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第883話 ダシャのばあちゃんと出会う

 五件目で時間を食ったので、そろそろ三時だな。

 ホルボス山には四時に孤児達を迎えに行かなければならないから、謝罪は後一件ぐらいか。


「というか、アダベル、五年前の牛を食った場所とか覚えてなくない?」

「う、うん、年に一回の外出だから、覚えているかなとか思ったけど、わりと忘れている」


 どこの山村も似た感じだしなあ。

 邪竜さんは山村の中流牧場で牛をかっぱらうという手口だったらしい。


「中流なのはなんでよ?」

「貧乏な家の牛は不味いから。大牧場は冒険者の護衛とか居る事があるからだな」


 わりとリアルな理由であった。


「あと、一件ぐらいかな、あとは洗礼式後に被害に遭ったと言ってきた所を調査して補償しよう」

「あ、だったら行きたい所があるよ、もっと前なんだけど」

「行きたいの?」

「一度、もの凄く美味しい牛を食べたんだ。謝罪するなら、そこに行きたい」

「そんなに美味しかった?」

「うん、これまで食べて来た牛の中で一番だった」

「ほうほう」


 アダベルの手口だと、普通の牛をかっぱらうと思うのだが、それで美味しいとな。

 まあ、牛は生で丸かじりだったらしいから、肉牛にして美味いかどうかはわからないけどねえ。


 アダベルの誘導にしたがって蒼穹の覇者号を飛ばした。

 王都から見ると、南西の方だな。


 牧場が見えて来た。

 ……、ボロいぞ。

 貧乏農場だな。


「あれー、あれー、こんなに古ぼけて無かった気がするんだけど」

「何年前よ」

「んーと、んーと、二十、三十年?」


 そりゃ、そんだけ経てば家も古びようってもんだよ。

 一応牧場に牛が居るのでやっている牧場みたいだね。


 家屋の庭に寝椅子があって、細いお婆ちゃんが寝転んでいた。

 ひなたぼっこかな。


 私は蒼穹の覇者号を庭に降ろした。

 タラップを下りてお婆ちゃんに声をかける。


「こんにちはー、聖心教の司祭、マコト・キンボールです」

「あらあら、ごめんなさいね、体が悪くって、立ち上がれないの、寝たままでよろしいかしら、司祭さま」

「ええ、かまいませんよ」


 お婆ちゃんは首だけを持ち上げて微笑んだ。

 体が悪いのか、これも縁だし治すかな。


「お体が悪いのですか、治しましょう」

「あらあら、無理なのよ、老衰だからね」

『オプティカルアナライズ』


 ピッ。


 うん、老衰は本当だけど、あちこちの臓器に障害があった。

 治療魔法を掛ければ動けるようになるんじゃないかな。


『ハイヒール』


 青白い光がお婆ちゃんを包み込んだ。

 うん、血色が良くなって、表情も生き生きとしたぞ。


「あらあら、まあまあ、なんてこと」


 お婆ちゃんは寝椅子から上半身を持ち上げて体のあちこちを撫でていた。


「まあ、霞目も治ってしまったわ、ありがとうございます、司祭様」

「いえいえ」

「まあ、あれは飛空艇? 初めて見るわ」

「はい、王都から飛んで来ましたよ」


 お婆ちゃんは恐る恐る足を寝椅子から出して立ち上がった。

 よろよろしているが、しゃんと立ち上がり、まあまあと言いながら歩いた。


「すごいわねえ、若いのに司祭さまだけはあるわ、治療費はおいくらになるかしら」

「いえ、勝手にかけたのでいただけませんよ」

「あら、それは駄目よ、お坊さんは治療もお仕事なのだから、お金を取らないとだめよ」


 ああ、なんか良いお婆ちゃんだなあ。

 胸がほっこりした。


「この牧場で青いドラゴンに牛が食べられた事件はありませんでしたか?」

「あらあら、懐かしいわね、私がまだ若かった頃の事よ」


 おい、邪竜、二十年三十年前じゃないぞ。


「大嵐が明けた日の事で、良く覚えているわ、犬が騒ぐので庭に出てみたら、牧場で真っ青なドラゴンが牛を食べていたわね。それはそれは綺麗な宝石みたいな鱗でねえ、怖いというよりも見とれてしまったわね」

「そうでしたか」

「でもおかしいのよ、ドラゴンさんが振り返って私と目があって、そうしたらドラゴンさんがぺこりと頭を下げたの。私はあっけにとられてしまってねえ。でもおかしくて笑ってしまったの」


 そりゃ笑うしか無いかもねえ。


「ドラゴンさんは、まるで笑うなよと言うように首をちょっと横に振って、空に飛び上がったのよ。本当に嵐明けの空に吸い込まれるように真っ青なドラゴンで、綺麗だったわあ」

「あ、うん、ちょっとむっとした。でも牛が美味しかったからいいやって飛んだ」

「あらあら、あなたドラゴンの生まれ変わりなの?」

「いや、本竜」


 そう言ってアダベルはドロンとでっかいドラゴンモードに変じた。

 お婆ちゃんはアダベルを見上げて目を丸くして、そして笑い出した。


「まあ、まあ、人の言葉がわかるのかしらと思っていたけれど、解っていたのねえ。ああ、なんて懐かしいのかしら、良くいらっしゃいましたね、ドラゴンさん、会えて嬉しいわ。私はダシャと申します」

『邪竜をやっていたアダベルという』

「まあ、有名なアダベルト様でしたのね、噂に違わずご立派なお姿ですわね」


 ダシャ婆ちゃんは物怖じしない人だなあ。

 こういう人は好きだなあ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 前回が小悪党だっただけにばぁばが大物に見える件。
[一言] ダシャお婆ちゃん・・・世話をする人がいないと生活立ち行かなかったのでは?ご近所の人かご家族がいるのかな? あるがままに受け入れて生きてる人だなぁ(*'▽'*) サブタイはダシャ、本文の本…
[一言] 微塵も動じねぇwばあちゃんつよいなwww
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