第875話 金曜日は土下座行脚する
目を覚ました。
ぬおー、なんか夢を見たのだが覚えて無い。
なんか大事な事が解ったような気がしないでも無いが、揮発してしまった。
カーテンを開けると、コリンナちゃんが起き出す所だった。
「おはようマコト」
「おはようーコリンナちゃん」
ハシゴを下りて身支度をして用を足す。
ダルシーがケトルを持って来たので、コリンナちゃんと向かい合ってお茶を飲む。
「マコトは今日から休日かあ」
「うしし、良いでしょ」
「登校はするの?」
「うんにゃ、朝ご飯済ませて学園長宅に行ってアダベルを捕まえる」
「おお、なにすんの? ディラハン退治?」
ディラハン退治は後だなあ。
「アダベルが邪龍時代に食べた牛の持ち主に土下座行脚してくる」
「百年分?」
「いや、さすがにそんなには、十年分かなあ」
「牛十匹か、予算はアダベル財宝?」
「そうだね、牛ってどれくらいするもの?」
牛一頭、高級肉牛とか乳牛じゃないから、安いかな?
「一頭、百万ドランクから二百万ドランクかな」
「意外にするね、一年に一匹だから、最大で二千万ドランクか」
アダベルの財宝ってどれくらいあるんだろう。
金貨がザックザクだったけど。
「あいつは金貨が好きで、プラチナ貨とか、ミスリル貨はあんまり好きじゃないんだよな。たしか、百万ミスリル貨が十枚ぐらいあったぞ、あと十万プラチナ貨も五十枚近くあったな」
「ああ、それは助かるね、宝石を売りに行かないといけないかと思った」
金貨は一枚一万ドランクだ、二千枚運ぶよりは楽だな。
「外国の古い貨幣とかもあったなあ、宝も戻したい所だけれど、百年前だしね」
「百年前の被害額を算出する方が大変だから、そっちは無視しよう」
わりとザルな謝罪と賠償だけど、まあ、しゃーなし。
「足下を見て値段をつり上げたりされたら、どうする?」
「教会の無い村は無いので、無理を言う村人がいたら、神父さんに叱ってもらう。あまりにも目に余ったら破門だね」
「村で破門されたらやばいな」
破門されたら結婚式も葬式も出せないからね。
わりと凶悪な罰である。
ジーン皇国の皇弟さまも今頃困ってるだろうなあ。
お茶も飲み終わったので、部屋を出て施錠する。
階段を下りてエレベーターホールでみんなと合流した。
食堂に入ってクララにナッツポリッジを頼む。
うまうま。
女子寮の玄関で登校していくみんなを見送って私も外に出る。
学園長の家は割と近いから良いね。
と言うわけで学園長宅のノッカーを叩く。
出てきたメイドさんにアダベルを呼んでもらう。
彼女はドドドと階段を下りてきた。
「おお、マコト、早いな、どうした?」
「アダベルは今日暇?」
「いや、午前中は孤児院の子が来て勉強する、昼前にホルボス村に飛んで邸宅でみんなでお昼を食べて村で遊ぶ。今日は村の森でウサギ狩りだよ。マコトも一緒に来る?」
午前中はお勉強か、それは邪魔したら悪いな。
「お昼から、アダベルが牛を食った村に行って謝罪と賠償をしよう」
「ううっ」
アダベルはドアノブを持ってしかめっ面をした。
「や、やんないと駄目かな?」
「人の物を勝手に食べては駄目だからね」
「うーうー」
アダベルは下を向いて唸った。
「人間の事を知らなかった昔だからしかたが無いけど、きっちり謝った方が良いよ」
「そうだなあ、私の持ってるケーキを勝手に食われたような物だしなあ、それは怒ってるよなあ」
「洗礼式前にやっておこうよ」
「ひゃ、百年分?」
「さすがに百年は、十年分、十件で良いと思うよ」
賠償が噂になれば、われもわれもとやってきそうだしね。
「食べた村は覚えてる?」
「だいたいだー」
「飛空艇で一緒に行って、私も謝ってあげるから」
「マコトは関係無いのに」
「友達でしょ」
アダベルはニカっと笑った。
「友達って良いなあ、ありがとうマコト」
アダベルが笑うと、私もほっこりするなあ。
クロが階段をトコトコ下りてきて、私の足下でニャーンと鳴いた。
「おお、クロ、お前も一緒に行こう」
「にゃーん」
お、クロが私の影をカリカリやっているな。
ワンコたちに気が付いたか?
「「うおん」」
「ぽっぽー」
ポチとジョンとポーポーちゃんが顔を出した。
「うおおおっ!! なんだこれなんだこれ」
「あ、テイムした魔物、これがポチ、こっちがジョン、こっちがポーポーちゃん」
影から出るように念じたけど、なんかアダベルを怖がっているみたいだね。
「でてこいでてこい」
怖く無いので出ておいでと念話すると、カチカチに緊張しながらポチとジョンとポーポーちゃんが出てきた。
おや、従魔さんたちが、私の頭の上を見て、視線を動かし、アダベルの頭の上を見た。
「「うおんっ!!」」
「ぽっぽーっ!」
急にポチとジョンとポーポーちゃんが親愛の情を浮かべてアダベルに突進した。
「ぎゃー、可愛くて格好いいー、わあ、舐めるなようっ、にゃはは」
アダベルは従魔さんたちにもみくちゃにされた。
あーうー。
いや、これはアダベルが温厚なドラゴンと気が付いて飛びついただけで、その、テイム姉弟だから親愛を浮かべた訳ではなかろう。
うん、アダベルはテイムしてないから。
うんうん。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




