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第869話 大神殿で黒歴史バトル(Side:中指)

Side:中指クヌート


「キルギス、もっとお菓子」

「だめだよ、お前は底なしなんだから。お客さんの食べる分が無くなるよ」


 ミリヤムがこっそりお皿のクッキーを一枚、アダベルの皿に移した。


「ありがと、姉ちゃん、良い奴だな」

「いいのよ」


 ミリヤムは子供が好きだからな。


 しっかし、こんなにほのぼのしていて良いのかー?

 俺たちはアダベルの言うとおり凶悪暗殺者なのだがー。


「俺たちは悪い事は一通りやってきたんだがー、聖女さんや教会的には咎めなくていいのかー?」

「なんか別に良いみたいだよ、クヌートさん」

「え、だけど罪は罪だろう、聖典に反するような事ばっかやってきたぞ、俺たちは」

「けっけっけ、悪い顔してるもんなあ、どんな悪い事したんだ?」


 アダベルがクッキーをポリポリ食べながら、そう言った。


「殺しに、恫喝、金を貰って市民をタコ殴りにした事もあらあな」

「俺もスラムに居た頃は似たような物だったけど、別に聖女さんや教皇さんから咎められた事は無いよ」

「キルギスもかー、悪い奴だなー、あはは」


 まあスラムに居るガキは大体の悪い事は経験済みだろうなあー。


「殺しはしてないんだろ?」

「いや、ヤクザの用心棒してたから、何人か殺したよ」


 キルギスの返事にローゼは顔をしかめた。

 弟がそういう方面に行かせないために刺客として売られたのになあー。

 スラムじゃ何でも上手く行かないもんだぜ。


「聖女さんは何にも言わないのかい?」

「言わないなあ。リンダ隊長も別に」

「おめーらは解ってない、マコトは過去を咎めない、現在と未来で悪い事をしたら怒るけど、昔にやった事を掘り返したりしないよ」

「聖女さんがそんなんで良いのかね?」

「別におまえらは仕事で殺したり殴ったりしたんだろ、兵隊と一緒だよ、マコトが嫌いなのは嘘つきとか卑怯者だな、だから変なジーンのメイドは友達にしなかったよ」

「ジーンのメイド?」

「なんだっけ、ザマスキアだっけか?」

「ザスキアかあ、あいつは結構強いのに、殺したのか?」

「ジーンに捨てて来たってさ。逆に悪い奴でも心を入れ替えたり、友達がいがあったり、愛があったりすると、マコトは気に入るみたい」

「それはまた……」

「器がでかいのう……」


 これから悪い事や卑怯な事をしなければ聖女さンは怒らないのか。


「さすがはリンダ師が心服する人物だ、子供ながら偉いのだな」

「ブルーノはリンダ師が好きだね、ひひっ」

「心から尊敬している」


 それなら、聖女さンは、俺たちをこれから公正に扱ってくれんのだろうか。

 オルブライトのお嬢さんもだろうか。

 まあ、扱いが酷かったり、偽善者だったら逃げちまえば良いか。

 どっちも芯が強そうな感じはするけどなー。


「あんたは邪竜なんだろ、悪い事もしてたんじゃねえの?」

「してたしてた、幼い頃は人間の事わからなかったから、でかいまま村に入って脅して金貨かっぱらったりした」

「アダベル、おまえ、そんな事を」

「昔だよ昔、二百年ぐらい前」

「人は食ったかい?」

「食わなかった、お父さんに人は食うなって言われてたから、でも、金貨をかっぱらうのはお父さんに教えてもらった」

「なにやってんだ、邪竜父」

「金貨はキラキラして素敵だからな、しかたがない」

「ひでえ、使う訳じゃねえのに」

「んで、洞窟に金貨とかピカピカの石とか貯めてたら鎧の人間とか、剣を持った人間とか、魔法使いとか来たのでぶっ殺した」

「アダベル、お前もたいがいだなあ」

「しょうが無いだろう、人間の事知らなかったんだから。そんな事をして楽しんでいたら、狂犬みたいな聖女が来てボコられて飛空艇の番としてホルボス山に封じられたんだよ」


 ああ、この邪竜を許したってんなら、暗殺者の俺たちも普通に許せるって訳だな。

 というか、人間を知らなかったから、か。

 俺たちも似たようなもんかもしれねえなあー。

 スラムの流民なんかは人間の範疇に入ってねえのかもしれねえ。

 やるせねえな。


「わびは入れねえのか? 金貨をかっぱらった村とかに」

「どこの村か覚えてない。封じられた時に牛をかっぱらった村は覚えてるけど」

「牛をかっぱらって食べていたのか、害竜じゃのう」

「こんど、謝りにいくんだー」

「そうなのね、偉いね」

「ありがとっ」


 考えてみれば、道中で山賊に捕まってた女子供は解放してやりゃ良かったなあ。

 暗殺に行く時は痕跡を残さないのが基本なんだが、思えばひでえよな。


「次に何か良いことをする機会があったら、良い事をすりゃ帳消しなのかあ?」

「どうだろう、帳消しにはならない気がする。でも良い事するとマコトは喜ぶな」

「そうか、聖女さン、喜ぶか。オルブライトさまも喜ぶかな?」

「カロルも良い奴だから喜ぶよ、絶対」

「そうかそうか-」


 あんまガラじゃ無いんだが、機会があったら善行って奴もやってみるかな。

 オルブライト様が市民権もくれるんだし。


 そうか、俺たちはもうすぐ流民じゃなくて、オルブライト領の市民になれるのか。

 本当に信じられない幸運だぜー。

 やっぱ女神さまに感謝して、聖心教に入信するべきかなあー。

 教会なんかガラじゃあないんだがなあー。

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― 新着の感想 ―
[一言] 人命が軽い時代設定?なので、リンダ師も大概バッサバッサと。改心?して聖女さまの敵にならなければ大概許容されそうな気がする。マコトちゃんはよくこの世界と倫理観で折り合いつけれたものだと思います…
[一言] 半魔も入れる聖心教! ただいま信者絶賛募集中!? まあ教皇さんも聖女さんも緩いしなあ。いいんじゃないかなあ。 殺した人質に関しては正直アレだけど、お金持ちになったら供養にでもいってらっしゃい…
[一言] 五本指に殺された女子供の件は 仕事中に関係ない人助けをして、潜入する前にそこから足がついたらどうすんの?ってなるから目撃者皆殺しは普通だと思う 山賊は襲われそうになったのを返り討ちにしたのが…
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