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第84話 珍しく午後は魔法の授業がある、というか錬金

 みんなでぞろぞろと校舎へと戻る。

 いやあ、たまり場が出来ると良いね。

 午後とか、エルマー親子に実験されなければ、昼寝とかしようかな。


 A組の教室に行くと、満面の笑みを浮かべたアンソニー先生に出迎えられた。


「キンボールさん、朗報です」

「なんですか?」

「今日の土魔法の授業は錬金術なのです、それにキンボールさんも参加して良いとの事ですよ」

「わああっ、授業受けていいんですかっ」

「はい、光魔法でも錬金は出来ますしね」


 おー、これは朗報だ。

 ふと、カロルの方を見るとにっこり笑っている。

 あれ、これは彼女が手を回してくれたのかな。

 だとしたら嬉しいな。


「……むむ、では……、僕は……」

「エルマーも、ジョンおじさんも錬金授業に出なよ、水属性でもポーション作れるんでしょう?」

「うむ……、やったことがないが……、作れる」

「お父さん呼んできなよ」

「わかった……」


 カロルが席を立って、私の肩に手を置いた。


「さ、行こうマコト」

「うん、ありがとう、カロル」

「ふふ、私は別に何も」


 もー、この嘘つきめーっ。

 大好きだぞっ。


「アンソニー先生、ありがとうございます、いってきます」

「はい、がんばってくださいね」

「はいっ」


 いやあ、授業授業、錬金だけど、みんなと授業だぜいっ。


「ふふ、嬉しそうね」

「嬉しいよっ、いつも午後は寂しかったからさあ」


 私たちは廊下に出た。


「おろ、マコト?」

「あ、コリンナちゃんも土属性だったね」

「ああ、そうか、今日は錬金だからか」

「そう、錬金なら光魔法も参加出来るからさ」


 午後の魔法の授業は、属性ごとに分かれて受ける。

 A組、B組、C組、共同授業だね。

 今日は実習棟の錬金教室でやるようだ。


「錬金の授業は良くあるの?」

「一週間に一回ぐらいかな。土属性と錬金は相性が良いからね」


 なるほどね。

 週に一回だけど、私も授業を受けられるわけだな。

 これは、うれしい。


「私も自分でポーションが作れるようになって、売りまくるっ」

「ふふ、今度、私の錬金を手伝ってね、コリンナ」

「解ったよ、あんな換金率の良い商品は作らねば罰があたる」


 ポーションとは、そんなに儲かる物なのか。


 ぞろぞろと土属性の生徒たちと共に実習棟へ。

 錬金実習室に入る。


 おー、大きな錬金釜が三つも置かれている。


「あんたかい、聖女候補ってのは」

「はっ、はい、マコト・キンボールです」

「私は錬金学の教授のメレディス・サーヴィスさ、よろしくね」


 メレディス先生は、私の手をつかんで上下に振った。

 彼女は三十代ぐらいの、化粧っ気の無い女性だった。

 白衣が眩しいな。


「光魔法の錬金なんざ、遠くビアンカ様の頃まで遡らないと出てこないんだよ。あんたが暇をしてるって、オルブライトさんに聞いてね、ちょっとヘーゼルダイン先生に聞いてみたのさ」


 ヘーゼルダインって誰や、と思ったが、アンソニー先生だな。


 どやどやと、エルマーとジョンおじさんもやってきた。


「おやおや、魔法省長官じゃないか、なんだい、こんな場末に」

「ははは、何をいうかねサーヴィス先生、この国随一の錬金学者が居る場所は場末ではないさ」

「ふん、おだてても何も出ないよ、あんたの坊主も錬金するのかい?」

「……エルマーです、先生……、水錬金……、をやってみたい」


 サーヴィス先生は上を向いて、カカと笑った。


「まったく、今年は面白いね、オルブライトの娘は来るわ、聖女候補はくるわ、そのうえクレイトンの坊主もかい、楽しい一年になりそうだね」


 私の方こそ楽しみなんですがー。

 週に一回とはいえ、錬金技術を学べるのは嬉しいな。

 魔導具とかも作るのかな。


 ……。


 だとしたら、あれだ、馬車の部品の名義で送られてくるような奴も?

 うへへへへ。

 自家製のアレでアレだー。


 むにゅっと私の頬が引っ張られた。


「そういう物は作らないからね」


 カロルが冷たい目で私を見ていた。


「な、なんでわかるんだー」

「なんででも」


 くそー、カロルはエスパーなのかーっ。

 コリンナちゃんが声を殺してくつくつ笑っていた。


 サーヴィス先生が班分けをしてくれて、生徒は三つに分かれた。

 私は、カロルとエルマーが一緒の班だ。

 残念ながらコリンナちゃんは隣の班だな。


 一班に一つ、テーブルと、錬金釜が割り当てられる。


「まずは錬金がなんであるか、って話から始めるよ。錬金は物質付与魔法の一種で、液体や、固体、気体に魔法効果を付与する技術さ。薬学の範囲から、魔法陣、工学までの広い範囲をカバーしている」


 机の上には、錬金学と書かれた小冊子が置かれていた。

 羊皮紙の書き写し書だな。

 結構汚れている。


 この教本は一冊一冊、人が書き写した物で、お高いので、生徒に貸し出されるだけである。


 なんだか、授業が受けられるというだけでニヨニヨしてしまうね。


 私は隣に座るカロルの手の上に手を置いた。

 なに? という感じでカロルが私を見た。


「ありがとうね」


 ふふっ、と笑って、カロルは手のひらを返し、私の手をきゅっと握りしめて、放した。

 んー、もうっ、カロルったらっ!!



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― 新着の感想 ―
[良い点]  マコトが早く錬金術でドライヤー作れる可能性に気が付かないかなぁと楽しみにしています。あれだけいたのに、大人の玩具的な物に目くらましされて思い至らなかった自分にがっくりくるんじゃなかろうか…
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! カロルさんもまた良く気遣いしてくれて、優しい少女ですね! 本当に微笑ましい、素晴らしい百合百合イチャイチャです!!ご馳走さまです〜 カロルさんはマコトさんの…
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