第886話 王都に向かい大神殿で子供達を下ろす
村の子供たちの親御さんは快諾してくれたそうだ。
邸宅まで来てくれて、お願いしますと頭を下げられた。
「わしらも中日のアダベルさんの洗礼式には行きますんで、その日までおねがいしますわ」
「いつもお世話をかけてもうしわけありません、御領主さま」
「いいのよ、みんなにはトール王子とティルダ王女がお世話になってるし」
孤児院のみんなで食べてくれと、そば粉とかジャガイモとかが入ったつつみを貰った。
ありがたくいただく。
「それでは王都に戻るよー」
「「「「「はーいっ」」」」」
子供達を連れてエントランスの突き当たりから邸宅の地下礼拝堂へと下りる。
大神殿の孤児達なので女神様の像を見ると条件反射でお祈りを始める。
ついでにトール王子とティルダ王女もお祈りを始め、村の三馬鹿も手を合わせて目を閉じる、アダベルもしぶしぶ付き合う。
お祈りが終わったらホルボス基地へとつながる長めの通路を抜ける。
「出発ですか、マコトさま」
「うん、帰るよ、学者さんたちで王都に帰る人がいれば送っていくけど?」
学者さんたちは黙って首を横に振った。
アリアーヌ先生もワインをたらふく飲んだのか、顔が赤いな。
「カタパルト発射を、みたいのれす、ひっく」
よっぱらいめー。
子供達を船に乗せる。
全員メイン操縦室に入っていくのである。
みんな、操縦室好きね。
ティルダ王女はクロを抱きしめてご満悦であるね。
アダベルはばっちゃジャーキーをみんなに配って、もっしゃもっしゃと噛んでいる。
「おいしいな、これっ、アダベル親分」
「おいしいだろー、ダシャのばっちゃの牧場のジャーキーだ」
「そうかー、ホルボス山には牛居ないからなあ」
ホルボス村は高原だから牧畜できそうなものだが、どうやら開拓が大変らしい。
お金も掛かりそうだしね。
「エイダさんカタパルトを使います」
【了解しました、魔導カタパルトスタンバイ】
警告灯が付き、サイレンが鳴る。
前方の四枚のゲートが開いていき遠く王都が見えた。
「蒼穹の覇者号、発進!」
【シーケンス開始、3,2,1、射出】
加速度が掛かって後ろに引っ張られる感じがする。
一瞬で蒼穹の覇者号は空に飛び出していた。
んで、すぐ大神殿に着陸。
本当にすぐそこなんだよなあ。
馬車だと半日かかるというのに。
子供達が、わーいと言いながら飛空艇から駆け下りていった。
「アダベルも下りるの?」
「うん、今日はみんなと孤児院で泊まる~」
「そう、楽しんでね」
「うん、楽しみ!」
みんなでお泊まりかあ。
いいねえ。
トール王子とティルダ王女もニコニコしながら下りていった。
「みんな、王子と王女と村の奴らに大神殿を案内してやろうぜ」
「わかった、みんなこっちこっち、勇者さまと聖女さまの像があるのよ」
リンダさんが大神殿から練兵場に下りてきた。
「やあ、みんないらっしゃい」
「リンダ姉ちゃん、これ、王子さまと王女さま、あと村の三人」
「よくいらっしゃいました、ようこそ大神殿に」
「お世話になります」
「一度参拝に来てみたかったの」
「ど、どうも」
「きょ、今日はお日柄も良く」
「よろしくおねがいいたします」
村の子供はキョドっているな。
「では、リンダさんおねがいね」
「かしこまりました、心からのおもてなしをいたしますよ」
ダルシーがサイラスさんにそば粉と農作物の袋を渡していた。
「わあ、子供がいっぱい」
ミリヤムさんがいた。
大神殿内をぶらぶらしていたようだ。
「あれ、ミリヤムさん、お洒落ね」
「お、お金が入ったので、ひゃ、百貨店で買ったの、すごかった」
彼女は、なんだか、お洒落な服を着ていた。
さっそく、賃金で買い物をしていたようだ。
「他の五本指の人達はどう?」
「みんなのんびりして骨抜きになっているわね。お食事もベッドも良いから快適よ」
それは良かった。
「クヌートが従魔が居なくて寂しがってるわ」
「取り調べが終わったら帰しますよ」
名残惜しいけどね。
クヌートに影魔物がいる洞窟につれていってもらおうかなあ。
ああ、でもジーン皇国かあ、ちょっと遠いな。
おっと、そうだ。
「トール王子、ティルダ王女」
「なんですか、聖女さま」
「どうしたの」
「護衛を付けておきますよ。ペス、ジョン、お願いね」
「わおんっ」
「うおんっ」
「わあっ、犬っ!」
「影から出てきた」
「影の中でお二人を守りますから」
二人はおそるおそる影犬の頭を撫でた。
「おとなしい」
「おりこう」
「これは護衛に良いですね、食事はどうしたら?」
リーディア団長が聞いてきた。
「お肉をあげて、生と焼いたの」
「わかりました。ありがとうございます、聖女さま」
私の影からワンコが居なくなった。
ポーポーちゃんだけで寂しいが、まあ念には念を入れておかないとね。
影犬たちは王子と王女の影にひっこんだ。
「ああ、ワンワン、ワンワン」
「おーい、出てこいー」
王子と王女は地面をぺしぺし叩いて影犬を呼ぶ。
「耳が片方垂れているのがペス、体が大きいのがジョンです」
「僕のはペスか」
「私のはジョンね」
ペスは影から顔をだしてトール王子の顔をぺろりと舐めた。
ジョンは頭をだしてティルダ王女の胸に頬ずりをした。
「よろしくね、ペス」
「うおんっ」
「あなたはおりこうさんね、ジョン」
「わおんっ」
よしよし、仲良くできそうだね。
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