第925話 従魔用具店で隷属の首輪を買う
大体欲しい情報は手に入れたので支配人室をおいとますることにした。
「いつでもいらっしゃってください、聖女さま、アライド王国はいつでもあなた様を歓迎しております」
「ご丁寧にありがとうございます。それではまた」
支配人室を出てドアを閉める。
「ウエストン侯爵家かあ」
「前世紀に獣人奴隷貿易で荒稼ぎした家ですわね」
「あ、そうなの?」
「元々は奴隷用の隷奴の首輪の販売をしていた所よ」
うさんくせえ家系だな。
各国が奴隷禁止に動いたから奴隷用から従魔用に開発転換したのか。
私はエレベーター前の各階案内板を読んだ。
「従魔用品パピーかあ、行ってみよう」
「なにするの?」
「隷属の首輪を買う。分解すれば仕組みは解るよね」
「市販の魔導具はプロテクト掛かっているわよ」
うむむ。
ピコーン!
「サーヴィス先生に持ち込んでみよう」
「そうね、専門家に聞いた方が早いかもしれないわ」
わたしらはエレベーターに乗って三階で降りた。
「いらっしゃいませーっ、従魔用品店パピーにようこそ」
ほがらかな女性店員さんが出迎えてくれた。
小綺麗なお店で、小魔物がガラスケースに入って売られていた。
「王都内で魔物屋って駄目なんじゃないの?」
「小魔物は別ですわ」
一角ウサギとか色々売ってるなあ。
アタックドックの子犬とかいるぞ。
綺麗なトカゲとか居るな。
うおっ、三十万ドランク!
君、高いねえ。
「それは、ザニア大陸のカレイドスコープというトカゲです、ほら、目が万華鏡みたいにキラキラ光るんですよ。飼育も簡単ですし、良く人になれますよ」
「ほほー」
トカゲとかいらんけどな。
隷属の首輪は無いのか?
店内を見回したら、リードとかを置いてあるコーナーにあった。
小魔物用と中型魔物用の首輪があるな。
一万から十万という所か。
ゴブ蔵のお値段の半分は隷属の首輪だな。
一番安いのを買おう。
「これください」
「はい、一万二千八百ドランクになります」
「どこらへんの魔物までテイムできますか?」
「そうですねー、一角ウサギとか、カピバラとかぐらいでしょうか。犬型あたりだともう一級上で無いとテイムできません」
小魔物用なのだな。
「使い方は?」
「魔物ちゃんを拘束して、首輪をはめ、ここの部分に血を一滴垂らして下さい、それでテイム完了です、魔物ちゃんは一生の忠誠をあなたに誓いますよ」
ケンリントン百貨店のマークが入った麻袋に首輪と説明書、そして鍵が二つ入っていた。
「一度使った首輪を外して別の魔物に使用できますか?」
「一回きりですね、鍵は魔物ちゃんを野に放す時に使う物です」
「そうですか」
「お買い上げありがとうございました。魔物ちゃんとの生活をエンジョイしてくださいね。何か解らない事があったり、魔物ちゃんの具合が悪くなったらご来店くださいませ」
従魔用品店パピーを出た。
「店員が立て板に水でなんかうさんくさい」
「動物をペットにするよりも、隷属の首輪でテイムした方が安全なので、貴族の子供がよく買いますね」
ああ、動物は暴れたり噛んだりするからなあ。
魔物をテイムするなら絶対服従だから安全なのか。
「なんとなく、嫌な感じね」
「命を弄んでる感がすごい」
「人に使ったらどうなるの?」
「魔石が無い生物には使えないようになっているそうですよ」
そりゃまあそうだな。
魔物って変な生き物だな。
ケンリントン百貨店を出て駐馬車場でオルブライト家の馬車に乗り込む。
「学園に戻る?」
「魔法塔に行ってサーヴィス先生に依頼しておこう」
「わかったわ」
カロルが窓から顔をだして御者さんに魔法塔に向かうように指示した。
カッポカッポと馬車は王都を進む。
「しかしディラハンを操っているテイマーの目的が見えませんね」
「マコトは予知できないの?」
「動機とか目的はわからないね、直感はなんかそんなには便利じゃないんだよなあ、ちょいとヒントぐらいな感じ」
「あら、そう」
カロルががっかりした声を出した。
馬車は魔法塔の敷地に入った。
守衛さんが寄ってくる。
「どちらに御用ですか?」
「錬金部のサーヴィス先生に」
「ああ、聖女さま、いらっしゃいどうぞどうぞ」
「ありがと」
おお、魔法塔でも顔が売れてきたな。
私たちは玄関で降りた。
突き当たりのエレベーターで五階の錬金部まで上がる。
チーン。
「魔法塔には初めて来ましたわ」
ああ、ヒルダさんは魔法塔は初めてか。
畑違いだしね。
錬金部のドアをノックして開けた。
いつも思うのだけど、錬金部のオフィスって職員室っぽいよね。
「こんにちは~」
「お、聖女さん、よくきたね」
「また、なにか発明品ですか、見せて見せて」
「今日は違いますよ、サーヴィス先生は?」
「青魔法使いの人に講義しているよ、もう終わるかな」
「こっちで待っててください、お茶をだしましょう。オルブライトさまもいらっしゃい」
「ありがとうございます」
ミリヤムさんも来ているのか。
お茶を飲みつつ茶菓子をつまんでいたら、サーヴィス先生とミリヤムさんがやってきた。
「おや、マコトくん、オルブライトさん、どうしたね?」
「あ、聖女さん、社長さん、どうもどうも」
ミリヤムさんがペコペコと頭を下げた。
カロルを社長と呼ぶのはやめろ。
「ちょっと先生にお願いがあって来たんですよ」
「また何か発明かね?」
「ちがいますよ、四六時中発明はしてませんよ」
「そうかそうか、ええと、こちらの方は?」
「お初にお目にかかります、ヒルダ・マーラーです」
ヒルダさんの名前を聞いて、サーヴィス先生とミリヤムさんがげっという顔をした。
「あ、ご心配無く、私は単なる付き添いですわ」
「あ、ああそう」
「そうなんですか」
ミリヤムさんは裏社会に居たからマーラー家の事を知っているのかな。
私は隷属の首輪を出して解析をお願いした。
「ああ、ウエストン商会の隷属の首輪かね、解析済だよ。チェインバーくん、資料をだしとくれ」
「隷属の首輪ですね」
チェインバーさんはロッカーから書類を出してもってきてくれた。
けっこう分厚いね。
「解析済なんですね」
「うむ、隷属の首輪の国産化ができないかという依頼があってね、解析した」
「国産品はあるんですか?」
「基幹魔法陣が特許化されていて、代用魔法陣が組めなくてね。どうやってもこのサイズにおさまらないので断念したよ」
「解析書類をお借りしてもいいでしょうか?」
「かまわないよ、オルブライト君なら理解できるだろう」
「ありがとうございます、サーヴィス先生」
おお、持つべきは錬金術師の親友だな。
私は借用書を書いた。
期間は一週間だな。
「ミリヤムさん、お勉強の方はどうですか?」
「すっごい楽しいです、聖女さま」
「ミリヤム君は覚えが早いね、青魔法使いの錬金術師とか、錬金部の夢だよ」
「いやですわ、サーヴィス部長、ひひっ」
ミリヤムさんも錬金部に馴染んでいる感じね。
なによりだね。
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