第935話 休日の暇な午後の聖女候補
「私はコロシアムに女神様をご降臨させた偉い聖女候補なのでエレベーターを使わせてください」
「駄目です。エレベーターの使用は寮費のグレードによって決まっているので良い部屋を取ってください。今ならスイートが空いてますよ」
くそう、そんな馬鹿高い寮費払えるかようっ。
護衛女騎士さんは頭が固いぜ。
「聖女さまなら派閥員のエレベーターが使える人と一緒に乗れば良いじゃないですか」
ごもっともだが、カロルの部屋に行きたいのだ。
誰かと一緒にカロルの部屋に訪問したい訳ではないのだ。
もういいよっ。
「おっほほほ、ごめんあそばせぇ、行きましょうロデムちゃん」
「がるるるる」
勝ち誇った顔で命令さんが黒豹従魔と一緒にエレベーターに乗っていってムカつく。
私は肩を落として階段を上がる。
二階まで来て、上を見て、一気に面倒臭くなった。
ので、205号室へと向かう。
部屋に入るとコリンナちゃんが絶賛勉強中であった。
「お帰り~」
「帰ったよ……」
「なんだ、浮かない顔だな、どうした?」
私は梯子を上がり、ベッドにうつ伏せに寝転んだ。
「女神様をご降臨させた偉い聖女候補だからエレベーターを使わせろと護衛女騎士さんに言ったら拒否された」
「そりゃまあ、関係ないからな」
「そうだな」
どんな大業績を上げようと、寮の決まりとは関係が無いのだ。
あと、別に自分で女神さま呼んだわけじゃないしな。
くそうくそう。
「せっかくの黄金週間なんだから、たまにはぼーっとしておれ」
「そうか、本でも読もうかな」
「それがいいそれがいい、勉強をしない学生は駄目になるからな」
寝返りをうって収納袋から本を出した。
大昔のガドラガ旅行記をちょぼちょぼ読んでいたのだが、そろそろ読み終わってしまうなあ。
しかし良い天気なのに部屋に籠もって読書もなあ。
飛空艇でどっか行きたいなあ。
なにか用は無いだろうか。
廊下をどたばたと走ってくる音がした。
だれだ、女子寮の廊下を疾走するやつは。
「マコト、飛空艇を出せ」
ドアが開いて飛びこんできたのは、無法ドラゴンアダベルであった。
「どうしたの守護竜」
「お、おう、守護竜で聖氷竜さまだ」
そう言うと荒くれドラゴンはコリンナちゃん目がけてポイポイポイと包みを投げた。
「なんだこれ? おおジャーキー」
コリンナちゃんが包みを開けてジャーキーを口にした。
私は梯子を下りてジャーキーを貰って口にくわえた。
もぎゅもぎゅ。
「おお、この柔らかジャーキーはダシャお婆ちゃんのところの」
「ばっちゃが孤児院に来て肉とかジャーキーをまたくれた、もう帰るというから送って行ってほしい」
「せっかく王都に来たんだから、もっとゆっくりしてれば良いのに」
「牛が待ってるんだってさ」
「それではしかたが無いなあ」
私は立ち上がった。
「そうか、私も行こう」
コリンナちゃんも立ち上がる。
「エイダさん、女子寮まで来て~」
【了解しました】
「マコト、お前無精だぞ」
「なんかめんどい」
「駄目だなあマコトは」
うるせい腹ぺこドラゴンめ。
しばらくしたら、窓の向こうに蒼穹の覇者号が現れた。
【マスターマコト、到着しました】
「ヨシ!」
窓から蒼穹の覇者号の甲板へと乗り移った。
あ、そうだ。
私は第二操縦室に入って船を上昇させる。
カロルの部屋までついたらホバリングさせる。
「あれ、どうしたのマコト?」
「ダシャ婆ちゃんを牧場まで送っていくのよ、カロルは暇?」
「暇じゃないけど行くわ」
「おっけー」
カロルが窓から、えいっと甲板に飛び降りてきた。
「あ、コリンナとアダベルも一緒なのね」
「あの美味い肉の牧場は行ってみたい」
「私もよ」
「行こう行こう。ばっちゃは大神殿だぞ」
「了解~」
「エルマーを呼ばなくて良いのかしら」
「聞いて見ようか」
私は操舵輪を操って男子寮方面に向かった。
「エルマーの部屋って何階だっけ?」
「ええと」
「六階でございます、マコトさま」
アンヌさんが現れて教えてくれた。
六階まで上昇した。
窓越しにエルマーが本を読んでいるのが見えた。
お、こっちに気が付いた。
窓をあけて顔を出した。
「何……?」
「飛空艇で牧場のお婆ちゃんを送っていくから行かない?」
「いく……」
エルマーも甲板に飛び降りてきた。
飛空艇は便利だな。
「俺も行くぜっ!」
一階上の窓が開いて、カーチス兄ちゃんが飛び降りてきた。
だあああん! と大きな音がして、奴は涙目で足をさすっていた。
高いって。
甲板が痛むだろ。
「マコト、ヒールをかけてくれえ」
カーチス兄ちゃんが涙目で第二操縦室に来たので『ヒール』を掛けて治した。
「そいじゃ大神殿に行くよ~」
「よし」
「おう」
「いこう」
「うん」
「いこう……」
私は操舵輪を回す。
目指すはさっき出て行った大神殿。
これはアレだな、休日暇だったからみんなでちょくらドライブに行こうぜ行動だな。
まことに飛空艇は便利な事だ。
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