第836話 帰りがけにディラハンを見つけたので銃撃する
【前方に魔力反応を確認】
ほえっとディスプレイを見ると真っ黒な馬に乗った首無し騎士が旅人を襲っているのが見えた。
「カロル! 右旋回!」
「了解よ」
カロルが舵輪を右に回した。
蒼穹の覇者号は回頭する。
なんだなあ、温泉に入って勉強会を続けて、サーヴィス先生をとっ捕まえて、さあ王都に帰ろうと言うときにディラハンを見つけるなんてー。
「艦首魔導機関砲準備!」
【了解しました】
こんな時のためのカーチス兄ちゃんはラウンジでのんびりしておるのが船内ディスプレイで見えた。
ガチャコンと艇長席に射撃ハンドルがセットされた。
サブモニターに照準がセットされる。
船外スピーカーへの伝令管の蓋を開けた。
「こちらは蒼穹の覇者号、艇長のマコト・キンボールですっ! 旅の人、避難してください、魔物はこちらで対処します」
街道の上の親子連れが振り返って棒立ちになるのが見えた。
ディラハンに向けて魔導機関砲の引き金を引く。
ヴモーーーー!
前世のガトリング砲みたいな音が鳴って草原の草をまき散らしながら魔導弾がディラハンに近づく。
ディラハンは後ろに目でも付いているがごとく、魔導機関砲の弾着をひょいひょいと避けていく。
【予測移動速度を補正します】
ブモーーー!!
も、もうちょっと!!
と、思ったらディラハンは森の中に駆け込みおった。
【魔力センサー画像に切り替えます】
ディスプレイは前世の赤外線センサー画像みたいな、オレンジと黄色の画面になった。
森に隠れようとも!!
死ねいっ!!
ヴモーーーー!!
着弾の真っ赤なドットが黄色く明るいディラハンらしい影に走り寄る。
「あれ?」
ふっと、ディラハンらしき黄色い像が消えた。
【対象ロスト。潜伏能力と思われます】
「竜種に……、持って居る奴が多い……、能力……」
「くっそー、逃がしたかあっ!!」
いかんいかん、シューティングゲーム気分で熱くなってしまった。
聖女候補が死ねい、は無いわ。
「ハッチを開けて、出てみる」
「エイダさん、アダベルが出るわ、ハッチを開けてあげて」
【了解しました】
アダベルが孤児達に手を振ってメイン操縦室から出て行った。
ディスプレイに羽を生やしたアダベルが飛ぶのが見える。
ボン、とアダベルが空中で竜化した。
というか、忘れているけど、こいつはでかいんだったよね。
『おのれ、出てこいディラハンめっ』
そう悪態をつくとアダベルは息を吸い込み、辺り中にアイスブレスを吐きだした。
森が真っ白に凍り付いていく。
「やめれ、環境破壊だよ」
『潜伏とか卑怯ではないかーっ』
「卑怯と言われてもなあ」
くっそー、見失ったぞ。
潜伏能力まであるとは。
しかたない諦めるか。
「マコトー、何があったーっ!」
どどどと、カーチス兄ちゃん以下剣術部が押っ取り刀で駆け下りてきた。
「おお、カーチス、ディラハンが出た」
「なにいっ!!」
「だが、見失った。潜伏能力があるらしい」
「しまったあ、操縦室に詰めていればっ」
ラウンジでくつろいでおるからじゃ。
「とりあえず、街道の草原に着陸しよう」
「解ったわ、旅人から話を聞くの?」
「そうだね」
親子づれの旅人さん達もキモが冷えただろうね。
声を掛けて安心させてあげよう。
カロルが草原に飛空艇を着陸させた。
アダベルはまだ森の上をうろうろ飛んでいる。
タラップを下りると、親子連れらしい三人と、冒険者らしい剣士が一人、お爺ちゃんの職人さんが一人いた。
これから王都に向かうのかな。
「こんにちは、災難でしたね」
私が声をかけると旅人さんたちは、ほっとした顔をした。
「いやいや、びっくりしましたですわい。聖女さまですか? これはまたたまげたことで」
「ごめんなさいね、なんだか、領地を狙っている魔物使いの魔物らしくて、巻き込んじゃいましたね」
「いいって、いいってー、ひ、飛空艇格好いいからー、格好いいの見たからー」
あはは、お父さんかな、落ち着かない感じの人だ。
お母さんは、なんか綺麗だけど陰キャっぽいな。
お嬢ちゃんは十四ぐらいかね。
……。
だれかに似て……。
ダルシーが不意に現れた。
「ん、どうしたの?」
「いえ、なんとなく」
「そう」
まあ、そういう時もあるよね。
アダベルがバッサバッサと下りてきた。
『見失った』
「潜伏が掛かったら見つけられないもんだねえ」
『まったくもって卑劣だっ』
「ふおおおお、ドラゴン! 聖女様はドラゴンをテイムしておられるのか」
「テイムはしてないわ、アダベルは友達よ」
蒼穹の覇者号の舳先でコリンナちゃんが弓を構えて警戒していた。
何かを見つけ出すかのように魔導機関砲があちこちを向く。
「旅人さん、王都に行くの、飛空艇に乗ってく?」
「え、あ……」
旅人さんたちは顔を見あわせた。
『マコト、旅行者は王都で入管が必要だから駄目よ。また怒られるわよ』
船内からカロルの突っ込みが入った。
「あ、そうだった、ち、近くまでどう?」
「い、いえ、お、俺たちは、俺たちはー、次の村で泊まる感じで-」
「お、俺も恐れ多いので、すんません」
「お気持ちだけ頂いておきますよ、聖女様。いやあ、良い物を見せてもらいましたわい、冥土の土産になりますわ」
「そう、道中気を付けてね。縁があったら王都で会いましょう」
「ははっ、縁があればいいですのう」
「これは幸先がいいや」
「せ、聖女さまもー、お元気でー」
しかし、ディラハンは何とかしないといけないなあ。
いつまでもうろつかれているとかなわん。
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