第871話 一足お先に黄金週間
サーヴィス先生が教室を後にして、アンソニー先生がやってきた。
ホームルームで二三の連絡をして、起立礼着席、である。
いえーい、中間テスト終了だぜーっ。
なんというか開放感が凄い。
ひゃー、遊び回りたい~~。
「良いわね、マコトは」
「カロルは魔術の試験とか実習とか楽勝でしょ」
「一抜けされたのが妬ましいのよ」
まあ、良いでは無いか良いでは無いか。
「おーいマコト、昼はどうする?」
いつものようにカーチス兄ちゃんとB組のみんながやってきた。
「ひよこ堂に行って、自然公園で食べる? もう暗殺者はいないし」
「そうだな、そうするか」
さて席を立って廊下を歩き、階段を下りて玄関へ。
聖女派閥全員集合じゃ。
なぜか王家主従もいる。
「今日はビビアンさま接待の日では?」
「テスト中は無いんだよ」
「無いのだキンボール」
そうかそうか。
ならば一緒に行こう。
みなでぞろぞろとひよこ堂へと向かう。
そして思い思いのパンを買って自然公園へ。
芝生に敷布を引いてランチを食べるぜ。
「なんだか解放感で清々とした顔をしてるな」
「私は光魔法なんで明日の試験は無いんだ。一足お先に黄金週間だよん」
「くっそー良いなあ」
やあ、空は晴れわたり、心地よい風が吹くねえ。
どこまでも青い空を見上げていたら、アダベルがドラゴンスタイルで上空を行くのが見えた。
手を振ると、彼女も手を振り返してくれる。
またホルボス山に行くのだなあ。
私も行って、ディラハンをテイムしたいなあ。
午後から行こうかな。
村道がどこまで出来たかとか知りたいし、あと地獄谷にもしばらく行ってないので見たいな。
あー、何でも出来る、黄金週間万歳。
「そういえば、ホルボス山の湯の素が来たわよ、後で実験したいわ」
「おお、出来ましたか、試してみたいね」
「商会で実験したところ、良く効く入浴剤になったみたい」
それは良いねえ。
ちょっと試したい感じ。
「ホルボス村の温泉に王都に居ながら入れるのですのね、素敵ですわ~」
「肌がつるつるになりますのよね~」
聖女パンと卵サンドを食べおわり、ソーダを片手にカロルに寄りかかる。
彼女は何よ、という顔をしたあと、微笑んで私の後ろ頭をこちょこちょとくすぐった。
「うひゃひゃ、やめろう」
「私は明日もテストなのに、妬ましいわ」
うむ、イチャイチャするのは楽しいのだが、がちレズの人の目が怖い。
ううむ。
「月曜日の夕方から、派閥大会が王都ホテルであります。派閥員は全員参加だそうです」
コリンナちゃんがクリームコロネをもぐもぐ食べながら羊皮紙を読み上げた。
「ジョンおじさんから報告来たの?」
「来たよ、準備は全部クレイトン家がやったから、派閥員は礼服かドレスで王都ホテルに来いとさ」
助かるねえ、まあ、生徒じゃ無くて保護者の家の親睦のパーティだからいいんだけどさ。
「ロイドさまは、どうなりますかーっ」
「ロイドちゃんは聖女派閥でないので参加不可です」
「ひ、酷いよ、マコトくんっ、僕も出たいよ」
「保護者として王様くるとかなわないし」
ケビン王子がくすくす笑った。
「では、僕もロイドの保護者として参加できるかな?」
「だめでーす」
王家はくんなっ。
派閥の大会の格が上がってしまうではないか。
「これほど王家を邪険にする派閥はあるまいな」
ジェラルドが苦笑しながら言った。
「ジェラルドはコリンナちゃんのエスコートをしてくれるなら参加オッケーだよ」
「な、ばっ、マクナイト様はお忙しいよっ」
「ふむ、コリンナ君とか」
お、ちょっと考え込みおったなジェラルド。
コリンナちゃんは彼の方をちらっちらっと見て期待している模様。
「派閥の大会にエスコートは必要無いだろう、今回は遠慮しよう」
「そ、そうですよねー」
コリンナちゃんがっかりであった。
ジェラルド、そういうとこやぞ。
「派閥大会はダンスパーティですか?」
「ええと、ああ、立食パーティだから宴会だね」
コリンナちゃんが羊皮紙をたぐって答えた。
「教会関係者はいらっしゃいますの?」
「あ、どうだろう?」
教皇様も呼べば来そうだけど、あと、リンダさんは呼ばなくても来そう。
教会は聖女派閥の後ろ盾だからなあ。
後で大神殿に行って聞いてみるか。
「おじいちゃまをお呼びしたいが、敵対派閥ではあるので難しいか」
「アドルフのじっちゃんかあ、誘わない方が無難かな」
「そうだな」
騎士の家はそういう所は厳しそうだし。
「コイシの父兄は王都に来てるのか?」
「来てないみょんなあ、うちの領は遠いみょんから」
「惜しいな、公爵家や、侯爵家に挨拶をしておくと色々と便利なのに」
「あはは、うちは武門みょんから、そういうの苦手だみょん」
それは可哀想だなあ。
コイシちゃんの父兄は新入生歓迎パーティにも来てなかったからね。
次の機会には飛空艇でお迎えしようかな。
「マーラー家の方はいらっしゃいませんの?」
「お父様は塔に監禁していますから来ませんわよ」
一瞬で場が凍り付いた。
ヒルダ先輩は彼女が当主だからねえ。
「カロルのお父さんは来ないの?」
「来ないわね、いまどこで何をしているのやら解らないし」
「どこに行ってるのよ」
「垂直穴ダンジョンに行くって聞いたけどね」
オルブライト家もたいがいだよなあ。
あと来そうなのはアダベルぐらいか。
学園長とかも来ないかな?
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