第947話 ヒューイを学園の厩舎に入れる
さて、カロルと一緒にヒューイに乗って学園内をポクリポクリと歩いている訳だが、厩舎はどこだ?
「図書館の裏手よ」
「ありがとうカロル」
ポクリポクリ。
ヒューイの乗り心地はいいね。
あまり揺れなくてどっしりしている。
図書館の向こうに大きめの厩舎棟があった。
馬丁さんたちが立派な馬のお世話をしているね。
騎獣は奧に一匹だけ、水馬が居た。
水陸両用馬とか乗ってる生徒がいるのか。
私とカロルはヒューイから下りた。
馬丁さんたちがこちらをちらちら見ている。
「こんにちは~、責任者の方はいらっしゃいますか」
奧から中年のおっちゃんが出てきた。
「へい、ワシが馬丁頭のトッドですが」
「この子のお世話をお願いしたいのですが、可能ですか」
「こりゃまた……、すごい竜馬ですなあ、真っ白な奴は初めてみましたわ」
トッドさんはヒューイを見て感嘆の声を上げた。
「馬房の枠は空いてやすよ、事務局に行って申し込んでくだせえ。馬丁も必要ですかい?」
「後日、大神殿から馬丁を手配してくれるようですが、それまではお願いしたいです」
「わかりやした。いやあ、竜馬の世話ができるたあ、長生きはするもんですな」
「お願いしますね」
「はい、聖女さんの騎獣ですから誰も手抜きはしませんでしょう。ではお預かりします」
「ブルルン」
ヒューイは一声鳴いて厩舎の奧に連れていかれた。
「おいおい、誰だこんなすげえ騎獣を連れてきたのは」
厩舎の中で、大柄で目付きの鋭い二年生が声を上げると、馬丁が私の方を指さした。
「ガキじゃねえか、おい、お前、これはお前には過ぎた騎獣だ、俺によこせよ」
「え、嫌だけど」
「坊ちゃん、坊ちゃん、まずいですよ」
「ああ? うるせえよっ! こんなチビ助に竜馬が乗れるわけねえだろっ! 隷属の首輪もしてねえしよ」
なんだ、この失礼な奴は。
あ、ダルシーが出てきた。
何か怒ってる。
「たたきのめしましょう」
「ダルシー、もう少し様子をみましょう」
私はダルシーの肩に手を置いてなだめた。
「マコトの事を知らない生徒もいるのね」
「二年生だしね」
馬丁さんが失礼君に耳打ちをした。
「え、聖女? マジかよっ」
私の正体をばらしたようだ。
のっそりと目付きの悪い二年生は私の前に出てきた。
「パスカルだ、ガトリング伯爵家。よろしくな聖女さん。で、幾らであの竜馬を売る?」
「売らねえよ、何言ってんだ、お前」
「あんたの体格じゃあ、あの竜馬がもったいねえ、俺にふさわしい騎獣だから売ってくれよ」
イラ。
ぶっとばすかこいつ。
「どうせ、教会の金で買ったんだろ、もっと大人しくて白い馬を渡すからよう、売ってくれ」
「ガトリングさん、あなた、竜馬が幾らすると思ってるの? 一億ドランクでは効かないわよ。あなたのお家はそんなにお金があるのかしら」
カロルが突っ込むと、パスカルはちょっと顔色を変えた。
「そ、そんなにか……」
「竜の一種だし、この大きさは唯一無二だし、そして真っ白の竜馬なんか居ないわよ。伯爵家が手を出せるものじゃないわ」
パスカルはあごに手を当てて考え込んだ。
「坊ちゃん、教会を怒らせると破門されますぜ」
「まじかー。よし、売ってくれなくていい、貸してくれ」
「絶対に嫌だけど、というかふざけんなよお前」
「頼むよ、夏にレースがあるんだ、あの騎獣なら我が校に勝利を呼び込める」
「すいませんね、パスカル坊ちゃんはレース馬鹿でね。騎乗部をやってるんでさあ」
ああ、学園の騎乗部の奴なのか。
「ヒューイは古式でテイムしてあるから、私にしか乗れないし、だいたいお前は態度が悪いから貸さないよ」
パスカルはあからさまに、しまったなあという顔をした。
そして草地に膝を付くと土下座をした。
「侮って悪かった。謝る、機嫌を直してくれ、聖女さんっ」
は?
なんで土下座までするんだ?
「夏の大会に勝てないと騎乗部は廃部になっちまうんだ、頼むっ!」
「しらんよ、勝手に廃部になれ」
「なんとか、ケルピーを手に入れたんだが、それじゃあ、王立騎士学校に勝てねえんだっ」
「それは王立騎士学校の方がレースは強いわよね」
「知ってるのカロル」
「夏の風物詩だからね、騎士学校だと層が厚いし、特殊な騎獣も使うわよ」
レースかあ、面白そうではあるなあ。
パスカルは失礼男子だが。
しかし、廃部の危機かあ、テンプレ展開だなあ。
「せっかくだから、騎乗部に乗り方を教えてもらえば?」
「確かに騎乗技術は覚えないとだけど」
「よし、懇切丁寧に教える、だから頼む、仕上がりによってはレースの選手にしても良い、助けると思って頼むよ」
「まあ、考えておくよ」
「頼む、この通りだ」
圧迫土下座をするのはやめろい、パスカルめ。
付き合っているとキリが無いのでパスカルは放っておいて事務局に向かって歩き出す。
「ぷ、まだ土下座してるわよ」
「失礼な奴かと思ったんだけど、あれは馬鹿なんだな」
「そうね、でも一生懸命なのは伝わったわ」
「まあね」
事務局で手続きをした。
管理費は月に五万ドランクであった。
結構高いなあ。
貴族の学校だからしかたがないけどね。
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