第858話 監獄へ行って五本指の治療をする
カコンカコンと音を立てて大神殿の地下牢へと向かう。
面子は、私、リンダさん、カロル、ミリヤムさんの四人だ。
監獄は男部屋と女部屋に別れている。
女部屋にいるのはキルギスの姉ちゃんだけだが。
しかし明かり取りの窓が小さく薄暗いな、ここ。
「ああくそ、ミリヤムも捕まったか」
「捕まっておらんぞ、ミリヤムは寝返ったわい」
「なんだとー、俺らの鉄の結束はどうしたあー」
「やめとけ、クヌート、考えた末の事なら文句は言うまいよ」
テイマーが文句言ってるなあ。
「ああっ!! クソ聖女っ!! お前っ、俺の従魔を返せえーっ!!」
「牢屋では要らないだろ、釈放の時に返してあげるよ」
でっかいのとテイマーが、釈放と聞いて目を丸くした。
「さて、五本指の皆さんっ! 私はカロリーヌ・オルブライトですっ!! あなた方に提案がありますっ!! お聞きくださいっ!!」
カロルが男部屋の前で大声を出した。
「このほど、貴方たちの仲間のミリヤムさんを青魔法使いとして、年俸一億ドランクにて雇うことにいたしました」
「「い、一億ドランク?」」
「そ、そうなんだ、ひひっ」
「ミリヤムさんの寝返りの条件として、五本指の他のメンバーもオルブライト伯爵家が後ろ盾になり、雇うことでした」
「「伯爵家に仕官する?」」
「文句が無ければ、きちんとした報酬でオルブライト家として雇い入れます。いかがでしょうか?」
「「「……」」」
爺さんも含めて男衆は絶句している。
「暗闘の兵として雇うのか?」
「伯爵家の兵士というなら、悪くは無いのう」
「従魔を返してくれればいいぜー」
女牢でキルギスの姉ちゃんが立ち上がった。
「正気か、スラムの暗殺者にそんな好条件だして、話が美味すぎる」
「正直言いますと、貴方たちはミリヤムさんのオマケです。ミリヤムさんが気持ちよく働けるようにまとめて雇い入れる感じです」
「ロ、ローゼ、な、なんかね、私の溶解液あるでしょ、あれ、凄い値段で売れるんですって」
「同じ重さのプラチナぐらいに売れます」
「ま、まじかあー」
「そんなお宝で戦っていたのかよ」
「知らないとは怖い事じゃのう」
キルギス姉ちゃんが格子を叩いた。
「聖女、あんたは良いのかよっ! 私らはあんたを殺しに来たんだぞっ!!」
「私は人死にが嫌いなのよ。カロルが雇いたいというなら反対はしないわ」
というか、正直助かる。
「オルブライトのお嬢さん、あんたは俺らに何をさせるつもりだい?」
「うちは暗闘の家じゃなくて錬金の家だから、あんまり荒事も無いのですよね、ちゃんとした騎士団もあるし。だから、冒険者になってダンジョンで素材とってきてください」
「本当かっ!!」
お、でっかいのが食い付いた。
「ええ、ミリヤムさんを護衛して、特定の魔物の技をラーニングして貰ったり、腕が立つようなら希少素材を取りに行ったりしてもらいますよ」
「俺たちは半魔だから、冒険者登録できねー」
「アップルトンなら登録可能ですし、もしも王都のギルドが文句を言うなら、オルブライト領のギルドで登録すれば良いだけの話です」
男衆は車座になって相談し始めた。
「悪くねえ、というか凄く良い話だな」
「しかし、信用出来るのかー? だまし討ちとかされねーか?」
「忘れておったが、ダンジョン産の溶解液が高く売れるとは聞いた事があったのう」
「早く思い出せようー、ハイノ爺さん」
私はキルギスの姉ちゃんの牢に近づいた。
「どうする? カロルに雇われればあんたも幸せになれるし、あんたが幸せなら、キルギスくんも幸せだよ」
「……そんな借りを作るわけにはいかねえ、ターゲットにした奴に……」
「あんたが幸せになると、うちの兄貴も幸せになるしね、肉親が幸せなのは大事なんだよ」
キルギスの姉ちゃんは唇をかみしめた。
「カロルー、こいつらにファルンガルドの市民権もやるのー?」
「当然よ」
「「「「「なっ!!」」」」」
王都の市民権は王府から出して貰わないといけないのだが、領都の市民権は領主が出すことが出来るわけだ。
領都といえど、市民権というのはとても貴重な権利で、ちゃんとした平民として扱われる事になる。
スラムの住人は市民権を持ってないので平民でも無いんだよね。
「領都の市民権があれば、王都で部屋も借りれるし、将来、家だって買えるよ。キルギスくんと一緒に暮らす事もできるよ」
「俺は従魔と遊べる広い庭付きの家が欲しいぞーっ!!」
うるせえ、お前には言ってねえよ、テイマー。
「みんなと冒険に出て、幸せになりなよ、キルギス君の願いはそういう事だよ」
キルギスの姉ちゃんはぼろぼろと涙を流して泣いた。
「こんな、こんな幸せが、待っている訳が無い、こんなの嘘だ……」
「まあ、女神さまのおぼしめしだよ」
「うん……、うん」
男牢ででっかいのが立ち上がった。
「解った、五本指はオルブライト家に忠誠を誓おう」
「問題無しじゃ」
「おう、かまわねえぜー」
「うん、私も問題無い……」
ミリヤムさんは、ふうと息を吐いた。
「ありがとうみんな、これからも一緒に行こう、色んな所に行こう、普通の人みたいな生活をしよう、楽しみだわ、ひひっ」
よし、話はまとまったな。
「リンダさん、奴の手を」
「はい」
リンダさんが布に包まれたでっかいのの手を出してきた。
「え、俺の手、え? どうするんで?」
「傷口だせ、くっつける」
「え、もう大分たちますぜ?」
「まかせろ、こちとら聖女候補さまだぞ」
私はリンダさんにでかいのの手を患部にくっつけて貰い、ハイヒールをかけた。
「う、うお、動く……、ぐあっ、痛えっ」
ああ、血が通ってない手をくっつけたから痛いわな。
正座した時の足みたいな感じだろう。
『アナス』
手に沈静魔法を弱めに掛けた。
「しばらくすれば痺れも消えるよ」
「あ、ありがとうございます、本当に……」
でかいくせに涙ぐむなよっ。
あと、キルギス姉ちゃんの足の神経もヒールでくっつけた。
ダルシーが殴ったテイマーの傷も治しておこう。
カロルと目があったので笑い合う。
よしよし、良い感じにまとまって良かった。
「マコト、まだテスト中だからね」
「うぐっ」
わかってるよおっ。
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