第885話 ホルボス山で子供たちを乗せる
蒼穹の覇者号はホルボス山に向けて飛行中だ。
天気も崩れなくてよかったなあ。
ダシャばあちゃんの村はカメオ村と言って王領であった。
飛空艇の地図にマークしておこう。
またジャーキーとかお肉とか買いに来よう。
「人間はいろいろなんだなあ、嘘つきもいるし、良い匂いのばっちゃも居る」
「そうなんだよ、良い人と会って、その生き方を真似して、良く無い人を見て、そういう生き方をしないようにしていくんだよ」
「そうかー、ばっちゃみたいになりたい」
あー、ダシャばあちゃんが誰かに似てるかと思ったら、カロルになんか性格が似てるんだな。
きっとカロルが五十年もすると、ああいう良いばあちゃんになるのだろう。
わたしもばあちゃんになって、一緒にハーブティーを縁側ですすりたいね。
この世界の建物は縁側無いけど。
私はダシャばっちゃに貰った生の牛肉を見た。
そうか、明日のお昼は、集会室で試験終了記念焼肉パーリーをしようかな。
いっぱい貰ったからワンコたちに半分上げてもみんなの分はあるね。
そうしようそうしよう、せっかくの黄金週間だしね。
「明日、みんなでバーベキューをするけど、アダベルも来る?」
「行く、絶対に行く、ばっちゃの肉を食べる!」
「チーズもジャーキーもあるし、そうだ、ひよこ堂でパンを買ってチーズフォンデもいいなあ」
「フォンデってなんだ?」
「チーズを溶かしてね、パンをくぐらせて食べるのよ」
「うまそうっ!!」
食いしんぼ邪竜さんの口からよだれが垂れた。
ホルボス山基地の方に飛空艇を回した。
帰りはカタパルトを使いたいしね。
まだ、学者さんたちがいるなあ。
着陸台から入って来た蒼穹の覇者号を見て、諸手を挙げて喜んでいる。
「ダルシー」
「はい、マコトさま」
すっとダルシーが現れた。
「ジャーキーとチーズを持って、少し学者さんたちにもお裾分けしましょう」
「かしこまりました」
「ばっちゃのジャーキーは駄目だーっ」
「アダベルはけちんぼだなあ、まあ、ばっちゃジャーキーは残しておこう」
私たちは飛空艇を下りた。
「マコトさま、いらっしゃい」
「エバンズはいつビアンカ邸基地に戻るの?」
「もう少しで魔導カタパルトの全容がつかめますので、黄金週間が終わるまで居たいと思いますよ」
まあ、ホルボス山基地の方が環境が良いから別にどちらに居てくれても良いんだけどね。
お、アリアーヌ先生がいるな。
「アリアーヌ先生、どうですか居心地は?」
「とてもいいっすねえ、太古の魔導具はロマンが詰まってるっすよ」
「これ、土下座行脚でお土産に貰ったの、みんなで食べてね」
ダルシーがアリアーヌ先生に、ジャーキーやチーズをどさどさと渡した。
「わあ、良いんすかー、ああ、これはワインが欲しくなるなあ」
「チーズにジャーキーか、ちょっと村に行ってワインを買ってくるよ」
「カタパルト起動を肴に飲もうではないかっ」
「いいねえっ」
本当に学者さんたちはフリーダムだなあ。
アダベルと一緒に邸宅まで上がった。
「おかえりなさいませ聖女さま」
ハナさんがエントランスホールで出迎えてくれたぞ。
「子供達は?」
「おやつを食べて、お風呂に入って、いま、ダイニングで遊んでますよ」
「ありがとう」
ダイニングホールに入ると、子供達は絵本を読んだりして遊んでいた。
「みんな、今帰ったぞっ」
「アダちゃんっ、おかえりなさいっ」
「怒られなかった?」
「みんなゆるしてくれた?」
「大丈夫、みんな許してくれたぞっ! 謝罪と賠償は大成功だ!」
「やったーっ」
「アダちゃんばんざーいっ」
「「「ばんざーいばんざーいっ」」
よしよし。
「さあ、みんな、王都に帰るよ、今日はホルボス山基地からね」
「「「「はーい」」」」
トール王子とティルダ王女がみんなを見て悲しそうな顔をした。
「トールとティルダも来るかー」
「え、王都に行くのは洗礼式の時でしょ?」
「まだ早いよう」
「いや、悪者はマコトが退治したから大丈夫なはずだ、そうだよな、マコト」
「王都に行きたいですか?」
「「いきたいっ!! 孤児院に泊まりたいっ!!」」
「わかりました、一緒に行きましょう。ダルシー、リーディア団長を探してきて」
「かしこまりました」
もう暗殺者はいないしね、甲蟲騎士団が付いていればなんとかなるでしょ。
程なくしてリーディア団長が来たので、トール王子とティルダ王女を王都にお迎えしたいと言うと快諾してくれた。
やっぱ洗礼式前後だけじゃ可哀想だしね。
護衛には、トンボさんと、蜂のアイラさん、あと銅騎士さんが三人、あとリーディア団長が来るらしい。
「孤児院に我々の泊まる所はありますでしょうか」
「大神殿には宿坊があるから大丈夫よ。黄金週間で混み合ってるけど、なんだったら職員宿舎もあるし」
「ありがとうございます、聖女さま」
トール王子とティルダ王女は躍り上がって喜んでいた。
「お、俺らも行っていい?」
村の三馬鹿のラウルが期待のこもった目をして言ってきた。
「親御さんに相談してきて、良いって言ったらいいよ」
「孤児院に泊まるの?」
「そうなるね」
「お金は……?」
「掛からないよ」
「「「やったーやったーっ」」」
村の三馬鹿男子はびょんびょんと跳び上がって喜んでいた。
君らはいつもトール王子とティルダ王女と遊んでくれているからね、ご褒美だよ。
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