第844話 テスト二日目!! 火曜日!
「それでは、始めっ!」
カリカリカリカリ。
テスト二日目であるよ。
最初のテストは社会である。
まずはクラスと名前を書くよ。
まあ、アップルトン社会の知識の学科だね。
前世で言うと公民かな?
貴族の学校なので、領地経営とか、農地開発とかの設問が多い。
カリカリカリカリ。
あと、社会体制の説明。
同じ大陸と言っても、アップルトンとジーン皇国だと社会体制がちがうのだ。
中央集権の度合いとかね。
封建制なのは変わらないけど、帝政と王制で若干貴族との関係が違う。
ジーン皇国の方が中央集権が強くて、アップルトンの方が貴族の力が強い。
ここら辺二院制を取っている、海の向こうのアライド王国とも、ちょと違う。
カリカリカリカリ。
でもまあ、記憶学科には違いないので、わりと得意である。
良い感じに答えを埋めていくのだ。
うん、時間は余ったな。
見直し見直し。
「よし、やめっ!」
中年の先生が時計を見ながら終了を宣言した。
小間使いさんたちが問題用紙と回答用紙を回収していく。
終業の鐘がなって、先生と小間使いさんたちがテストの束を持って教室を後にする。
「カロル、社会どうだった?」
「わたくし、オルブライトで領主をやっておりますのよ」
「わたくしも、ホルボス山で領主をやっておりますわ」
目を見あわせて、ふふふと笑う。
「領地の大きさにかかわらず領主のお仕事をやってたら簡単よね」
「農地開発とか、物流とかも領主のお仕事なのかー」
「まあ、大体は領民がかってにやってくれるけどね。計画の認可にも必要な知識だし」
「小さなホルボス山でも手一杯なのに、伯爵領とか気が遠くなるよ」
「意外と何とかなるわよ、家令が手伝ってくれるし」
「ボリス先輩が卒業したら家令として雇って丸投げしようっと」
「それも有りね」
前世の仕事量で言うと、カロルは県ぐらいの大きさの仕事で、私は町村単位だな。
領地をくれるとか、冗談じゃ無いよなあ。
アチソンとか、ディオールの街とかは断らねばなるまい。
市長さんなんか、まっぴらごめんだ。
美術のヒゲ教師がやってきた。
「やあ、諸君、美術のテストだ、気楽に受けてくれよ」
いや、先生、美術の点数も成績に入ってるんですけどね。
小間使いさんが問題用紙と解答用紙を配ってくれた。
「それでは始めてくれたまえ」
ヒゲ教師はそういうと教卓の椅子にどっしりと座った。
まずはクラスと名前を書く。
カリカリカリカリ。
美術の試験と言っても絵を描くわけじゃなくて、美術の知識問題であるな。
技法とか、建築様式とか。
カリカリカリカリ。
とはいえ、油系の絵か、テンペラ画ぐらいしかまだ無いので分類も単純だ。
水彩はまだなのよね。
紙とかが無いと水彩画は発展しないわけよ。
皮には書けないからね。
カリカリカリカリ。
様式の設問、絵の種類の設問、画材が何で出来ているか。
わりと幅広く出てくるけど、授業でやったからね。
カリカリカリカリ。
よし、終わった。
わりと設問数が多くないね。
見直し見直し。
しかし、時間が沢山余ったな。
美術は基本実習教科だしなあ。
外を見ながらアクビを噛み殺す。
今日も良い天気だ。
街に出られないのが勿体ないね。
大神殿に行って孤児と遊ぼうかな。
ああ、でもホルボス山に行っちゃってるかもなあ。
学園、王城、大神殿なら同等の警備具合で安全な気はする。
まあ、王城行ってもやること無いけどね。
今日はパンワゴンが無いので、どうしようかね。
上級貴族レストランかなあ。
たまに行くと美味しいけどね。
そういや、ケビン王子はビビアン様のランチはどうすんのかな?
テスト中はさすがにお休みかな?
まあ、どっちでも私には関係無いけどね。
「終了、ペンを置いてください」
ふう、やっと終わった。
小間使いさんたちが、テストを回収していく。
終業の鐘と共に、ヒゲ教師と小間使いさんたちが退室していった。
振り返ってじっとカロルを見ていたら怪訝そうな顔をされた。
「なによ」
「いや、カロルの二枚目の絵はどうしようかと思って」
「そう……」
カロルがポッと赤くなった。
ああ、私の嫁はかわいいなあ、かわいいなあ。
うしし。
「私もマコトを描こうかな」
「あ、いいね、裸描く?」
「聖女さまのおヌードなんかどこに飾るのよっ」
「び、美術館?」
というか、この世界、裸婦はまだモチーフとして認められてないんだよな。
売春窟には裸の絵が飾ってあるそうだけど、誰が描いてるんだろう。
「着衣で良いわ、神話時代のゆったりとしたローブとかどうかしら?」
「それは、ありがたそうな」
「マコトは聖女だからありがたい絵で良いのよ」
まあ、カロルが描いてくれるなら何でもいいや。
凄く嬉しいだろうなあ。
カロルがノートにローブを着た私のスケッチを描いた。
おお、良い感じね。
なにげに絵も凄く上手いよねカロル。
キンコーンカンコーン。
おっと、予鈴が鳴って倫理の先生が来た。
倫理の先生はなんだか片メガネの頑固そうな人だ。
杓子定規な感じなんだよなあ。
「はい、席についてください、試験を始めますよ」
小間使いさんが、テストを配ってくれる。
「では、始め」
先生が時計を見ながら合図をした。
さてさて、倫理が終われば今日のテストは終わりだ。
とはいえ遊びには行けないけどね。
さてさて鬼門の倫理だね。
第一問から王権は誰から与えられた権利か、とか、妄言が書いてあるよなあ。
答えは女神さまなんだろうが、そんな事実は無いだろう。
王様なんか、山賊の親玉が長年民衆を支配していたから偉く見えるだけで、女神さまから見たら偉くも何も無いと思う。
思うのだが、正直に書いては間違いになるので、まあ、しかたが無い。
倫理の授業通り、女神さま、と書いておこう。
私は長いものに巻かれる処世術豊かな聖女なのであるよ。
カリカリカリカリ。
民衆から税を取るのは神から与えられた貴族の権利であって国を富ませるためである。
イライラ。
それは、違うのだが、教科としては、有りなので、書く。
カリカリカリカリ。
こんな考え方だったら、そりゃあ命令さんみたいな人もできあがるよなあ。
中世社会は嫌だなあ。
貴族は民の事とか全然考えて無いのよな。
民衆を大事にする立派な貴族はおらん。
そんな奴は領地が痩せ細って滅んでしまうのだ。
やれやれだぜ。
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