第911話 学園に戻って派閥大会の準備をする
205号室に戻るとコリンナちゃんが勉強をしていた。
「おかえりー、魔物園はどうだったい?」
「楽しかったが、帰りに魔物達が大脱走した」
「え、マジ! それでどうしたのっ?」
「どうしたもこうしたも、カロルと一緒に何とかした」
「そうかー、マコトとカロルが居れば大体何とかなるか」
「行きがかりでキラーマンティスとゴブリンをテイムした」
「マンティス……、オオカマキリか、どうすんのそんな魔物」
どうするこうするも無いなあ。
「困ったので孤児院の護衛としておいてきたよ」
「それはそれは」
私は収納袋から聖女服を出して制服を脱いだ。
コリンナちゃんは掛け時計に目をやって、げっという顔をした。
「もうこんな時間か、実家に戻らなければ」
「ドレスは実家?」
「いや、あれ、どこだ?」
「こちらにお持ちしました」
ダルシーが現れて紺のドレスを出して来た。
「わ、ありがとう、助かるよ、ダルシー」
「いえいえ」
やっぱりダルシーは気が利くなあ。
たしか武術場の下の待合室のロッカーにみんなのドレスは保管してたっけか。
いや、蒼穹の覇者号だっけ?
まあ、メイドさんがよろしくやってくれるので良いか。
ちなみにカロルは寮の部屋にワードローブがあるので、そこに入れているらしい、お家賃が高いお部屋は違うわね。
205号室にあるのはチェストだけだな。
ダルシーはドレス用のガーメントバックを出して来てコリンナちゃんのドレスを入れて渡した。
「ありがとう、着付けはお母さんにやってもらうよ」
「馬車はどうするの」
「貸馬車を頼むよ、王国ホテルだったよね」
「そうそう、親御さんに招待状が来てるはずだからそこに書いてあるよ」
「解った、では行ってくる」
私は聖女服をちゃっちゃと着た。
聖女服は礼服なんだけど、長時間に渡る礼拝とかもあるのでわりとゆったりしてるし着るのも簡単だ。
「お似合いですよ、マコトさま」
「ありがとうダルシー」
「オルブライトさまのご用意を聞いてきます」
「おねがいねー」
聖女服の良い所はドレスじゃないからベットに寝転んでも大丈夫な所だ。
ダルシーが帰って来るまでごろごろしていよう。
ごろごろ。
ベットで寝転んでガドラガ大玄洞の旅行記を読んでいるとドアを開けて誰か入って来た。
「なんでマコトは聖女服で寝てるの」
「聖女服は礼服だがゆったりしておるのじゃ。というか、カロル、綺麗だね」
カロルは臙脂色のドレスを着てとても可愛い。
良いね、良いね。
「新入生歓迎パーティのドレスを着ればいいのに」
「やだい、めんどくさい」
「もー」
「もう行くの?」
「そろそろ行った方が良いわね、馬車も回したわ」
カロルの親御さんは王都に居ないので私を乗せて二人で王国ホテルに行くのだ。
梯子を下りて本を収納袋に入れた。
ダルシーが現れて聖女服のシワとか伸ばしてくれた。
「そういやコイシちゃんはどうやって会場に行くのかな」
「あれ、どうだったかしら」
彼女の親も遠いので王都には来ていない。
カトレアさんは、マーラー家の馬車でヒルダさんと一緒とか言ってたな。
二人で階段を下りて校舎裏の馬車溜まりに向かう。
馬車溜まりでドレスアップコイシちゃんが居た。
「コイシちゃん」
「こんにちはみょん、マコトしゃん、カロルしゃん」
「あれ、一人なの? うちの馬車に乗っていく?」
見れば、茶色いオルブライト家の馬車と、真っ黒なマーラー家の馬車が来てるな。
「コイシはこちらで預かる」
「ですわ、領袖」
バリッと着飾ったヒルダさんと、カトレアさんが現れた。
「二人とも綺麗ねえ」
「マコトのその姿を見ると年末感があるな」
ほっといてくれ。
「どうでもいいけど、なんでカトレアさんはエッケザックスをしょっているの?」
「私はいつでもエッケと一緒だ!」
「そうですか」
まあ、コイシちゃんも魔刀である氷塊丸を腰にさしているが。
剣術女子だからしかたが無いのか。
「おおい、キンボール」
お、ジェラルドが来おったぞ。
「おお、馬子にも衣装だな、美しい」
「うるせえ、何の用だ」
ジェラルドは笑って懐から革袋を出した。
開いて見ると、金貨だった。
「昨晩のディラハン騒動の方には賃金は出せないが、魔物園のトラブルを収めてくれたお礼に、必要経費ぐらいは王家が持とうと思ってな。百五十二万五千ドランク入っている」
「おお、それは嬉しい」
「被害を収めてくれてありがとう、王家の感謝の印だ」
「これでコリンナちゃんに怒られなくて済む」
「それではまたな」
ジェラルドは笑って立ち去った。
耳が早いな。
「魔物園の騒動とはなんだ?」
「魔物達が大脱走しおった」
「隷属の首輪が付いているのにか?」
「なんだか、一斉に外れていたらしい」
ヒルダさんが眉をひそめた。
「それはおかしいですわね」
「ああ、そうだ、隷属の首輪のメーカーはアライド王国らしいんだわ、あの国の諜報機関にヒルダさん、伝手ない?」
「ありますが……、情報を貰うと、領袖がアライドに表敬訪問して女王様に挨拶しなければならなくなりますわよ」
「それは面倒臭いなあ」
まあ蒼穹の覇者号だったら日帰りできそうだけどなあ。
でも表敬訪問だと、レセプションとか、晩餐会とか出ないとまずそうだな。
それは面倒臭い。
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