第926話 余った隷属の首輪を持って学園に帰る
魔法塔を出た。
ミリヤムさんも大神殿に帰ると言ったので送って行くことになった。
「なんかクヌートがガドラガに行きたいって言ってたけど」
「そうなんですよ、聖女さま。市民権を得たら冒険者カードを作ってダンジョンアタックしたいって男どもが騒いでましてね」
カロルがうなずいた。
「良いわね、ミリヤムさんはもう少し特殊攻撃の手札を増やしても良いし」
「お勧めはなにかありますか、もしくは社長が必要な物とか」
「幾つかミリヤムさんが無限に出してくれたら助かる物があるわ、後でリストをわたします。お勧めは癒やしの鱗粉かしらね、回復技は持っていた方が良いわ」
「そうね、五本指は回復役が居ないから」
「敵の回復技を受けるのは難しいですよう」
それはそうか、ピクシーが使うんだけど、掛けるのは敵方だしね。
「クヌートさんにピクシーをテイムして貰って、それで掛けて貰えばいいわよ」
「あ、そうですね、クヌートに頼めば色々楽ですね」
「影犬の影潜行とかは覚えられないでしょうね」
「アレは犬たちの自己能力なので」
青魔法使いは魔物の攻撃をラーニングできるのだけれども、一度攻撃を身に受けないとだめなんだよな。
高位の魔物の攻撃は一撃で即死もあるから、青魔法使いも大変よね。
「あ、そうだ、アダベルのアイスブレスを覚えていけば?」
「それは良いですね、ブレス攻撃は遠距離なので使いやすそうです」
オルブライト家の馬車は大神殿前に着いた。
「ありがとうございます、聖女さん、社長さん。また明日お会いしましょう」
「アダベルの洗礼式には来るの?」
「はい、孤児の子たちと一緒に行きますよ」
「それは良いね、終わったらみんなでどこかで食べようか」
「いいですね~、ひひっ」
「屋台とか良いわね」
コロシアムの敷地に芝生とかあるから、そこでみんなで屋台飯とか良いね。
楽しそう。
ミリヤムさんは手を振って大階段を上がっていった。
「さて、学園にもどりましょうか」
「そうね、ジェラルドさまは学園内にいますかね」
「王宮かな、連休は授業前に捕まえる事ができなくて困るね」
「後でアンヌに聞いてみましょう」
そういや、メイドさんの人捜し技能は長耳さんに問い合わせていただけらしいね。
聞くと一瞬途切れるわけだな。
あと、学園内限定。
私が直接聞いてもいいけど、なんか長耳さんを呼ぶのは緊急事態だけ、という雰囲気がして気軽に呼べないのである。
がらがらとオルブライト馬車は学園の馬車溜まりに着いた。
「おじさん、ありがとうね」
「いえいえ、いつでもお呼び下さい聖女さま」
オルブライトの御者のおじさんは優しそうで良いね。
下級貴族の馬車の御者はガラが悪い奴が混ざっているからなあ。
ちなみにキンボール家の馬車は家令さんが御者もやっている。
人手不足なのだ。
買った隷属の首輪を指でくるくると回す。
「解析が済んでいるなら買うんじゃ無かった」
「一角ウサギでもテイムしますか?」
「古式で只でテイムできるからなあ。首輪式だと、命令は下せるけど、視界共有とかはできないし」
アンヌさんが出てきた。
「ジェラルドさまは図書館においでです」
「そうかそうか、行ってケーナさんのお葬式の相談をしてくるか」
「私も行くわ」
カロルが私の手を取った。
ありがてえありがてえ。
「私は手の者を動かして、都内を探りますわ。ディラハンの術者の他に仲間がいるかもしれません」
「そうね、ちょっと探ってください」
「かしこまりました」
ヒルダさんは別方向に去っていった。
やっぱり頼りになるなあ。
さてと、図書館に行くかな。
カロルと一緒に校舎に入り、階段を上がって二階へ。
渡り廊下を通って図書館へと入る。
休みだというのに、ルカっちはいつも通り貸し出しカウンターの奥で本を読んでいた。
「ルカっちはどっか行かないの?」
「本の中なら、世界中どこでも行けるし、どんな贅沢もし放題なんだよ」
あ、駄目だ、この本読みは。
ルカっちはほっといて、カロルと一緒に読書コーナーへ行くと、コリンナちゃんとジェラルドが図面を見ながら仲良く談話していた。
どうやら地獄谷の計画図面らしい。
「あ、マコト、カロル」
「お、帰ってきたか」
「こんにちはジェラルド、地獄谷の計画の方はどう?」
「アウトラインは決まった、あとは計画書をサーリネン商会に投げれば工事開始だ」
「ありがとう、助かったわジェラルド。コリンナちゃんもありがとうね」
「いや、楽しかったから良い」
「まかせておけー」
私はジェラルドの対面の椅子に座ってケーナさんのお葬式にリーディア団長を呼ぶかどうかを聞く。
ジェラルドは腕を組んで唸った。
「うーむ、なかなか難しいな。リーディア団長はお葬式に出たいだろうが、遺族の気持ちはたまるまい、遠慮して貰う方が良いな」
「そうか、やっぱりね」
「後で個人的に墓参りをして貰うのがよかろう」
「そうだね、明日伝えておくよ」
よし、相談して良かったな。
ジェラルドは政治の専門家だし、間違いはあるまい。
「明日はあんたも来るの?」
「うむ、ケビン王子、ロイド王子、王妃様もいらっしゃるぞ」
「ロイヤルファミリー全員集合か」
「それほど、古竜が一国の首都の守護竜になるというのは大きい事なのだ。各国からも大使が続々と王都入りしているぞ」
「獣人連合国のヨールト閣下には百貨店でお会いしたよ」
「おおそうか」
「石の船はどこに駐機してあるの?」
「王都外だ、さすがに王都内では学園にしか置き場所が無いからな。外国の船を止めるには王城に近すぎるのだ」
まあ、置く気になれば、各騎士団の練兵場とかもあるのだが、外国の船だから王都外らしい。
明日は盛大な洗礼式になりそうだなあ。
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