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第881話 寒村カシラーギ村へと行く

「んで、この前の被害村から行こうか」

「お、おう、あっち」


 とりあえず離陸してホルボス山上空でホバリングした。


 アダベルは突剣山脈の方を指さした。

 自然公園から見えたから、たしかにこっちだな。

 初めて邪龍さんを目撃したんだったなあ。

 まさかこんなに仲良くなるとは思ってもみなかったよ。


 私は蒼穹の覇者号を回頭させて突剣山脈方面に加速した。


「エイダさん、こっち方向に村は?」

【三カ所ほど存在します】


 ディスプレイのマップに村の印がハイライトした。

 一番近いのはカシラーギ村か。

 行ってみよう。


 しばらく飛ぶと里山にへばりつくような村が見えて来た。

 牛の放牧地もあるね。


「ここ?」

「そう、ここ、牛を一匹たべました」


 アダベルが指さしたのは村の中でも中規模ぐらいの牧場であった。

 ここは牧畜村っぽいね。

 王都からそんなに遠くないので、牛肉とか牛乳を売っているっぽい。


 私は母屋の近くの空き地に蒼穹の覇者号を降ろした。

 牧場の中から中年のご夫婦らしき人と、お姉ちゃんと子供が走って出てきた。


 さて、下りよう。

 私はアダベルと連れだって船から下りた。


「すっげー、姉ちゃん飛空艇飛空艇、なんだろなんだろっ!」

「な、なんだろうね」

「こんにちはー、聖心教司祭マコト・キンボールと申します」

「あ、アダベルといいます」

「は、はあ」

「あんた、聖女さまだよ、大神殿の、去年の暮に見たろっ」

「ええっ、うええっ? なんで、聖女さまが来るんだ? こんな田舎に?」


 牧畜一家が大混乱してるな。


「ええと、一ヶ月前ぐらいに、この牧場で牛を竜に食われませんでしたか?」

「ああ、そうですそうです、邪竜アダベルトですよ、たまにこのへんの牧場で牛を食って行くんですよ、ほんと困っちまいますよ」

「あの、聖女さまは邪竜を退治に来て下さったので?」

「いえ、邪竜に謝罪させにきました、ほら、アダベル」


 アダベルは口を尖らせて前に出た。


「牛をかっぱらってごめんなさい」


 アダベルが頭を下げると、牧畜一家は頭の上に?マークを浮かべた。

 まあ、意味不明よね。


「アダベル、人化を解きなさい」

「お、おう」


 ドロンと煙に包まれると教会ぐらいあるでっかい青いドラゴンが姿を見せた。


『いやあ、すまんすまん』

「真面目に謝りなさいよっ」


 牧畜一家は腰を抜かして、あわあわとなっていた。


「このたび法縁がありまして、このバカドラゴンは聖心教に入信し、洗礼を行うことになったんですよ、それで過去の悪さを謝罪に回っておりますの」

『バカドラゴンはなかろう』


 また煙が上がって、バカドラゴンは小さいアダベルになった。

 アダベルは頭を下げた。


「牛を食べてしまって、ごめんなさいっ」

「そ、そうだったんですか、はあ」


 お父さんが気を取り直して立ち上がり、お母さんに手を差し伸べて立つのを手伝った。


「ま、まあ、入信というおめでたい事ですから、過去の悪さは、まあその、良いですわ、謝罪を受け入れますよ」

「ええ、そうね、ドラゴンをこんな近くで見れて、聖女さまも近くに見れて、差し引きお得だわ」

「弁償もいたしますよ、おいくらですか?」

「め、めっそうもない、聖女さまからお金を頂くだなんて、罰があたりまさあ、なあ」

「そ、そうですよ、ドラゴンのした事ですから。毎年二三匹は熊とか魔物に襲われて死ぬんですよ」


 お父さん、お母さんは慌てて言った。


「いえ、ご遠慮なく、市価で払います。お金も教会からではなくて、この子の持っていた財宝からなのでお気楽にどうぞ」

「そうですかー? それではご遠慮なく、八十二万ドランクほど頂ければ、その」

「え、相場は百万ドランクから二百万と聞きましたが」

「それは聖女様、王都の中央市場の値段です、生産者の牧場の卸値だと、こんなもんですよ」

「そうですよ、損金だと思っていた所ですから、ありがたい事なのですよ」


 まー、田舎の人は純朴だなあ。

 私はプラチナ貨幣袋を出して、プラチナ貨を八枚と金貨を二枚、お父さんに手渡した。


「ありがとうございます、なんとお礼を言って良いか」

「ほんとうに嬉しゅうございます。どうか中に入ってお茶でも飲んで行ってくださいまし、ささっ、ささっ」

「あ、いえ、他の被害牧場にも回らないといけませんので」

「そうですか、残念です」


 アダベルはほっとした顔をしていた。


「ゆるしてくれんの?」

「ああ、ドラゴンの娘さん、なんとも思ってないよ。あんたに牛を食われた牧場主はあんまり怒ってねえと思うよ。なにしろドラゴン様だからねえ」

「そうねえ、アダベルト様は人を襲わないから、かえって村の寄り合いでの良い自慢になったりするのよ、気にしなくて良いわ」

「あ、ありがとう」

「洗礼式はいつやるんだい?」

「黄金週間の中日に、王都コロシアムで」

「ああ、もうすぐじゃないか、良かったなあ」

「聖女さまに洗礼していただくのね、うらやましいわ、良かったわねえ」


 アダベルは照れてはにかんだ。

 牧畜一家もニコニコしながらアダベルを祝福してくれた。


 いや、一発目から良い一家にあたったなあ。


「良かったらご一家でアダベルの洗礼式に来ませんか?」

「よ、よろしいんですか?」

「ええ、洗礼式は抽選制ですが、係の者に言っておきますので」

「あんた、お金も入ったし、これは行きなさいって女神様のおぼしめしよ」

「ああ、そうだなあ」


 私は羊皮紙に『この方々を洗礼式会場へ入れて下さい。ご希望なら宿坊も使わせて上げてください』と書いてサインを入れた。


「ああ、これはこれは、ありがたい」

「まあ、大神殿の宿坊に、あそこなかなか予約が取れないのよ」

「え、黄金週間に王都に行けるの?」

「ほんと? わあっ、聖女様、アダベルト様、ありがとうございますっ」


 男の子もお姉ちゃんも大喜びだ。


「おまちしていますよ」


 私とアダベルは一礼して、タラップを上がった。

 牧畜一家はニコニコしながら何度も何度も頭をさげていた。


 よし、他の所も、こんな感じだといいな。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 牧場だと生き物飼う職業だから、一家で泊まり掛けは難しそう…。近隣と良好な関係で、王都にも近くそんなに時間掛からなければ、面倒見てもらえる程度かな?
[一言] 1ヶ月ってと思ったらまだマコトが入学してないな、そりゃアダベルもやんちゃしてたろう
[一言] ・・・自然災害扱いかな?アダベルちゃんの食害。 ところで邪竜と邪龍の文字が混ざってますが、アダベルちゃんは龍に進化(?)するのかな?
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