第915話 子供達と一緒にお料理ブースを食べ尽くす
小腹が空いたので、お料理ブースに立ち寄ってみた。
「あ、マコト、ここの料理は美味しいぞ」
「そうなんだ、王城より上かな」
「同じくらいかな、うん」
アダベルがそう言うと、コックさん達がにっこり笑った。
給仕さんにお皿を貰ってお料理を取っていく。
「ミートローフが美味しかったです」
「わたしはシチューが好き」
トール王子とティルダ王女もご満悦のようだ。
リーディア団長がお母さんみたいに、二人のお世話をやいている。
「クロ、お前も食べるか」
クロは食べないと思うぞアダベル。
ミートローフと、ビーフシチュー、あと白パン。
ぱくり。
あ、美味しい。
上品にまとめてある感じだね。
イルダさんの味に似てる。
「黄道亭かしら?」
「はい、料理長は黄道亭の次男さんですよ」
給仕さんが笑って教えてくれた。
なるほど、味が似てるわけだ。
白パンは満月堂系列かな。
おいしいなあ。
サラダを少し貰って、ローストビーフと一緒に食べた。
んー、美味しいね。
会場を見ていると、メリッサさんとマリリンさんが気後れ無く大人の派閥員の中に入り、挨拶したり、会話したりしていた。
さすがはお洒落組であるな。
社交力が高い。
カロルもお料理ブースの方にやってきた。
「マコトは食べたの」
「うん、美味しかったよ、ホテルの料理長は黄道亭の次男さんだって」
「それは期待できるわね」
カロルはお皿を貰ってお料理を食べ始めた。
私はボーイさんに冷たいお茶を貰った。
「わあ、美味しいわね」
「イルダさんの味と似てるね」
エルマーが中年の女性を連れてやってきた。
「マコト……、僕の母さん……」
「もうっ、この子ったら、口が重いんだから」
あはは、エルマーらしい。
彼は一直線にお料理ブースのマヨコーンの皿に向かった。
「お初にお目に掛かります、クレイトン家のマーガレットと申します。聖女さまにはいつも入浴剤を頂いて、とても感謝しておりますのよ」
マーガレット母さんかあ。
優しそうな人だね。
「初めまして、領袖の聖心教司祭、マコト・キンボールです。いつもエルマーには仲良くして貰っているんですよ」
「ええ、ええ、もうエルマーったらマコトさんマコトさんとお話を聞かせてもらっていますわ」
エルマーは家族とは結構喋るのだな。
「エルマーは冒険でも、お勉強でも頼りになって、心強いんですよ」
「まあ、あの子ったら、子供って知らないうちに大きくなるのですよねえ」
「母さん……、やめて……」
エルマーがマヨコーン山盛りの皿を持ってマーガレット母さんを止めた。
クレイトン家は高位貴族にしては珍しく仲良し家族だなあ。
静かな音楽が流れ、着飾った人達が穏やかに話し合う。
良い立食パーティだよね。
カーチス兄ちゃんの隣でカトレアさんがフィルマン父さんに話しかけられてへどもどしていて、イザベル母さんが笑っている。
コイシちゃんが、アンドレア家のクリスチャンお父さんに話しかけられてにこやかに会話している。
「楽しいわね」
「そうだねえ、華やかで良い雰囲気」
「ダンスは無いの?」
「無いわよアダベル」
腹ぺこドラゴンさんは大盛りになったお皿からお肉を飲むように食べながらそう言った。
「立食パーティは、挨拶したり、会話したりを楽しむ催しよ」
「そうなのか」
父兄の交流の場だからなあ。
子供はそれほど面白くは無いだろうね。
お養父様とアドリアン閣下がトール王子とティルダ王女に話しかけている。
滅びた国とはいえ、王族なのでアドリアン閣下も慇懃に対応しているね。
グラスを持ったリンダさんが近づいてきた。
「あ、リンダさん、ディラハンの包囲には聖騎士は参加してるの?」
「一応三名ほど出しておりますが、潜伏した森から動きは無いようです」
んー、尻尾を掴みたいなあ。
魔物園大脱走事件との関連性も調べたいなあ。
「駄目よ、マコト、お仕事の話は」
「あ、ごめんカロル」
カロルが近寄ってきて私の肩に手を置いてそう言った。
そうだね、大会を楽しまないと駄目ね。
「そう言えば、隷属の首輪って魔導具だよね、カロルは詳しい?」
「あまり詳しくは無いわね、アライド王国の大手メーカー産だって事しか知らないわ」
「隷属の首輪は、それまでの魔物使いを変えてしまいましたの、簡単に魔物を従魔に出来るので、伝統的なテイマーはほぼ居なくなってしまいましたわ」
ヒルダさんが近づいてきてそう言った。
そうなのか。
「相手に首輪をかけて、血を垂らして契約すれば、すぐ従魔になりますからね」
「すぐ命令を聞くの」
「はい、一瞬です。ただ魔物のレベルによって首輪の等級がありまして、中級のモンスターをテイム出来るような首輪はお高いですわよ」
そうだねえ、地竜にかけてた首輪は特別製っぽかった。
「明日、アライド王国の諜報員と会えないかしら」
「ちょっと問い合わせてみます」
「ちなみに組織名は?」
「諜報組織は本部としている建物の名前を取る事が多いのです。『塔』とか『城塞』とか、少し前までアライド王国の諜報機関は『軍港』と呼ばれていました」
「今は?」
「『百貨店』です」
「あれ?」
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