第870話 テスト四日目!! 木曜日
さてテスト四日目、中間テストの金曜日は魔術の筆記と実習試験なので、今日が終われば、私だけ一足お先に黄金週間である。
うっしっし。
明日はどうしようかなあ。
そうだ、飛空艇でアダベルの土下座行脚に付き合うかな。
牛泥棒の弁償に行かなくては。
などと考えていたら予鈴が鳴って数学のバランド先生が入って来た。
小間使いさんたちが問題用紙と解答用紙を配っていく。
「それでは始めなさい」
先生の開始の合図でクラスと名前をまず解答用紙に書き込む。
カリカリカリカリ。
この世界の数学の水準は中世レベルなので、たいした事は無い。
算数レベルだね。
高等数学もあるんだけど、そういうのは文官になってから覚えるっぽい。
とりあえず四則演算が出来れば問題無し。
カリカリカリカリ。
文章問題は去年の問題の数字部分を削って別の数値に書き換えている感じ。
ちょっと数字が読みにくいから読み取りミスをしそうだなあ。
テキパキと解いていこうー。
カリカリカリカリ。
簡単な幾何とかもあるね。
しかし、数学解いてるとテストーって感じがする。
うひひ、快調快調。
カリカリカリカリ。
全問解いたら見直しと再計算。
ケアレスミスで点数落としてはならんからな。
よしよし、良い感じ。
「そこまで」
先生が終了を宣言した。
小間使いさんが問題用紙と解答用紙を回収していく。
ふう、大物が終わったぜ。
終業の鐘と共に、バランド先生は教室を出て行った。
「マコトは数学得意なの?」
「コリンナちゃんほどじゃないけど、わりと得意よ、カロルは?」
「錬金術だと割と数学使うわよ、割合とか、パーセント計算とかあるし」
ああ、そうなんだ。
魔術本体よりも数学が近いか。
コリンナちゃんは脳内で弾道計算を暗算してても驚かん。
予鈴が鳴って魔術理論のアウィ先生が教室に入ってきた。
小間使いさんたちが問題用紙と解答用紙を配る。
「それでは初めてください」
初手、クラス名と名前。
カリカリカリカリ。
さて、魔導理論である。
まあ、魔法属性の名前とか、魔術の発動理論とかの問題が出た。
ちなみにこの世界、レベルとかは無いので、自動的に魔法を覚える事はない。
初級と中級を分けるのは発動難易度と手順の難しさなんだな。
カリカリカリカリ。
魔法の呪文というのは、過去に誰かが式を組んだ物をどんどん洗練させた物が伝わっている。
だから古語で詠唱するのが基本。
まあ、魔方式を脳内で走らせれば良いだけなので、慣れてくれば詠唱短縮、無詠唱でも発動ができる。
カリカリカリカリ。
魔力が何であるかは、実は未解明らしい。
体内にある魔導エネルギーである魔力を使って、大気中の魔素成分をくみ上げて、作用を発動させている、と考えられている。
どうも、現在使われている我々の魔法は、前史超魔導文明の残滓ではないかという説もあるね。
まあ、何か解らない謎エネルギー現象を、言葉や、図形や、物質成分で発動するのが魔法であるのだ。
カリカリカリカリ。
魔法の発動形式は、呪文、魔法陣、錬金薬が三要素なんだけど、ダルシーみたいに体の動きとか、ダンス、はては歌でも発動させる事ができる。
発動形式はマイナーな物まで含めると相当数あるらしい。
組紐魔術とか、ドラム魔術なんかもあるらしい。
カリカリカリカリ。
魔法は脳から発せられる力だから、脳を破壊されると魔法は止まる。
だが、遅延魔法というのがあって、例えば兜に、脳をやられた瞬間に治癒の魔法が発動するように魔法陣を入れるとかやった英雄の話が伝わってる。
人間は、いろいろ工夫して死なないように頑張るんだよなあ。
カリカリカリカリ。
「はい、ペンを置いて下さい」
小間使いさんが、問題用紙と解答用紙を回収していく。
