第936話 ダシャ婆ちゃん一家を乗せて一路カメオ村に
派閥の仲間を乗せてブイーーンと大神殿着、駐めるのはいつもの練兵場だね。
着陸すると、ダシャ婆ちゃんの一家と子供達が寄ってきた。
アダベルが甲板からポーンと飛び降りた。
下でわやわややっている。
「さて、いこうかー」
「行きましょうマコト」
みんなでぞろぞろとラウンジを抜けて第二層へ下り船内を通ってハッチから下りた。
「あらあら、聖女様、飛空艇で送ってくださるって、本当に良いんですの?」
「ええ、かまいませんよ、そんなに遠くありませんし」
「馬車で三日かかるんだけどね」
ダシャ婆ちゃんのお孫さんがつぶやいた。
「空飛ぶとはやいー」
「そうですよ、どうぞどうぞ」
ダルシーとアンヌさんが現れて、ダシャ婆ちゃん一行を船内に案内した。
「俺は馬車があるんで、婆ちゃんと嫁を送って行ってくだせい。一生の思い出になるでしょう」
「馬車はどこですか」
お孫さんは馬車溜まりを指さした。
ちょっと煤けた幌馬車がそうみたいだ。
「飛空艇で運びますよ。馬は-」
「馬は貨物室に入れれば良いでしょう、私が見ますよ」
すすすとリンダさんが寄ってきた。
この人は、私と行動するチャンスを逃さないウーマンだなあ。
エイダさんに後部ハッチを開けて貰い、リンダさんが貨物室に馬を繋いだ。
馬は四頭ぐらい入るね。
エイダさんがマジックハンドを展開して、幌馬車を甲板に乗せた。
ダルシーとアンヌさんがロープを掛けて固定した。
「凄いわね飛空艇」
「中も凄いんだよ、婆っちゃ。案内するよ」
「あんないあんないっ」
孤児たちもちゃっかり乗って行く気まんまんであるな。
トール王子とティルダ王女も乗り込み、リーディア団長も乗った。
「あんたたちも来なさいよ」
「良いの聖女さん」
「へーきへーき」
「やったぜ」
「聖女様話がわかる~」
村の三馬鹿も積み込み完了である。
さて、さっきは第二操縦室を使ったけど、今度はメイン操縦室だね。
お客様とか、子供たちはラウンジに居て貰えばいいかな。
タラップを上がり、メイン操縦室に入る。
操縦室に居るのは、カロル、コリンナちゃん、エルマーにカーチス兄ちゃんだな。
飛空艇フルセットだね。
「ああ、ブロウライトのタウンハウスに寄ってくれねえか、親父も積んで行こう」
「なんでまた」
「ジャーキー食わしたら食い付いた。生産牧場を見たいって言ってたよ」
ブロウライト領の特産は牛肉だからね、美味しい畜産の秘訣を知りたいのか。
カーチス兄ちゃんにタウンハウスの場所を聞いて蒼穹の覇者号、離陸である。
ブロウライトのタウンハウスは学園の近く、貴族街にあった。
馬車溜まりに飛空艇を下ろした。
屋敷からフィルマン父さんが出てきた。
カーチスがメイン操縦室から出ていった。
「おう、どうした?」
「この前のジャーキーの牧場に行くから、親父も来ないか?」
「そりゃ、いいな」
フィルマン父さんは快諾して蒼穹の覇者号に乗ってきた。
「やあ、領袖、楽しい企画だな。牧場主はどこだ?」
「一層のラウンジよ」
「解った、挨拶をしてくるぜ」
のっしのっしとフィルマン父さんはメイン操縦室を出て行った。
家令さんと、奥方さんに見送られて、蒼穹の覇者号は離陸した。
垂直上昇をして、マップを見ながらカメオ村の方角へ操舵輪をまわして回頭する。
出力レバーを最大にして蒼穹の覇者号は王都上空を後にする。
バキューンという感じに飛べる。
わりと低空飛行だから速度感が凄い。
ちょっとずつ操舵輪を引き上げ高度を上げていく。
「やっぱり飛空艇は良いわね」
カロルは船長帽をかぶってそう言った。
私も船長帽装備である。
やっぱり高速の乗り物を操縦する事でしか得られない栄養はあるね。
わっはっは、痛快痛快。
ジャーキーも美味しいぜ。
カメオ村は王都の南西にあって、王領であるね。
距離的にはホルボス山よりちょっと遠い感じかな。
一応王都近郊の感じだ。
前世日本の距離感で言うと、日本橋から横須賀ぐらいかね。
四十分ほど低山の上を飛行するとカメオ村が見えてきた。
ダシャ婆ちゃんの牧場の上で速度を落とし、牧場脇の草地に着陸する。
「とうちゃーく」
カーチスとエルマーが貧乏そうな牧場を見ていた。
「え、なんで、あんな美味い生産牧場がこんな貧乏くさいんだ?」
「人手が足りない……?」
「……何かあんな」
コリンナちゃんがジャーキーを噛みちぎりながらぼそりとつぶやいた。
なんだろうね。
とりあえず、ハッチを開ける。
「エイダさん、荷馬車を下ろしてね」
【了解しました】
ディスプレイにはロープを解いているダルシーとアンヌさんが映っていた。
タラップを下りて、船体後部に行く。
後部ハッチが開いて、二頭の馬とリンダさんが出てきた。
「着きましたか、マコト様」
「着いたわよ」
二頭の馬を引いてリンダさんが船から出てきた。
ダシャ婆ちゃんとお孫さん夫婦が下りてきた。
マジックハンドがウイーンガチャンと牧場の私道に荷馬車を下ろした。
「なんとも凄いお船に乗せてくれてありがとうね聖女様。なんと早いのかしらねえ」
「いえいえ、近いので気にしないでください」
「ばっちゃの肉美味しいから良いんだよっ」
それはどういう理屈だ、アダベルさん。
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