第904話 魔物園で冒険者に絡まれる
魔物園を一周した。
思ったよりも小さい施設であった。
というか、私の記憶にある前世の動物園が広すぎなんだろうな。
比較が上野動物園とかだし。
あまり一人乗りの大型飛行系も居ないし、ドラゴンも居なかったな。
まあ、ドラゴンはアダベルを見れば良いんだけどね。
それよりも、なんだか人相の悪い冒険者がうろうろしているのが気になる。
魔物園と名乗っているけど、これ、王都で魔物屋をやるための偽装だね。
諜報用に小型魔物の従魔も欲しいのだけれども、カピバラさんもなあ、意外にでかいからなあ。
リスとかモモンガの魔物は居ないのかな。
鳥とかでも良いけど。
「帰ろうか」
「そうね、そんなに種類はいなかったわね」
お猿の魔物の檻の前を通った。
キャアキャア言いながら檻の中の木を跳びまわっていた。
素早いな、モンキー。
火炎ザルだそうだ。
攻撃手段は火のついたウンコを投げるらしい。
酷い魔物だなあ。
ガドラガの五階から六階にいるらしい。
お隣は黒くて手足がみょーんと長いお猿さんだった。
蜘蛛ザルだそうだ。
動きが素早くて立体的に動くね。
魔物お猿は結構種類がいるんだなあ。
順路の出口近くにキラーマンチスが居た。
魔物園では珍しい昆虫系魔物だ。
ガドラガだと十階から下にでる結構な強敵らしい。
人間ぐらい大きいカマキリは怖いけど格好いいなあ。
もの凄い速度で両手の鎌を振った。
おーーー。
「やあ、すごいでしょ、このマンチスは僕らが捕まえたんだよ」
「そうそう、俺たち『黄金の翼』がさあ」
さっきのナンパ冒険者が今度はイケメン冒険者と一緒に声を掛けてきた。
「君たちも王立魔法学園の生徒でしょ、僕もOBなんだ、よろしくね」
イケメンがにこやかに笑った。
私もカロルも能面のような顔で二人を見ていた。
イケメンは貴族のようだが、まあ、冒険者をやってると言う事は男爵家の次男三男、もしくは騎士爵家かな?
ダルシーとアンヌさんが現れて二人の冒険者をブロックした。
「魔法学園のOBがぶしつけに令嬢に声を掛けるのですか」
「いいだろ、懐かしくなってさ。迷惑だった?」
バチコンとイケメンがウインクをした。
げー。
「お引き取りねがいます」
アンヌさんが氷点下声を出した。
「これは君たちのご主人様にも良い話なんだと思うよ、魔法学園は二年生からガドラガの実習があるし、そこで腕の立つ冒険者パーティと知り合いになっておくと成績に直結するしね」
「ガドラガの冒険者ギルドの推薦が無いパーティを雇う事はしないわ」
「ふん、ギルドの推薦のパーティなんかコネでやってる奴らで、本当の勉強にはならないんだよ」
うるせえな、このクソイケメンは、ぶっとばすか。
と、思ったらカロルの脇にジャリジャリジャリとチェーン君が立ち上がった。
「どきなさい、通行の邪魔です」
カロルがブリザードのような声を出した。
「チェーンゴーレム? 汚辱の錬金令嬢、カロリーヌ・オルブライトか……」
まったく無意識に身体強化を体中にかけて、まったく無意識にナンパ冒険者を思い切りぶん殴っていた。
まったくの無意識なので私は悪く無い。
ナンパ冒険者は吹っ飛んで転がった。
「どけ、ぶっとばすぞ」
イケメンに恫喝すると奴は顔をゆがめて剣に手をやった。
全く無意識にライトの魔法を無詠唱で発動、五倍の魔力を突っ込んで崩壊させイケメンの目の前で閃光を発生させる。
「ぐあっ! 目が、目がっ!!」
そのまま流れるように懐に滑り込んでイケメンの体の中心を無意識で蹴り上げた。
怪鳥のような悲鳴を上げてイケメンが地面を転げ回った。
無意識なので私は悪く無い。
「マコトー」
「む、無意識なので私は悪くないっ」
「そうですとも、ナイス無意識」
ダルシーが私に忖度しおる。
カロルはあきれ顔だ。
「お嬢ちゃんがた、おいたがすぎるようだなあ」
ハゲで人相の悪い冒険者が現れた。
後ろには十人ほどの冒険者がいる。
「閃光魔法に……、金的打ち……、え?」
私の顔を見てハゲ冒険者は青くなった。
「に、人形みたいな美少女で、きらめくような金髪……。せ、聖女さまだったりはしませんよね」
「聖心教、大神殿所属、司祭のマコト・キンボールだ」
「…………、あ、その、あの、も、申し訳ありませんでした、う、うちの若いもんが失礼をいたしまして」
「ああ? 何言ってんだ、オーブリーさん、このガキが何者かしらねえが、冒険者は舐められたら終わりだろっ!」
そう抗議した若い冒険者をオーブリーは黙って思い切り殴りつけた。
「バカヤロウッ!! バカヤロウッ!! 聖女様だぞっ!! そしてもう一人は錬金財閥のオルブライト様だっ!! 控えろっ!!」
そう言ってオーブリーは若造を地面に土下座させると自分も地面に座り込んで土下座をした。
「どうか、どうかお許し下さいやしっ」
なんだか馬鹿馬鹿しくなったなあ。
カロルは肩をすくめていた。
こういう興行はやくざがからんでいるから、リンダさんとかの脅迫が効いているのだろうなあ。
「カロル行こう、ごめんね、雰囲気が悪くなったわ」
「ううん、怒ってくれてありがとう」
「なんのなんの」
カロルの為なら冒険者なぞ何人でも無意識にやっつけてやんよー。
まかせろー。
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