第874話 テスト明けの開放感にひたりながら晩餐をいただく
お風呂を出て、下着をつけてダルシーにドライヤーをかけてもらう。
ぶいーーん。
椅子に座ってワンコどもをわしゃわしゃする。
ジョンが顔を舐めてくるのでくすぐったいぞ。
しかしホルボス山麓の湯は温まるなあ。
ぽかぽかであるよ。
ポーポーちゃんが飛んで来て私の太ももの上で丸くなった。
可愛いねえ。
カロルがアンヌさんにドライヤーを掛けてもらっている。
コリンナちゃんは自分でかけてるな。
髪が乾いてキラキラになったので制服を着る。
ああ、さっぱりした。
ワンコたちとポーポーちゃんを影に入れて脱衣所を出る。
「そいじゃ、また晩餐にね」
「わかったわ、また後で」
エレベーターホールでカロルを見送って、コリンナちゃんと一緒に階段を上がる。
「コリンナちゃんは、また勉強?」
「当然だよ、テスト中だし」
「がんばってね~」
「くそう、一足先に自由になって良いなあ」
「けけけけ」
うらやましがられると嬉しくなるね。
「明日は何するんだ? 寝てる?」
「それも魅力的だけど、アダベルと土下座行脚かな」
「どこへ?」
「奴が牛をかっぱらった村々」
「あー、弁償旅行か」
「そんな感じ」
謝って牛代を弁償して赦してもらおう。
一年に牛一頭だと聞いたから、そんなにあちこちに行かなくても済みそうだね。
205号室に入る。
コリンナちゃんは早速、机に向かって勉強を始めた。
今は四時半、晩餐までちょっと時間があるね。
ベットの上で本を開いて読む。
すやあ。
……。
…………。
「マコト、晩餐だぞ」
「うにゅ? うお、寝てた」
テスト疲れかな。
寝落ちしてしまった。
二人で部屋を出て階段を下りる。
踊り場から見える空はすっかり暗くなっていた。
エレベーターホールに行くと派閥のみんなが集まっていた。
「いやあ、お待たせお待たせ」
「今来た所ですわ」
「待ってませんわ」
お洒落組は気遣いの固まりだねえ。
ほっこりするね。
カロルがエレベーターで下りてきたので食堂に入る。
ドアを開けるとふわっと良い匂い。
「クララ、今日のお献立はなに?」
「下級貴族食は、レンズ豆とチキンのシチュー、シーザーサラダ、ポーチドエッグ、黒パンだよ」
「おお、美味しそう」
「それよりマコト、アダベルさまの洗礼式にパンのお店を出店していい?」
クララは洗礼式のポスターを指さしながら言った。
「わ、良いねえ、リンダさんに申し込んでみてよ」
「リンダ隊長か、解ったわ。イルダさんの調理パンとか喜ばれそう」
会場はコロシアムだから屋台とか出てるだろうし、良いね。
「クリフ兄ちゃんが行くみたいだから、二人でやってみたら?」
「聖女さまの実家の屋台は売れそうね、良いわね、クリフさんに聞いてみるわ」
良いねえ、楽しそうだ。
トレイを取ってお料理のお皿を取っていく。
「マコトさん、食堂スタッフも洗礼祭に行きたいのですが」
「聖女関係者の席があるから、リンダ隊長に聞いてみて」
メリサさんたちも来るのか。
「噂のアダベルさんというか、ドラゴンを一目見てみたいのですよ」
「あー、確かに滅多に見られる物じゃないからね」
大神殿の練兵場に行けば、ドラゴンのアダベルを昼前に見る事ができるけどね。
わりと噂になっていて、野次馬が多いって、アンドレとルイゾンが愚痴っていたな。
ケトルからカップにお茶を注いで、トレイをテーブルに運んだ。
「洗礼式、評判ね」
「ドラゴンは人気があるね、アダベルの竜体綺麗だしね」
「奴のドラゴン形態は格好いい」
「一度、籠に乗ってみたいみょんなあ」
派閥員がホルボス山に行く時は飛空艇だものね。
さて、みんなが揃ったので、食事のご挨拶。
「いただきます」
「「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
ぱくり。
んー、美味しい。
とろとろでチキンもほろほろやでー。
優しい味で美味しいね。
ポーチドエッグも半熟で良い感じ。
シチューだとスープの代わりに一品付くからいいなあ。
「暗殺者も撃退しましたので、心置きなく派閥大会と洗礼式が行えますわね」
「残るはディラハンだけだね、黄金週間中にとっ捕まえたい所ね」
「テイムできますかしら?」
「というか、テイムしてもなあ、ディラハンはなんかの役にたつのだろうか」
「下の竜馬だけでもテイムすれば良いわよ」
「そうだぞ、竜馬なんか、勇者の乗馬に使われる魔物だし、格好いいぞ」
私は馬持って無いから良いかもね。
まあ、飛空艇があるから要らないといえば要らないけどね。
馬上戦闘とかしないし。
竜馬だけ取ったら、上のディラハンは徒歩なのだろうか。
たしか、騎士と同じぐらいの戦闘力らしいけど。
あまり、ダンジョン向きの魔物じゃないな。
テイマーはロマンなんだけど、ちょっと森に行って角兎とかテイムしてもなあ。
動物はお世話が大変だし。
ダルシーの手間が増えて、しかも、角兎は使い道が無い。
「テイマーの勇者といえば、アラン様ですわね、五色の古代竜と十種の魔物を従えて魔王軍を打ち破りましたわ」
「一色ならマコトしゃまもテイムしてるみょん」
「ア、アダベルとは友達でテイムはしてないわ」
やれやれ、何をおっしゃっているのかしら、という生暖かい目で派閥員全員から見られた。
ち、ちがうもんっ。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




