第901話 路上で解散して二度寝に帰る
「それではリューグ隊長、森の封鎖をよろしくおねがいいたします」
「お任せください」
警備騎士団の人達も請け負ってくれたようだ。
頼りになるなあ。
麻薬禍を一緒に戦っておいて良かった。
「解散ですか、マコトさま」
「はい、今日はありがとう、リンダさん」
リンダさんはにっこり笑って、いやいやという感じに首を振った。
「さあ、大神殿に帰って寝直しだ!」
「「「「おうっ」」」」
聖騎士団は踵を返して環状道路を南下していく。
学園の方回りで大神殿に帰るのだな。
さて、私も帰るか。
森に紛れた竜馬を発見する事は難しいし。
あした魔導機関銃で瓦を割ってしまった家に謝罪に行かないとな。
早く直さないと、きっと雨漏りするぞ。
私は蒼穹の覇者号のタラップを上がった。
メイン操縦室に入り、艇長席によっこらせと登った。
もうちょっと大きくなれないかなあ。
体が小さくて色々と不便であるよ。
私はエンジン出力を上げて垂直上昇をかける。
回りの建物が下に動いていくような錯覚を覚える。
学園方向に回頭して前進する。
王都内だからすぐそこなんだけどね。
私は振り返り、ディラハンが消えた小さな森を見た。
しかし、なんで王都に入って来た?
やっぱりトール王子とティルダ王女が狙いなんだろうか。
二人が王都に来たから追ってきたのか。
もう一つ。
魔物使いはどこだ?
どうやら魔物に指示をだすのは有視界ではなく、魔力のパスが通じる距離らしい。
だが、テイマーはどこから操っている?
簡単な命令ならばパスが切れていても自律的に動く事はある。
だが、王都に入るような複雑な事はパスがつながっていないと無理だろう。
逃走時の動きも冴えすぎで、指示があったと思わざるを得ない。
夢でもなんだか、テイマーの姿は無かったなあ。
んんん?
どうなってるんだ?
私は着陸台のマークを目印に船体を微調整して降下していった。
バックでビアンカ邸基地の中に入っていく。
オーライオーライ。
格納庫で着陸脚を出して着陸である。
【お疲れ様でした、マスターマコト】
「急な発進でごめんね、エイダさん」
【いえいえ、いつでもご利用下さい】
タラップを下りて格納庫に立つ。
ふわああああ。
なんか眠くなってきたな。
ポコポコと音を立てて地下道を歩く。
しかし、夢かあ。
なんだろう、ディラハンの視界? いや、竜馬か?
時々視点が揺れていた感じもするな。
テレパシー的な物だろうか。
そういや、ジーン皇国のはげちゃびん宰相になった夢も見たなあ。
光魔法の予知とか過去知の系統の力だろうか。
寝ているときに情報をゲットできるのは便利だけど、それも自在に使えての話だよなあ。
学園を卒業する頃には制御できるようになっていれば良いなあ。
階段を上がり、女子寮へと入った。
相変わらず大浴場の灯りはついている。
誰か入ってるかな?
ドアを開けて脱衣所を覗いたら、誰も居ない。
せっかくだからひとっ風呂浴びて二度寝するかな。
パジャマだから脱ぐのは簡単である。
おっと、影からポーポーちゃんを出しておかねば。
「ぽっぽー」
「おーよしよし」
もふもふしてみた。
やっぱフクロウはふわふわで手触りが良いね。
さて、浴室に入り、かけ湯をしてから湯船に入る。
「くわぁぁ、しみるねえ」
ああ、お風呂に入ると疲れが吹っ飛ぶね。
のんびりするなあ。
明日は警備騎士団が北の森で山狩りをしてくれるだろう。
それほど大きい森じゃないから、見つかると良いんだけど。
とりあえず、捕まえて退治したい所だな。
北の森は独立した森だから、他の森につながっていない。
逆に言えば、学園の裏の森の方が王城や自然公園につながっているから広いぐらいだ。
なんで、こっちに来なかったのか。
……。
学園の環状道路側に結界が張ってあるからかな。
森は広いが、王城も、学園も結界での蓋がある感じだ。
抜けるとしたら自然公園方向だけか。
自然公園まで来れば大神殿は目と鼻の先か。
トール王子とティルダ王女をどうするつもりか?
さらっても連れて王都を抜けられはしないだろう。
なんか違う気がする。
暗殺狙いなら解るが……。
サイズの遺児を始末する動機はジーン皇国の皇弟にはある。
自分がやった不始末の口止めだ。
だが、もはや各国諜報部には事の顛末が伝わっている。
今、口止めに暗殺しても意味はないだろう。
そして、それをやるなら五本指と連動してないとおかしい。
目的はトール王子とティルダ王女ではなくて、私か?
だが、ホルボス村に固執していたしなあ。
先のレッドベアをけしかけたのがテイマーならば目標は私か。
どうも、相手の狙いがはっきりしない。
なんの目的で魔獣を使って攻めて来ているのか。
目的が読めないと推理もしにくいなあ。
うむむ。
まあ、暖まったので、部屋に帰って寝よう。
寝不足は美容の敵なのだ。
脱衣所に出ると、ダルシーが現れてバスタオルで拭いてくれ、ドライヤーも掛けてくれた。
夜中なのにすまんねえ。
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