第877話 大神殿へ行き各種連絡をする
思いだして私は収納袋からポスターを取り出してカマラさんに渡す。
「お店に貼っといて」
「おおーすごいすごいっ、わあ……」
マルモッタン師の刷った版画をしげしげと見るカマラさんである。
「ど、どうしたの?」
「これって、ええと、誰が描いたんですか?」
「マルモッタン師だよ」
「おお、巨匠! この世界のレオナルドダビンチにあたる人じゃないですか! でも……」
な、なによう。
「前世でファンだった人の画風に似てて、マルモッタン師も転生者なんですかね?」
「うっ」
そうか、カマラさんも前世はオタクだから、私の画風を知ってる可能性が微粒子レベルで存在するな。
み、身バレは避けたいので濁そう。
「ぐ、偶然じゃないかな、ははは」
カマラさんにいぶかしげな目で見られたぞ。
「どう見ても、前世の漫画絵なのに」
「乙女ゲームだからそういう事もあるさ」
ああ、直筆じゃなくて、マルモッタン師が書き写した銅版画で良かった。
いぶかしげなカマラさんを置いてペスに乗って走り去るチキンの私であった。
ペスをとっとこ走らせて大神殿へ。
しかし、これは便利だな、ペスを手放せなくなりそう。
自転車というよりバイクに近い速度がでるぞ。
爽快である。
大神殿でペスを影に入れる。
使い終わったら片付けられるのも高得点だなあ。
ああ、クヌートに返したくないなあ。
一生うちの子にならないかなあ。
大階段をあがって行くとリンダさんがやってきた。
「おかえりなさいませ、マコトさま」
「おはようリンダさん。洗礼祭の出店の仕切りってどこがやってるの?」
「基本的に教会の祝祭部が計画し、屋台ツンフトに依頼する感じですね」
やくざの仕切りではないのか。
というか、屋台ツンフトにやくざはいそうだが。
「ひよこ堂とツバメ食堂の二つの出店を洗礼祭に出したいのだけれども」
リンダさんは眉をあげて、手をポンと叩いた。
「それは良いですね、聖女パンを売ってもらえば信者たちも喜ぶ事でしょう。ツバメ食堂とは?」
「下町にある食堂よ。ちょっと縁があって仲良くなって、面白い料理を作る所だから応援したいの」
「かしこまりました、屋台ツンフトに話を通しておきますね」
「あとで、兄ちゃんと、ツバメ食堂のカマラさんが打ち合わせに来るので対応してね」
「お任せ下さい。マコトさまお気に入りの食堂は、一度行ってみなくてはいけませんね」
「なんでも美味しいよ、リンダさんだとカツ丼好きかも」
「それは楽しみですね」
さて大神殿の用事が済んだので帰るかな。
時計を見上げると、十時半頃であるよ。
大階段を下りて、ペスを出そうとしたら、ジョンが顔を出して、今度は僕が行くよという感じの顔をした。
よっしゃよっしゃ。
「それじゃ、リンダさん、またねー」
「はい、行ってらっしゃいませ、マコトさま」
ジョンに跨がって学園長宅を目指して走らせる。
おお、ジョンの方が早いけど、ペスより揺れるな。
街ゆく人達が犬にのった私を見て目を丸くしておる。
とっととジョンは走り、学園長宅へと着いた。
「ありがとう、ジョン」
「うおんっ」
彼は嬉しそうに吠えると影の中に姿を消した。
ノッカーを叩くとメイドさんがドアを開けた。
「お勉強会終わりましたか?」
「もうすこしですね、中でお待ち下さい」
応接室に通されてお茶が出された。
どうやら、食堂かどこかで勉強会を行っているようだ。
良いねえ。
孤児院でも女官さんがお勉強を教えてくれるけど、学園長は本職の教育者だしね。
ありがたい事です。
ホルボス村と地獄谷にも教育施設を作らないとなあ。
ちょっと待っていると、アダベルと孤児達がドアを開けて出てきた。
「学園長先生、ありがとうございましたーっ」
「また明日ー」
「うむ、復習しておきたまえよ」
アダベルが私に気が付いて寄って来た。
「お待たせ、マコトっ」
「大丈夫、あまり待ってないよ、行こうか」
「ええと、すぐ飛空艇?」
「いや、まず、アダベルの財宝からお金を持ってこないと」
「お、おう……」
孤児達も寄ってきた。
「わたしたちはー? マコねえちゃんっ」
「あんたたちは孤児院にもどってなさいよ、あとで飛空艇を回すから」
「わかったー、じゃあ、また後でねアダちゃんっ」
「おーう、またなー」
私はアダベルと孤児達と一緒に学園長宅を出た。
「では、頼んだよ、キンボールくん」
「わかりました」
さて、影犬を使って素早く移動しようか。
私はペスとジョンを出した。
「おおーっ!」
「私はジョンに乗るから、アダベルはペスね」
「そうか、ペス、よろしくなっ!」
「うおんっ!」
私たちは犬に跨がって道を駆け出した。
歩いて大神殿を目指す孤児達を追い越していく。
「わあっ!! いいなあ、アダちゃん!」
「今度私も乗せてよー、マコねえちゃん!」
「また今度ねー」
早い、影犬は風のように早い。
あっという間に校門へついて、校内へと駆け込む。
「うひゃひゃっ、早いなペス、でかした!」
「うおおんっ!」
アダベルに褒められてペスのテンションがだだあがりである。
ワンコは便利だなあ。
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