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第916話 派閥大会は終わる

 派閥大会が終わって私はカロルといっしょに馬車に乗っている。

 車窓を流れる夜が深まった王都の景色が素敵だな。


「楽しかったな、マコト、カロル」

「そうね、アダベルも楽しんでいたわね」

「たのしかったっ!」


 アダベルは学園長邸に帰るためにオルブライトの馬車に便乗している。

 カロルがアダベルの肩にいるクロを撫でていた。


「孤児院のお泊まりどうだった?」

「トールもティルダも喜んでいた、オーレルも、セルジュも、ラウルも喜んでた。孤児院のベッドは狭かったけど、村の家の自分のベッドより広いってさ」


 なんか楽しそうだなあ、お泊まり会。


「大神殿のお風呂もティルダと一緒に入った、喜んでたよ」

「王族の人は、あまり庶民とふれあえないからね」


 トール王子とティルダ王女が喜んでくれていてなにより。


「明日の午前中は洗礼式のリハーサルだって」

「うん、聞いた、がんばる」


 明後日がアダベルの洗礼式だしね。


「がんばってね二人とも」

「おう」

「うん」


 馬車は夜の王都をガラガラと進み、学園長邸でアダベルを降ろした。


「そいじゃ、また明日なー」

「おやすみー」

「おやすみなさいアダベル」


 馬車は器用にバックして方向転換してから学園に向かった。

 アダベルは学園長邸の前でずっと手を振っていた。


 馬車は校舎横のロータリーに着いた。

 マーラー家の馬車やブロウライト家の馬車が並んでいる。


 馬車から降りるとヒルダさんたちが立っていた。


「お疲れ様でした、領袖、楽しい夜会でしたね」

「ヒルダさんもありがとうね」

「いえいえ」


 カーチス兄ちゃんとエルマーが男子寮の方へ歩き出した。


「じゃあ、また明日なー」

「お休み……」

「おやすみ、カーチス、エルマー」


 男子どもは帰っていった。

 なんだか、コミケが終わった後みたいな寂しさがあるな。


「さて、解散しましょうか」

「そういえば月曜日なのに聖女の湯の素を入れてなかった」

「あ、私が入れておきましたわ」

「おお、メリッサさんありがとう」


 そうか、集会室の金庫に予備の聖女の湯の素が入ってるからね。


「よし、それではお風呂に入って寝るかな」

「行きましょう行きましょう」


 カロルはどうするかなと思って見ると、彼女はふんわり笑って小さくうなずいた。


 さてさて、みんなでお風呂に行こう。

 ドレスアップしたまま女子寮に向けて歩くとなんだか気持ちが高揚するね。

 いつもとは違う格好で、いつもの場所に居る感じ。


 女子寮の玄関を通って階段で地下に下りる。

 大浴場の脱衣所に入ると、黄金週間なのでいつもよりは空いていた。

 影からポーポーちゃんを出すと、ヒルダさんがふらふらと寄っていって抱きしめた。

 ヒルダさんはポーポーちゃんが好きだねえ。

 派閥員の女子勢揃いでのお風呂は初めてかな。

 剣術組が部活の関係でご一緒をあまりしないからね。


 聖女服を脱いでダルシーに渡す。

 彼女は聖女服を綺麗にたたんで袋に仕舞った。


 浴場に入ると、ペパーミントの良い匂いがした。

 新しい聖女の湯の素の匂いだね。

 かけ湯をして湯船に入ると、肌が微妙にヒンヤリしてから熱が来た。

 うーん、良い感じの湯ざわりだね。


 カロルが隣に入ってきた。


「肌触りが独特ね」

「なんかさっぱり感があるね」


 ふうのんびりするなあ。


「楽しい大会でしたわね」

「秋の大会はメリッサさんが企画してよね」

「ええ、そんな自信がございませんわ」

「マリリンとエドワルダさんと一緒にやってよ、何事も経験よ」

「エドワルダさまとなら、やれるかもしれませんわね」

「いつまでもジョンおじさんに頼むのも良く無いしね」

「お手伝いいたしますわ、メリッサさま」

「そうね、がんばろう、マリリン」


 きっとヒルダさんも手助けしてくれるだろうしね。


「カロルは?」

「私、夜会が嫌いだから力になれないわ」

「あ、そっか。オルブライト領では夜会しないの?」

「しないわねえ、新年の宴会は大広間で晩餐会だし」


 まあ、貴族の夜会は社交の場だからね。

 社交に興味が無い領だとやらないのか。


「ははは、ピッカリン家でも社交はまったくしないぞ」

「そうだろうねえ」


 あそこの当主はそういうのが嫌いだから男爵から上に行かなかったんだろうね。

 子爵家以上だとなんだかんだでパーティを開催する。


「秋には派閥大会をお洒落組主導で行いましょう」

「そうですね、あと、季節に一度、お茶会を開きたいのですけれど」

「派閥の奴じゃ無くて?」

「はい、社交の為のお茶会ですわ。派閥の拡大のために他家と交流する物です」

「良いわね、お茶会ならそれほど風紀は乱れないでしょう」

「夜会は二年生ぐらいからできますけれど、一年の間はやらない方がよいですわ」


 というか、学生のうちは夜会は早いだろう。

 酒が入って盛りあがると恋愛アニマルどもはどこにしけ込むか解らん。


「聖女派閥に夜会は似合わないと思いますわね」

「あら、そうですの、ヒルダさま」

「夜会があれば、陰謀や暗闘に便利ですけれども、教会が関係している派閥ですから人の目を気にしたほうがよろしいわ」

「たしかにそうかもしれませんわね」


 そうだぞ、メリッサさん。

 夜会ゴロとかと知り合いたく無いよなあ。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱ洗礼するとアダベルはクラスチェンジするんだろうか
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