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第884話 ダシャばあちゃんとお茶を飲んでお話する

 ダシャばあちゃんは私たちを母屋に誘ってくれた。


「まあ、目が悪いと駄目ね、掃除が行き届いていないわ」


 と、ばあちゃんは言うが中は結構小綺麗に片づいていた。

 彼女は五年ほど前に倒れて寝たきりになっていて、今ではお孫さん夫婦が牧場を切り盛りしているそうだ。


「今日はお天気が良いから、孫に頼んで庭でひなたぼっこしていたのよ。これが最後のお日様ね、と思っていたのだけれども、もう少し生きられそうね」

「ご自愛くださいね」


 お孫さん夫婦は市場に牛の出荷に出かけたらしい。

 ばあちゃんは、私たちにお茶を入れてくれた。

 美味しくて優しい味のお茶だった。


「今はアダベルが盗んだ牛の謝罪と賠償に回っているのです」

「牛を食べてごめんなさい、美味しかった」

「あらあら、それは良かったわ」


 ダシャばあちゃんはお茶を飲みながら、ふんわりと微笑んだ。


「もう五十年も前の事だから、お金はいただけませんわ。こうして会いに来てくださっただけで十分よ。治療魔法もかけていただいたし」

「ですが、それでは」

「いいのよ、一生懸命に育てた牛がアダベルちゃんの身の養いになったのなら、それはそれで素敵な事よ」

「盗んだのは悪い事だし」

「その頃のアダベルちゃんは人間の事を何も知らなかったのでしょう。だったらそれは自然の行いだから悪い事では無いわ」

「ゆるしてくれるの、ばっちゃ?」

「ええ、良いのよ」


 そう言ってからダシャばあちゃんはアダベルの頭を優しく撫でた。

 アダベルははにかんで笑った。


「ありがとう、ばっちゃ」

「私からもありがとうを言うわ、来てくれてありがとう、本当に懐かしい日の事を思いだしたわ」


 外で人が騒ぐ声が聞こえた。


「ばあちゃんがいねえ」

「ど、どこにいったのかしら」


 ダシャばあちゃんは庭に顔を向けた。


「ナゼールここよ、母屋の中」


 バタバタとおじさんとおばさんが母屋に入ってきた。


「ばあちゃん、どうしたんだ、動けるようになったのかい?」

「外に凄い飛空艇が停まってるんだけど、おばあちゃん」


 私は立ち上がってお辞儀をした。


「こんにちは、聖心教の司祭、マコト・キンボールです、おじゃましています」

「ア、アダベルです」

「せ、聖女さまじゃあ無いですかっ!!」

「う、うそっ!!」

「私のお客さんよ、ちゃんとご挨拶しなさい、ナゼール、オディル」

「こここ、こんにちわ」

「ど、どうして、それよりおばあちゃん体が」

「聖女さまが治してくれたわ。久しぶりに立って動けるようになったの」

「なんてありがてえっ」

「奇跡だわっ、ありがとうございます、聖女さま」

「いえいえ」


 というか、ばあちゃんは私のこと聖女だと解っていたのか?


 お孫さん夫婦はダシャばあちゃんが立って動けたのがすごく嬉しいらしくて、ぺこぺこと頭を下げて、お土産にと、お肉とか、チーズとか、干し肉とかを山ほど渡してきた。

 持ちきれないぐらいだったのでダルシーを呼んで持って貰った。


「本当に賠償金はいいのですか?」

「いや、とんでもねえ、五十年前の牛一匹でダシャばあちゃんが元気になれたなら、こっちが大もうけですよっ」

「また遊びに来て下さい、村中で歓迎しますから」

「ばっちゃ、また来ていい?」

「ええ、また会いましょう、アダベルちゃん、待っているわ」


 ダシャばあちゃんはアダベルを抱きしめて優しく頭を撫でた。

 私はナゼールさんに『この書き付けを持って来た一家に洗礼式の席と大神殿の宿坊を与えてください』と書いた羊皮紙のメモを渡した。


「黄金週間の中日にアダベルの洗礼式があります、よかったらいらっしゃってください」

「ばっちゃも来て」

「そうね、アダベルちゃんの洗礼式は見たいわね」

「行こうか、ばっちゃ、幌馬車を借りて」

「王都に行くなんて何年ぶりかしら、楽しみだわ」


 私とアダベルは蒼穹の覇者号に乗り込んだ。

 気持ちの良い一家はいつまでも手を振ってくれた。


「ばっちゃ好きだなあ」

「良い人だったわね」

「ジャーキーもんまい」


 確かに、前の村で貰ったジャーキーも美味しかったが、ダシャばあちゃんの牧場のジャーキーはさらに美味かった。

 ワンコたちが影から頭だけを出して、でかいお肉の包みの匂いを嗅いでいた。

 お肉を奴らにもあげようかな。


 しかし、ジャーキーやら、チーズやらを色々な村から貰ったなあ。

 派閥のみんなでチーズフォンデパーリーでもしようかな。

 あれってどうやってチーズを溶かすんだっけか?


「あんま怒られなかった」

「やっぱり山奥の村だと、アダベルは神様の仲間なんだよ」

「え、神なんか会ったことないぞ」

「人間は大きくて凄くて格好いい竜を見ると、なんだか無条件に恐れつつも崇拝しちゃうんだろうね」

「そ、そうか、それはありがたい」


 山の神への奉納な感じになるんだろうなあ。

 大豪傑でもないとでかいドラゴンを倒そうとか思わないだろうしね。

 人間とは隔絶された存在だからなあ。


「マコトと一緒に謝罪と賠償で良かった、ありがとうな」

「なんのなんの、まかせろ」


 アダベルは妹みたいなもんだしな。

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