第859話 クヌートにテイマーの事を教えて貰う
「おい、テイマー、聞きたい事がある」
「クヌートだ、聖女さン」
「私はマコトだ、クヌート」
「マコト……さまか」
「さんで良いぞ、お前はカロルの部下になるけど、私は別に関係無いし」
「マコトさンかー、何が聞きたいんだー?」
私は影からペスを出した。
「おおっ、三号っ!」
クヌートはペスにそう呼びかけたが、ペスはフンと横を向いた。
「くっそー、名付けしやがって、ペス」
「わおんっ!」
ペスは喜んで格子の間に顔を突っ込んだ。
クヌートは笑いながらペスをモシャモシャした。
「あんたに従魔返すと、私のテイムは切れるの?」
「切れねえよ、一度結んだテイムは死ぬまでつながってるぜー、まあ、あんまり酷い扱いだと従魔が怒って線が切れちまうがなー」
「そうすると、ペス、ジョン、ポチ、ポーポーちゃんはあんたとも魔力線がつながるし、私ともつながってる状態になるの?」
「そういうことにならーな。今はマコトさンのテイムが強いんで、俺の命令ははねつけられてるなー、あんたが俺に返すと決めると、俺が命令できるようになるぜー」
「ああ、上位のテイムになったのね」
「そういう事だー、あんたのテイムは馬鹿馬鹿しいほど強力だあなあー」
クヌートが使っているテイムは影の魔物専用テイムで、私のは光テイムで上位能力っぽいね。
「私はディラハンをテイムしたいんだけど、どうかな?」
「あいつかー、アレは隷属の首輪をしてやがんな、ちょっと古いテイムとは違うかんじだー、首輪を外さないとテイムが出来ないと思うぜー」
「そうなんだ」
「どちらかというと、敵からのテイム避けから始まった魔導具らしいぜ、テイマーの魔力線の接続を受け付けねえんだー」
そうか、隷属の首輪って、妨害電波を出して遠隔操作を妨害するような感じなんだな。
なるほどなあ。
先に隷属の首輪を何とかしないとテイムができないのか。
「ぐぬー」
「それより、いつ俺の従魔を返してくれるんだー」
「ああ、まずはお礼にご馳走してあげて、お風呂に入れて、お散歩してから返すよ、というか、あんたらの教会の取り調べが終わって、カロルとの契約が済んだら返す」
「そ、そうか、ありがてえっ」
クヌートは馬鹿っぽいけど、従魔たちを大事にしてるからなあ。
かっぱらうのは心苦しい。
「マコトさンが従魔を必要な時は言ってくれ、貸し出すぜー」
「おー、それはありがたいなあ、よろしくね、クヌート」
なんかの時は借りよう。
そうだ、トール王子とティルダ王女が王都見物の時に影犬たちを付けてやろうかな。
ガラリアさんとか甲蟲騎士団が護衛にいるけど、王都内なら、さらに厳重にしても罰は当たらないだろう。
「そいじゃ、またね」
「おう、可愛がってやってくれー」
「おうよ」
私たちは地下牢を後にした。
「これからサーヴィス先生にミリヤムさんを紹介しに行くけど、マコトも来る?」
「行くよー、でも大丈夫かねえ、テスト期間なのに」
「う、それは不安だけど、まあ、しょうが無いわ」
あの先生は魔法研究の事になると寝食を忘れるからなあ。
魔導オタクじゃ。
「サーヴィス先生とはどなたですか?」
「魔法塔の錬金部の部長さん、高名な錬金学者よ」
「そ、そんな方に……」
「溶解液を野放図に市場に出すと混乱しそうだから、国と相談して対応しないと」
「そ、そうですか……」
希少薬品がドバドバ出ると値下がりとかしそうだしね。
コントロールしないといけないな。
階段を登り切るとキルギスくんがいた。
「キルギス候補生、現時点を持ってひよこ堂警備の任務を外す」
「え、その……」
リンダさんの宣言にキルギスくんの表情が曇った。
「変わって、捕獲した五本指の世話の任務をお前に任せる」
「あっ、は、はいっ!!」
「まずは、サイラスと共に奴らを貴族用の牢に移送せよ」
「わ、解りましたっ、リンダ隊長!」
嬉しそうね、キルギスくん。
うんうん。
「聖女さん、カロルさん、ありがとうございましたっ!」
「聖女さま、オルブライトさまだ、馬鹿者」
リンダさんはキルギスくんをポカリと殴った。
「す、すいません、行ってきます!」
キルギスくんは走って階段を下りていった。
「キルギスの姉も結構使えそうですね、楽しみだ……」
リンダさんはニヤリと笑った。
まったくもう、戦闘狂なんだから。
大階段近くで派閥のみんなが待っていた。
「おう、マコト、終わったか」
「終わったよ、カーチス」
「まだよ、ミリヤムさんを魔法塔につれて行かないと」
「僕も……、行こう……」
エルマーが棒を構えてかっこ良いポーズでそう言った。
「そうかー」
「あんたらは学園に戻ってテスト勉強しなさいよっ」
「ええーっ」
今現在、お洒落組と、オスカーとライアン、ブリス先輩などは集会室で勉強中なのである。
オスカーはカロルを守りたがったみたいなんだけど、お洒落組の護衛も要るからと集会室で詰めていたようだ。
まだ、魔剣出来てないしね。
「ほらー、カーチスしゃま、行くみょん」
「うう、勉強したくねえー」
「私が殿におしえますからっ」
「カトレアに教えられるのはなんだか屈辱だ」
「失敬です、殿!」
いつもの剣術組のやりとりにエルザさんがふんわりと笑っていた。
さて、私らパイロット組はミリヤムさんと一緒に、乗り合い馬車で魔法塔に行こう。
そうしよう。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




