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第860話 案の定サーヴィス先生が青魔法に食い付くのだ

 パイロット組で乗合馬車に乗って魔法塔までやってきました。

 いつもながらでっかいね。

 ミリヤムさんが塔を見上げて呆けておった。

 まあ、そうなるわな。


「オルブライト商会のカロリーヌですが、サーヴィス先生はいらっしゃいますか?」

「あ、はい、その、サーヴィス部長は現在大変多忙でして、面会は出来ないと思いますよ」

「アップルトン錬金業界の大発展の為です、書類仕事を休ませてください」

「……、クレイトン長官に許可を貰って参ります、しばらくお待ち下さい」


 やはり、サーヴィス先生はホルボス山でさぼっていたので書類が溜まりまくっていたようだ。


「さもありなん……」

「本当にもうー」


 パイロット組とミリヤムさんは受付前のロビーのソファーに座って待つ事にした。

 しばらくするとジョンおじさんが魔導エレベーターで下りてきた。


「やあ、オルブライトさん、聖女さん、どうしたね、エルマーまでつれて」

「サーヴィス先生に紹介したい人を連れてきました。アップルトンが錬金大国になる決め手となります」

「そ、そんなにかね……。まあ、来たまえ、私も同席してもかまわないね」

「ええ、かまいません」


 私たちは、ジョンおじさんとエレベーターに乗り、五階の錬金部フロアで下りた。

 錬金部のドアを開けると、サーヴィス先生の席に書類の山が出来ていた。


「あっ、長官、だ、大丈夫です、す、すぐに片付きますからっ」

「いや、オルブライトさんがお話があるそうだ」

「ああ、オルブライトさん、聖女さん、書類を手伝ってください~~」

「嫌ですよ、錬金部の書類なんか処理できません」

「サイン、サインするだけでも良いから」


 うーむ、先生は駄目人間だなあ。

 目の下にくっきりクマができている。

 私は彼女の背後に回った。


『ヒール』

「ああ、疲れがふっとぶー、でも仕事は進まない~」

「サーヴィス先生、硝子容器の大瓶はありますか?」

「え、あるけど、何をするの?」


 先生は部下に命じて大きい硝子容器を持ってこさせた。


「ミリヤムさん、これにあれを」

「あ、はい、この大きさならあふれませんね」

「なにをするのかね?」

「なんですか?」


 ミリヤムさんは蓋を取った硝子容器に、杖から溶解液をジャボジャボ出して貯めた。

 刺激臭がして、ボッと青い炎が上がる。

 カロルが急いで蓋を閉めた。


「「……」」


 ジョンおじさんとサーヴィス先生だけではなくて、錬金部の研究員全てが黙り込んだ。


「溶解液です、幾らで買いますか?」

「「……」」


 錬金部フロア全体からどよめきの声が上がった。


「溶解液かね?」

「しかも、炎が立つ純度……」

「ば、馬鹿な、ガドラガで一ヶ月に産出する量を超えているぞ……」

「どどど、どうしますっ!! 長官、最低相場で五百万ドランクは堅いですよっ!!」

「な、何者なのかね、彼女は」

「ジーン皇国皇弟が聖女マコトに向けた暗殺者集団の五本指の一人です」

「「!!」」

「この溶解液を使って戦っていたので、年俸一億ドランクでオルブライト商会が雇いました」

「確かに暗殺などしてる場合では無いな」

「頭がおかしい事態だわ」


 おお、愕然がくぜんとしてる愕然としてる。


「ミリヤムさんと言います、どうでしょう、溶解液欲しいですか」

「な、なぜこんな大量に組成できるのだ、青魔法かい?」

「は、はい、帝都のスラムで師匠に習いましたです」

「伝説の青魔法使い、初めて見ました。アップルトンでは失伝してる魔法形態ですねっ」

「いや、だが、こんなに魔物由来の素材を生み出せる物ではないはずだが」

「あ、あっ、その、私は半魔なので、そ、そのせいかも」

「「半魔!!」」


 ああ、そうなのかあ。

 それはもう個性と言っていいなあ。


「な、何の魔族かね」

「溶解液を生み出す人型の魔物は居ましたか?」

「え、あの、その、ドッペルゲンガー、です……」

「「「「!! それだっ!!」」」」」


 ああ、別の物に変身する魔族のドッペルゲンガーと、魔物の能力をラーニングする青魔道士がかみ合ったのかっ。


「よし、ミリヤム君、君を魔法塔で雇おう、年俸もオルブライト商会よりも出すよっ」

「だめでーす」

「オルブライトさん、これは国家的財産だよっ!!」

「クレイトン長官、早い物勝ちでーす」

「父さん……、見苦しい……」

「しかし、しかしっ!」


 悔しがるジョンおじさんと打って変わってサーヴィス先生はうっとりと視線を宙に浮かべた。


「ああ、ああ、これで新薬実験が進むわ、溶解液の買い付けで待たなくて済むのよ、それどころか、やりたい新薬実験も気楽に行えるわ、なんて素敵なの」

「オルブライト商会では、彼女にダンジョンで希少素材をラーニングして貰い、大量生産を目指したいと思っています」

「なにっ!! それは凄い!!」

「三十五階のブルーヒュドラの毒液とか、四十三階のアラクネの糸とか、生産出来るかもしれないわねっ!!」

「そうです、アップルトンは錬金大国として世界一の先進国になれます。波及効果ももの凄いのです」


 ジョンおじさんはぐねぐねと苦悩した。


「ああ、ああ、考え直してくれオルブライト君、彼女は魔法塔で保護しなければならないっ、他国にさらわれでもしたら大損害だっ」

「大丈夫です、護衛に滅殺の五本指の他のメンバーも雇いましたから」

「しかししかしー」

「父さん……、諦めるべき……」

「と、とりあえず、この溶解液は五百万ドランクで買い取るわっ! 純度とか品質とか調べないとっ!」

「一千万ドランクで」

「「うっ」」


 うっは、カロルふっかけるなあ。

 最低価格では売らないという訳だ。


「あと、出来ましたら、ミリヤムさんに錬金術の教育と、魔法の基礎の教育を受けさせたいです」

「わ、解った、継続的に溶解液が手に入るならメリットが大きい」

「素材を生み出せる錬金術師だなんて、業界の夢だわ」

「大量の溶解液が流通すると、相場などが変化しますので、そこら辺の対応を魔法塔にお願いしたいと思っています」

「そうだな、生産量によっては輸出も出来る。君はもの凄い人材だよ、ミリヤムさん」

「は、はい、あ、ありがとうございます」


 ミリヤムさんも嬉しそうね。

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― 新着の感想 ―
[一言] うはははは。 儲け話でカロルの邪魔をしたら、報復で要求が厳しくなっていく。 まぁ、あまり行き過ぎると聖女様が助け船を出してくれる、かもしれないけど。
[良い点] こうして皆が幸せな方向へと話が流れていくのがいい…!
[良い点] ミリヤムさんはドッペルゲンガーのハーフ。 スライムかと思ってた。 [一言] サーヴィス先生、書類仕事と学園の試験と。聖女の湯で、リフレッシュできるといいね。 急に大金を手に入れて、身持ち…
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