第873話 ホルボス山麓の湯の素でまったりあたたまる
校内にポスターを貼り終わったので集会室でお茶を飲む。
お茶うけは、さっきクリフ兄ちゃんに貰ったクッキーだな。
ナッツが入ってサクサクして美味い。
「黄金週間には行事がいっぱいね」
「聖女派閥大会と、アダベルの洗礼式と、あと週末に遠距離の派閥父兄を飛空艇で送迎するよ」
「送迎は日帰り?」
「うんにゃ、どこかで一泊して回るよ、さすがに日帰りだとせわしない」
「我がアンドレア領でお泊まりくださいませーっ、ワイン、ヌーボーが今年は良いのが出てますよー」
アンドレアさんの領かあ。
新ワイン良いなあ。
「ブロウライト領で牛食っていけよ」
「牛かあ」
「わおんっ」
やや、牛と言ったらワンコどもが影から顔を出した。
よしよし、もふもふ。
「楽しそうね、航路とか計画しないと」
「誰の領に行くのか……」
「カーチスのお父ちゃんたちは送らないと、あと、メリッサさんのご両親一行、あとはー」
エルザさんのお家はカーチス兄ちゃんの近所だし、カロルのお父さんは来てないな。
ヒルダさんのお父さんはタウンハウスの牢塔にいるし、エルマーの両親は王都住みだね。
「ユリーシャ先輩のご両親は?」
「アップルビー公爵家は夏までタウンハウスですわよ」
貴族によって色々なのよねえ。
ブリス先輩は家から勘当中だし、カトレアさんのご両親は王都勤め、というか、ポッティンジャー公爵家のタウンハウス警備をやっているらしい。
コイシちゃんのご両親は王都に来ていない。
マリリンのご両親も王都には来てないようだ。
思ったより送って行く家が少ないな。
コリンナちゃんちは王都の下町だしね。
一度彼女の実家にはお邪魔したい所だなあ。
「ジュリちゃんのお家は?」
「うちのお父様は魔法塔勤めですわぁ」
王都在住の父兄多いな。
「ライアンくんのご両親は?」
「あ、うちは領地無いですよ、法衣男爵の家なんで」
そっか、官僚系のお家だったか。
「オスカーのご両親は?」
カロルがオスカーめに声を掛けた。
「うちも軽輩なので領地はありません、マイレディ」
グランヴィル男爵家は武門系の法衣だったかな。
王都警備の騎士の家だ。
「うちとメリメリの家だけか、西部に飛べば解決だな」
「良かった、派閥員全員が領地を持ってたら、飛空艇が混み混みになるところだったわ」
「うちの領でワインでおもてなしですわ-」
「俺んちの領で牛肉食い放題だ」
カーチス兄ちゃんとメリッサさんがにらみ合った。
「領袖、送迎旅行に私たちは付いて行っても良いのですか?」
ヒルダさんが私に声をかけてきた。
う、どうしようか。
「みんな来いっ、ブロウライト領を見せてやる」
「おー、殿の領は見てみたいですっ」
「楽しみだみょんっ」
メリッサさんとマリリンが見つめ合った。
「メリッサさまの御領地に行ってみたいですわあ」
「来て来てマリリン、是非見てもらいたいの」
ああ、これは全員参加して旅行する奴だ。
きっとアダベルも一緒に来る。
飛空艇で寝泊まりしないならば、船室とラウンジがあるから乗せられるね。
泊まりは現地の領館かホテルをとれば良いね。
「よし、私が航路図を作成しよう」
「お願いね、コリンナちゃん」
「まかせろー」
まあ、エイダさんに頼めば航路は全自動で一発だが、それも趣がないしね。
「みんなで旅行、楽しみね」
「うんうん、楽しもう、カロル」
さて、お茶がすんだのでお風呂に行こうかな。
「あ、マコト、持って来たわよ、ホルボス山麓の湯の素」
カロルが懐からガラス瓶に入った顆粒を出して来た。
ラベルに特徴的なホルボス山の絵が描いてあり、『ホルボス山麓の湯』と商品名が書いてあった。
「おお、高級そう」
「今から試してみましょうよ」
いいねえ、という事で女子みんなで女子寮へと移動する。
三時過ぎなので、そんなに混んでないね。
また、ペスとジョンとポーポーちゃんを影から出して脱衣所に居て貰う。
今日はポチがミリヤムさんの影で護衛である。
明日はペスだな。
日曜日にワンコどもとポーポーちゃんを散歩に連れて行って、お風呂に入れて、わしゃわしゃ可愛がりたいのだが、天気はどうだろうか。
みんなで服を脱いで浴室へと入る。
「あら、今日は聖女の湯ではありませんわよね」
湯船に聖女の湯解放戦線のエイミーさんたちが居た。
「今日はオルブライト商会の新作の湯の素のテストだよん、入れて良い?」
「わあ、良いですね、温泉系ですか?」
「そうよ、ホルボス山の源泉から取った湯の花を採取して乾燥させた物よ」
「それは効きそうですねっ」
エイミーさんたち、お風呂好きね。
カロルがホルボス山麓の湯の素を湯船に入れると、ふわっと白濁して、独特の硫黄の匂いがした。
ああ、温泉臭い~~。
「あ、これは成分強そう、良い匂い」
「うん、良い感じに溶けるわね」
さっそくかけ湯をして湯船に入ってみる。
おーー。
おーー。
おーー。
しみるなあ。
カロルも湯船に入ってきた。
「ああ、肌触りがとろりとして良いわね。肌もしっとりする感じ」
「良いですねこれ、定期的にやってくれませんか?」
「そうね、エステルさまに買ってもらいましょう。そんなには高く無いから」
「ほんとですか、個人的に買いたいかもっ」
「オルブライト商会で市販されますよ、お値段は一瓶二千ドランクです」
おお、聖女の湯の素に比べると格段に安いね。
定期的に買えそうな値段だね。
「買いますっ、お父様お母様にお勧めしたいわ」
「私も欲しいですっ」
「オルブライト商会の販売所に行けば良いんですわよね」
「まいどありがとうございます、数は結構作っておりますから、早々に売り切れはないと思いますよ」
うんうん、ホルボス山の温泉イメージが付いて湯治客が来ると良いねえ。
早く地獄谷もホルボス山麓の奥座敷みたいな感じに宣伝したいね。
開発はいつ頃終わるかな?
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