第896話 地獄谷ランチを食べた後温泉にみんなで浸かる
マダム・エドワルダとダガン氏に仕事の割り振りをしていたら良い時間になった。
「また、飯食ってくかい? ろくなもんねえけどよ」
「この前と同じ物?」
「そりゃそうだ」
そういってロイクは肩をすくめた。
まあ、一般庶民というのは、わりと同じ食事をずーっと食べる物なのだ。
地獄谷だと、シチューと黒パンだな。
人数分出して貰って食堂でみんなで食べる。
そんなに美味しくは無いが、特に不味いわけでもない。
普通のご飯だな。
硫黄掘りの人達も戻ってきていて、昼食を食べていた。
チャップマンさんが三人前ほど食べているな。
カロルも、コリンナちゃんも、メリッサさんも、文句も言わずに食べていた。
「わりと美味いね」
「はは、あんた、貴族の嬢ちゃんなのに口が貧しいな」
「下町の法衣貴族なんてなあ、そんなもんだよ」
コリンナちゃんのお口には合ったようだね。
マダム・エドワルダもダガン氏も普通に食べている。
リンダさんも特に問題ないらしい。
まあ、聖騎士団も割と粗食だしね。
「食料品はまだ大丈夫?」
「ああ、問題ねえ、足りなくなったらフレデリク商会長の旦那が持って来てくれる事になってるしよ」
うむ、若旦那に任せておけば良いか。
「御領主さま、すぐ帰るだか?」
「ん、大丈夫だけど、どうしたの、相談事?」
ご飯を食べおわって薄いお茶を飲んでいたら、チャップマンさんが話しかけてきた。
「温泉に囲いを作ったんだよ、御領主のお友達のみなさんはご令嬢だでな、囲いが無いと入れないって聞いたんで、みんなで廃材を持ち寄って作っただよ」
「あら、それは嬉しいわね」
「地獄谷の温泉は入って見たかった」
「ありがとう、チャップマンさん」
「いやあ、お世話になってるしなあ、感謝の気持ちなんだあ」
カロルも、コリンナちゃんも乗り気であるな。
よしよし、地獄谷温泉でひとっ風呂浴びて帰ろう。
チャップマンさんとヘイスさんに案内されて、集落の外れまで歩くと、掘っ立て小屋みたいな場所があった。
扉を開けて入って見ると、簡単な脱衣所があって、その奥に結構な広さの露天風呂があった。
岩がゴロゴロしていて、野趣あふれてる感じだなあ。
鉛管で水も引いてあって、これで温度調節をするみたいだね。
カロルがしゃがんでお湯を確かめた。
「熱めね、ちょっと薄めるわ」
そう言って、カロルは鉛管のハンドルを回して水を出した。
囲いは廃材だけど、ちゃんと隙間もなくがっちり作ってあるね。
屋根は無くて、青空が見える。
良い雰囲気だ。
リンダさんが早速甲冑を脱いでいた。
「リンダさんも入るの?」
「はい、覗きなどがいたら斬ります」
さようですか。
リンダさんと一緒のお風呂は珍しいなあ。
大神殿の大浴場で一緒になった事はあるけどね。
「すごいですわね、こんなの初めてです」
「あまりエドワルダさんは温泉とか来ないの?」
「はい、初めてぐらいですよ」
それは良かった。
さっそく脱衣所で服を脱いでお湯の中に入った。
「くはああああっ」
いやあ、しみるなあ。
「うお、なんかホルボス村の方のお湯より強い感じだね」
「良いお湯ね、野性的な感じだわ」
お湯は白濁硫黄泉で、湯の花がたゆたっている。
硫黄の匂いも強いね。
すごく効きそうだ。
みんなでお湯に浸かってほっこりした。
青い空の下、陽に当たりながら温泉に入るのはこたえられないねえ。
「ここに温泉旅館を作りたいねえ」
「このお湯は売りになりますわ~、あとはお食事ですね」
「山だから猪とか取れたら良いですわね」
「エドワルダさまが切り盛りしてくれると流行りそうですわ」
「ありがとうございます、アンドレア様」
美人女将の山奥の温泉旅館は良いね。
はちまき道路ができたら、ホルボス村からの連絡も良くなるしね。
はあ、なんだかのんびりするなあ。
頭上を小鳥がぴぴぴと飛んでいる。
「王都から保養にくるお客さんの需要がありそうですね」
「建築部に言って、ちょっと品の良い旅館を建てますか」
「そうねえ、教会系保養施設でも良いねえ」
わりと教会施設だと巡礼のお客さんが手堅く来るのよね。
珍しくリンダさんがふんわりとリラックスしてる感じだね。
さて、脱衣所に行って収納袋の中から、ボディソープとシャンプー、リンスを出してダルシーに洗ってもらう。
というか、入れっぱなしの蒼穹の覇者号アメニティだな。
良い匂いである。
「わあ、地獄谷ですごい贅沢な」
「このアメニティも複製して売りたいわね」
「すごい品質ですわね」
蒼穹の覇者号アメニティでマダム・エドワルダを磨いたら、なんだか凄い事になった。
リンダさんもピカピカである。
「ダルシーも温泉入らない?」
「いえ、その、勤務中ですので」
「たまには良いじゃ無い、ダルシーと一緒に入りたいわ」
「は、はい」
ダルシーとアンヌさんも一緒になって地獄谷温泉を堪能したのである。
たまにはメイドさんも労わないとね。
あー、疲れが吹っ飛ぶなあ。
みなでほかほかになって、温泉を出た。
うん、また浸かりにこよう。
温泉は良いね。
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