマコトちゃん、もうちょっとゆっくりしていきなさいよ」
「いえいえ、子供達に予定を聞いたりしなければいけませんから」
実家で半日のたのたして暮らすのも魅力的だけどね。
でもまあ、子供達の都合を聞いておくのだ。
早くホルボス村に帰りたいかもしれないからね。
……、それは無いか。
厩舎に行って馬丁さんにヒューイの鞍を付けて貰う。
手順を覚えて私も付けられるようにしないと。
「おはようヒューイ」
《おはよう》
ヒューイのご機嫌も良いようだ。
私はひらりと彼に跨がった。
おおっ、乗馬服は楽だな。
スカートと違って下半身がしっかりガードされてる感があるね。
「いってらっしゃいマコトちゃん」
「トール王子とティルダ王女によろしくな」
「気を付けてなー」
キンボール家の家族が家の前で見送ってくれた。
「行ってきますね、それじゃまた」
私も手を振ってヒューイを走らせる。
今日も良い天気だねえ。
ぱたぱたとヒューイを走らせて大神殿へ。
馬を駐める場所は大神殿の正面近くにある。
「これは聖女さま、お帰りなさい」
「ヒューイをちょっとおねがいね」
「かしこまりました」
騎馬溜まりには聖騎士さんがいて挨拶をしてくれた。
ヒューイを繋ぐと近くの馬がおびえるね。
大丈夫だよ、ヒューイは乱暴しないから。
聖騎士さんはうっとりとヒューイを見ていた。
やっぱ格好いいからね。
正面階段を上がって行くとリンダさんがすっとんできた。
この人はなんですぐやってくるかな。
聖女様センサーとかが付いているのだろうか。
「おはようございますマコト様」
「おはようリンダさん、今日は良い天気ね」
「そうですね、暖かくて気持ちがよいです」
正面玄関を上がりきる。
今日も大神殿は朝から巡礼の信者さんでいっぱいだね。
「マコト~~!!」
めざとく私を見つけてアダベルがドドドと駆けよって来た。
頭にはカエルのトトメス、肩にはクロを乗せている。
君はマスコットが多すぎだよ。
「おはようマコト、ヒューイも一緒か」
「そうよ、馬溜まりに繋いできた」
「今日は何して遊ぶんだっ」
「そんな毎日遊ばないわよ」
「黄金週間は遊びの一週間ではないのかーっ」
子供は遊びの一週間で良いわね。
大人は遊びの半週間ぐらいだし、職務によっては遊びはない事もあるね。
孤児院の方から子供達がドドドと駆けよって来た。
「マコねえちゃ~~ん」
「マコトおねえちゃんっ!!」
「おねえちゃんっ!!」
「聖女さま~!!」
「聖女さんっ!」
私の呼び方も子供によっていろいろだな。
みんなそれぞれペットを持っているね。
ピョンピョンと角兎が付いてくる子もいる。
「あそぼうあそぼうっ」
「そのまえに、トール王子とティルダ王女と村の三人は今日ホルボス村に帰るのだけど、いつ帰りたい?」
五人の子供はガーンと擬音が聞こえそうな感じの表情を浮かべた。
「帰りたくな~い」
「王都に永住したいです」
「村に帰らねばならないのかあ」
「僕は忘れていたよ」
「王都楽しかったなあ」
すっかり王都好きになってしまっていたようだ。
まあ、華やかで何でもあるからね。
「王子さまたちと、村の子が帰るとさびし~」
「孤児院の子になりなよ~~」
「うわ~~、なりて~~」
そりゃあ無理だセルジュ。
あと、君のジャイアントラビットがうぞうぞ動いてうっとおしいぞ。
「それじゃ、今日一日王都で遊んで、夕方に帰る?」
「そうした~い」
「どうするどうする、どこに行こうか」
「行きたい所はだいたい回ったけどな」
「しばらく王都には来れないからなあ」
「あ、とうちゃんかあちゃんにお土産買わないと、怒られるっ」
「そうだなっ」
今日はお土産探しと、王都観光の総仕上げという所かな。
私も付き合うかな。
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