終業の鐘が鳴り、アウィ先生は一礼して教室を出た。
「魔力ってなんだろうねえ、カロル」
「さあ?」
うむむ、前世で「素粒子ってなんだろうね」と問うような無意味な質問であった。
見えないし、解らないのだから、そういうもんだとしか言えないね。
前世でも素粒子理論なんか良くわからない仮説だしな。
前世で素粒子理論の本を読んだけど、唐人の寝言かと思ったよ。
さて、次の試験は錬金である。
土属性以外の生徒はここで今日の試験は終わり。
王家主従とかは教室から出て行った。
エルマーは受講したので残ってるね。
B組、C組の土属性の子たちがA組にやってきた。
お、コリンナちゃんも来た。
彼女は私の隣に座った。
「やあ、一緒にテストが受けられるのは良いね」
「まあねえ、ただまあ、明日の魔術のテストに合算だからね」
「土属性だけのボーナスよね」
テスト順位には関係ないけどね。
全部のテストの合算の横に括弧で表記されると聞いた。
予鈴と共に、サーヴィス先生が入って来て、一礼した。
小間使いさんたちが問題用紙と解答用紙を配っていく。
なんだか目が真っ赤だなあ、サーヴィス先生。
ミリヤムさんの溶解液の成分分析を徹夜でしていたとみた。
「では、初めてくださいー」
さて、クラス名と名前を書く。
カリカリカリカリ。
錬金の問題は、ポーションの作り方手順の穴埋め問題とか、イラストでどれが毒消し草か当てるとかがあるね。
ほっほっほ、ポーションの作り方は聖女の湯でさんざんやったので覚えているぞ。
カリカリカリカリ。
魔導具の問題、魔法陣表記の問題、毒消し草が生えている地形の問題。
楽勝楽勝。
魔導具といえば、ドライヤーのロイヤリティがザバザバ入って来て嬉しい。
光る布の特許とかも申請中だぜ。
夏用に涼しいシャツの開発をしようかなあ。
カリカリカリカリ。
あと、魔導具開発キットも結構売れているらしい。
下町の奥様の内職とかに丁度良いらしいね。
羊皮紙ドライヤーが安価で市場にでまわっている模様だ。
ひっひっひ、廉価版でもロイヤリティが入ってくるのは凄い。
不労所得万歳。
カリカリカリカリ。
よし、上がり。
なんてこと無かったね。
見直しして、と。
割と時間があまった。
サーヴィス先生を見るとぐったりしておる。
もう、若くないんだからさあ、無理しちゃだめだよ、先生。
「終了してください」
終業の鐘が鳴り、小間使いさんが問題用紙と解答用紙を回収していった。
サーヴィス先生はだるそうに立ち上がり、こちらに来た。
「オルブライトさん。魔法塔は継続的な溶解液の取引を望む」
と言って、金袋をカロルの机に乗せた。
カロルが袋を開けて数を数える。
「おお、白金貨」
コリンナちゃんのメガネがギラリと光った。
「一千万ドランク、確認しました。品質はどうでした?」
「最高級だね、純度がめちゃくちゃ高い。精錬いらずだったよ」
「次回はいつぐらいに必要ですか?」
「月二回ほど入れてくれたまえ、生産部が大喜びしていたよ」
サーヴィス先生がだるそうなので肩に手をおいて『ヒール』をかけた。
「ああっ、元気がでた、ありがとうマコトくん」
しかし、あの量で一千万かあ。
必要としてるのは魔法塔だけじゃなくて、オルブライト領の錬金工房でも使うだろうし、一億ドランクでも元は十分取れそうだね。
「マコトくん、明日はホルボス山に飛ぶかね?」
「先生は採点してからホルボス山に行ってください」
「くっ、しかたが無い、今晩急いで採点しよう」
「そんなに無理せんでも」
この先生は、どんだけホルボス山基地が好きなのか。
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