第932話 コロシアム外苑公園でみんなでランチ
キルギスが木剣を構えてカマ吉と対峙している。
コロシアム外苑公園であるよ。
私たちは洗礼式が終わったのでみんなで屋台で料理やパンを買い込んで公園でランチである。
クリフ兄ちゃんとクララの屋台の近くだ。
ダブル聖女パンは飛ぶように売れているな。
キルギスがカマ吉の実力を見ると言って、芝生で立ち会っている。
「キラーマンティスは魔物の中でも結構強いんだけど、なんかカマ吉は変だな」
「そうなの? カーチス」
「妙に上手い」
キルギスが足を使って突っ込んで行くと、両手のカマがもの凄い速度で振られる。
おおっ、すごいキルギスが押され……、奴はカマで挟まれて制圧された。
「お、お前、なんだよっ、強いぞ」
「うわあ、キルギス兄ちゃん、カマ吉に負けた~」
「きゅっきゅーい」
エヘンという感じにカマ吉は胸をはった。
ローゼがダブル聖女パンの欠片を口に放り込んで立ち上がった。
「よし、姉ちゃんがキルギスの敵をうっちゃる」
「姉ちゃん気を付けろ、なんかカマ吉は上手い」
ローゼはうなずいて居合いのように木剣を構えた。
「ローゼさんは、居合いするみょんか?」
コイシちゃんが串焼きに塩を振りながら言った。
「師匠が蓬莱の人だったんだよ」
「こんど私の古い刀をあげるみょんよ」
「あ、それはありがたい」
ローゼは背中を丸めるようにしてカマ吉との間合いを詰めて行く。
私はというと、ゴブ蔵の手を握って魔力をチェックしていた。
「あ、やっぱり聖属性だから光魔法力があるよ」
「本当ですか、聖女様」
「そんなに魔力量は無いから今の所はハイヒール一発ぐらいかな」
「光魔法は速効治癒だからすごいわね、ゴブ蔵さん」
カロルが嬉しそうに微笑んだ。
「嬉しいです、オルブライトさま。マコトさま、治癒魔法をお教えください」
「いいよん」
「おおっ、今度ダンジョンアタックについてきてくれよ、ゴブ蔵」
「喜んで参加させていただきます、ブロウライトさま」
世にも珍しいゴブリンプリーストの誕生だなあ。
カマ吉もヒールぐらいはできるかな。
「ぎゃあ、負けた~」
あら、カマ吉がローゼさんを負かしたぞ。
普通に剣の才能があるっぽいな。
両手がカマだから二刀流みたいな動きで、四本足だから安定してるし、体格もいいからかなり強いのか。
カマの裏側は堅くなっていて相手の攻撃を弾くっぽいしね。
「よーし、今度は俺だっ」
カーチス兄ちゃんが木剣を持って立ち上がった。
カマ吉がよしこいとばかりにカマでくいくいと彼を招いた。
「アダちゃんすごかったね」
「女神もすごかった」
「ほんとうに凄いよね、女神様初めて見たよ~」
孤児院の子供とアダベルは芝生に座って従魔たちを撫でていた。
アダベルの頭にはカエルが乗っている。
「アダベル、その頭のカエルはなに?」
「私の従魔っ! トトメス!」
魔物なのか? 私には普通のカエルに見えるが。
昨日、子供達が王家の森でテイム合戦をしたので、芝生で一角ウサギとか夜光猫とかがびょんびょん跳ねている。
孤児院の女官さんの手間が増えるなあ。
村の三馬鹿も一角ウサギとどでかいウサギをテイムしていた。
しかしでかいなあ。
「ぎゃあ、負けたあ、お前強いなっ」
「よし、今度は私が殿の敵を討つ、覚悟しろカマ吉」
「カトレアしゃんでは無理みょんよ~」
カーチス兄ちゃんはカマ吉に負けたらしい、カトレアさんがエッケザックスを構えたので、ヒルダさんに叩かれた。
「聖剣はダメよ」
「し、しかしっ」
「では私がやろう」
リンダさんが立ち上がり、カーチス兄ちゃんから木剣を受け取った。
もー、リンダさんも大人げないなあ。
カマ吉はこくりとうなずいて構えた。
リンダさんが踏み込むとカマ吉がカマを振り上げる。
カンカンカンカンカン。
もの凄い勢いで木剣とカマが打ち合わされ、リンダさんは跳び、カマ吉は後退し、ふり返り、しゃがみ込み、立体的に戦っていた。
もー、リンダさんは大人げないなあ。
「おおお、リンダ師すごい」
「格好いい、カマ吉もがんばれー」
トール王子とティルダ王女が二人に声援を送った。
ティルダ王女の膝に一角ウサギが居て、トール王子の肩の上にカーバンクルが乗っかっている。
「というか、カマ吉すごいな」
コリンナちゃんが感嘆の声を上げた。
「リンダさんと互角に打ち合っているわね」
カマ吉の反応速度が凄いね。
だが、リンダさんが懐に入って木剣を首に当てると、カマ吉はがっくりと肩を落とした。
「カマ吉、貴様は上手いな、剣の才能があるようだ。面白い、私の剣を教えてやろう」
「きゅっきゅっ」
カマ吉はうなずいた。
おお、剣客マンティスが生まれるのか。
というか、カマ吉もゴブ蔵も聖属性付与で強くなって無いかねえ。
アダベルがミリヤムさんを誘って芝生で距離を取って対峙した。
「んじゃあアイスブレスいくぞー」
「はい、来て下さい~」
アダベルは両手を口の近くで開いてブレスを放った。
アイスブレス……。
「聖属性ついてる……」
「ホーリーアイスブレスかあ」
ミリヤムさんにブレスが直撃して寒そうに震えた。
「覚えたかー」
「ええと、『ホーリーアイスブレス』」
ミリヤムさんの杖から、ぶわーっとアダベルへ青白いブレスが放たれた。
「おお、いいな、だが寒い」
「これは良いですね、聖属性も付いてるからアンデッドにも良さそうです」
「そうか、良かった」
アダベルもヒールを覚えたら、ヒールブレスが使えるようになるのかなあ。
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