第878話 アダベルの財宝をチェックするぞ
武術場前まで校内を高速で駆けて、ワンコを影に入れる。
「ワンコに乗るの楽しいな、マコト、ペスをくれっ」
「だめだよーん」
「けちーっ」
アダベルは名残惜しそうにワンコをもふもふした。
片手で抱いたクロもペスを猫パンチしている。
ペスはぽちゃんという感じに影に沈む。
武術場倉庫から階段を下りて待合室へ、そして地下道を通って格納庫にはいる。
「エイダさん、こんにちは」
【こんにちは、マスターマコト、アダベルトさま】
「こんちゃーっ」
格納庫の奧に行くと倉庫の扉が自動的に開き、魔法灯が点いた。
やっぱ広いねえ。
使ってない飛空艇の部品とか、増槽とかが置いてあって、反対側にアダベルのお宝コンテナがあった。
「ときどき見に来るの?」
「そう、時々天気を聞きに来て、ついでにジャラジャラして楽しんでるよ」
金貨コンテナと、宝石コンテナ、武具防具コンテナがある。
いっぱいあるな。
「き、金貨を持って行くのか?」
「んー、かさばるから、ミスリル貨とプラチナ貨が良いんだけどなあ」
「そ、そうか、金色は駄目だが、銀色とか茶色はぜんぜん良いぞ」
「金貨好きね」
「色が綺麗だし、ピカピカしていて好きなんだー」
「お金使う時はどうしてるの?」
「学園長に貰う、一日銀色五枚だ」
一日のお小遣いが五千ドランクか、意外に裕福だなあ。
学園長はどうしてるのだろう、後で精算かな。
まあ、宝石でも一個持って行けば何年かは大丈夫そうだけどね。
ハシゴを掛けてコンテナをのぞき込む。
金貨ばっかりだなあ、高額貨幣が混じっていたら探し出すのが大変そうだ。
コンテナの中に入ってみる。
金貨の山だなあ、ジャラジャラいってる。
クロがコンテナの隅に行って革袋に猫パンチをしている。
開けてみると、プラチナ貨の袋だった。
コリンナちゃんが取り分けてくれてたんだな。
近くにミスリル貨の袋と、外国の大型金貨の袋とかがあった。
一応、ミスリル貨とプラチナ貨をもっていけば足りるかな。
金貨で二千万枚とか、結構な荷物だしね。
「アダベル、これは使っていいの?」
「ん、ああ、銀色は良いぞ、好きじゃ無いし」
「金貨より高いのに」
アダベルも、もうちょっと人間界の事を学んだら、お金の価値も解ってくるでしょう。
しかし、このミスリル貨とか誰の物だろうか。
やっぱり、ドラゴン退治に来た高位の冒険者とかの物かな。
ご冥福をお祈りします。
障壁を踏み台にしてコンテナの縁に乗る。
ハシゴにのって床に下りた。
「んじゃ、これで賠償しよう」
「そうか、許してくれるかな?」
「たぶん大丈夫よ」
エイダさんにハッチを開けてもらい、船内に入る。
「エイダさん、発進します」
【了解いたしました、ゲートを開きます】
前方のゲートがシャコンシャコンと開いていく。
あー、こっちの基地にもカタパルトが欲しい。
だが、船が飛び出す余地が無いんだよねえ。
諦めて微速前進、着陸台の上まで来たら垂直上昇である。
転回して船首を大神殿方向に向けて発進。
んで、すぐ着陸である。
聖騎士団の練兵所に飛空艇を下ろすと、孤児達が階段を駆け下りてくるのが見えた。
ハッチを開けると、孤児達は駆け上がってメイン操縦室に飛びこんできた。
「わあいわあい、飛空艇だー」
「あんまり暴れないのよ」
「「「はーいっ」」」
「キルギスは?」
「お姉さんのお世話で忙しいって」
「そうかー」
キルギスくんも五本指のお世話をせっせとしているみたいだね。
「マコねえちゃん、犬、犬いる?」
「いるわよ」
念話で、ペスとジョンとポーポーちゃんを影から出す。
孤児達は歓声を上げて従魔さんたちをなでくりまわしていた。
「さて、みんなホルボス山に行くよー」
「「「はーい」」」
練兵場からテイクオフ、船首を回頭させてホルボス山に向けて飛ぶ。
川をまたいで、ちょっと行くとホルボス村だ。
やっぱ近いね。
村の広場に蒼穹の覇者号を降ろすと、トール王子とティルダ王女、そして村の三馬鹿が駆けよって来るのがモニターに映った。
アダベルと孤児達はマッハの速さで駆け下りていった。
やあ、子供は元気だなあ。
最後に私が下りると、村長とリーディア団長が寄ってきた。
「おかえりなさいませ、御領主さま」
「マコトさま、こんにちは」
「こんにちは、村長、リーディア団長」
アダベルと孤児達はトール王子とティルダ王女、村の三馬鹿とぎゃいぎゃいと挨拶を交わしていた。
「あ、村長これ、アダベルの洗礼祭のポスター」
「おお、これは素晴らしい物ですな、アダベルさまが洗礼なさるので?」
「そうそう、王都の守護竜になってくれるって。それで、村でも希望者がいたら来ても良いわよ」
「どこで行われるのですか?」
「王都コロシアムだよ」
「それは行きたい者が多いと思いますな」
「少数なら飛空艇に乗せるし、多かったら馬車で王都まで行ってね、大神殿の馬車を回しても良いし、一泊したいなら大神殿の宿坊に泊まれるわよ」
「それは良いですな、村が空っぽになってしまうかもしれませぬ」
村長はわっはっはと笑った。
「リーディア団長と甲蟲騎士団も参加してね、式典が終わったら、トール王子とティルダ王女、村の三人と王都見物につれていくわ」
「それは良いですね、是非お願いします」
リーディア団長はニコニコと笑った。
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