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第941話 木曜日はケーナさんのお葬式に行く

 眼を覚ましてベッドのカーテンを開ける。

 うん、今日も良い天気だね。

 小雨の方がお葬式って雰囲気だけど、寒いからね。


 コリンナちゃんと目があった。


「おはよう、コリンナちゃん」

「おはよー、マコト」


 ハシゴを下りて、洗顔して歯を磨いて、用を足す。

 ダルシーがケトルを持って来てお茶を入れてくれる。


「今日はお葬式だな」

「そうだね、切ないね」

「麻薬禍でも結構死んでるし、ジーン皇国のも手をこまねいていたら学校が吹っ飛ぶ所だった、マコトが気に病む事じゃない」

「聖女候補としては辛いのよ。死ぬ前に行き会えればなあ」

「即死だと現場に居ないとどうにもならないだろう」


 そう言ってコリンナちゃんはお茶を口に含んだ。

 解ってはいるんだけどね。

 人死にはなるべく少なくしたいね。

 派閥のみんなも一人も欠けないで卒業を迎えたい。


 光の空に祝福を、というゲームはイベントが派手だからなあ。

 あと、潰せずに残っているイベントはエルマールートのプリシラのイベントか。

 これも気を付けないと沢山の人が死ぬイベントだ。


 あとは三年生になってからのポッティンジャー公爵派との全面対決だな。

 カロルとの友情エンドだと、たしか起こらなかったと思うのだけれども。


 結構ゲーム内の歴史と、今の状況がもの凄く違っていて、これからどうなるかはさっぱり解らない。

 状況が軟着陸するなら、ビビアンとケビン王子の結婚も別にかまわないとは思うのよ。

 内戦よりは、ずっとましだよなあ。


 お茶を飲み終わって、カチンと音を立ててカップを置く。

 コリンナちゃんも飲み終わった。


 二人で連れ立って205号室を出て施錠する。


 階段を下りてエレベーターホールに行くと、派閥のみんながいる。

 皆でぞろぞろと食堂に入る。

 さすがに生徒が少ないね。

 半分ぐらいか。


 クララにナッツポリッジを頼んで、受け取りトレイの上に置く。

 ケトルから冷めたお茶をカップに注いで、テーブルまで運ぶ。


「いただきます」

「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」


 パクリ、ポリポリ。

 ナッツポリッジは歯触りが独特でいいなあ。


「今日はケーナさんのお葬式ね」

「惜しい人を亡くした」

「明るくて親切だったみょん」


 みんなポリッジを食べながらしんみりしてしまった。

 ここは乙女ゲームの世界で妙にピカピカしているけど、中世の欧州モデルではあるので、結構簡単に人は死ぬ。

 つまんない事で命を落とすんだよなあ。


「お葬式は貴族街のサロート教会ですわね。告別式の後、北門から共同墓地へと運ばれます」

「馬車がいるのね」

「派閥大会の時の割り振りで良いと思います」

「カロル、乗せてくれる?」

「良いわよ」


 教会の馬車を使ってもいいんだけど、今回の葬儀を取り仕切るのは私じゃ無くて、サロート教会の司祭さんだからなあ。


「喪服は着なくていいのか?」

「学生は制服が喪服代わりになります」

「そうか、エッケをしょっていくのは駄目か」

「駄目です、儀礼短剣までですわ」


 さすがヒルダさん、お葬式の作法に詳しいね。


「なんだったら収納袋に入れていく?」

「ああ、そうするか、マコト頼む」

「私も頼むみょんなあ」


 なんかの時に武装できると心強いからね。


 さて、ポリッジも食べおわったので食器返却口にトレイを置く。


 さあて、お葬式に行くか~~。

 寮の玄関を出て馬車溜まりに向かう。

 お葬式に行く生徒が多いのか、結構混んでるね。


「おはよう、マコト」

「おはよう……」


 カーチス兄ちゃんとエルマーが挨拶してきた。

 エルザさんとコイシちゃんがカーチス兄ちゃんに近寄っていった。

 カトレアさんはヒルダさんと一緒だ。


「マコト、コリンナ、こっちよ」

「ありがと」

「ありがとう、助かるよ」


 派閥大会の時と違ってケーベロス家の馬車は無いからね。


 やっとオルブライト家の馬車に乗り込んだが、混雑しているのでなかなか動かないね。

 やっと、ブロウライト馬車を追うようにオルブライト馬車は動きだした。


 ガラガラと馬車は西回りに貴族街を目指す。

 アップルトンの貴族は上級も下級も貴族街に住んでいる事が多いんだけど、法衣貴族さんたちは下町とか庶民の街に住んでたりする。

 ケーベロス家とか、キンボール家とかだな。

 貴族街の方が緑も多いし静かなのでタウンハウスを作るならそっちと、結構な人気なのよね。

 王都の別荘みたいなもんです。


 貴族街に入り、ちょっと大きめの教会がサロート教会である。

 オルブライト馬車は大きめの駐車場に入って行く。


「さて、着いたわよ」

「意外に近い」


 馬車から下りて見回すと学校の鐘撞き塔が遠くに見えた。


「おお、マコトおはよう」

「おはようマコトくん」


 アダベルと学園長が挨拶をしてきた。

 ちゃんと喪服を着てるじゃん、アダベル。


「えへへ、いいだろ」

「死んだ姪の喪服なんだ、アダベルに丁度良いかと思ってね」

「なるほど、ぴったりですね」

「ちょっと樟脳くさい」


 虫除けに樟脳を入れていたようだ。

 アダベルに近づくとふんわりと樟脳の独特の匂いがした。

 でも良く似合っていて可愛いぞ、アダベル。

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― 新着の感想 ―
[一言] 多分欧州で喪服が黒が一般的になり始めた時期よね フランスは除く
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