表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

837/1531

第834話 焼きプリンは乙女の宝物

 柱時計が三時を知らせる。

 ボーンボーンボーン。

 さっきから厨房より甘い匂いが漂ってきて乙女達は落ち着かない。


 男衆は温泉から上がって来てなんだかつるつるになっておるな。

 ホルボス山の温泉は成分が強い感じだ。

 施設とか出来たら王都からのお客さんが見込めそうだね。

 ホルボス大教会に参拝して、ホルボス山登山を楽しみ、夜は宿坊に泊まり温泉に入る。

 うむ、完璧な行楽村だ。

 ダンジョンがあれば、もっと良かったのだけれども、ホルボスダンジョンは無くなり、今は邸宅へと変わっている。


「さあ、みなさん、休憩なすってください」


 ジェシーさん、ハナさん、ミーシャさん、クレアさん、シャーリーさん、カリーナさん、アンヌさん、ダルシーとメイドさんたちがそろい踏みでプリンとお茶を運んで来た。

 やったープリンだー。


 陶器のカップに入った焼きプリンで甘い匂いを漂わせている。

 上の方に焦げ目がついて良い感じ。


「プリン!」

「コリンナはプリン好きなの」

「大好きだけど、実家では滅多に出ない、一年に一度ぐらい」

「それは味わってたべなさい」

「味わって食べる」


 ほほほほ、プリンはいいねえ、乙女の宝物だよ。

 スプーンを表面につける。

 お、堅い。

 これは砂糖を焼き固めた物!

 人呼んでキャラメリゼ!!

 底にカラメルじゃあ無いのかー、凝ってるなあ。

 前世ではバーナーで炙って作ってたんだけど、こっちだと火魔法だろうか。


 パリン!


 スプーンでちょっと力を入れるとキャラメリゼが砕けた。

 さくっとスプーンで生地と一緒に掬う。


 パクリ。


 ん~~~~~~~~~、あっまーいっ!!

 良いねえ、脳内物質が出てクラクラするね。

 口の中が天国になるね。

 はあ、キャンディのようなキャラメリゼの甘さが去ると滑らかな卵と牛乳の味のハーモニーが私の舌を蹂躙するね。


「おいしいよ、ジェシーさん」

「おほほ、聖女さまに喜んで貰えて嬉しいですわ」


 ジェシーさんは諜報系だけど、どっちかというとハウスメイドよりで料理も上手いという総合系のメイドさんだね。


「うおおお、良い匂いなんだこれっ」


 エントランスホールの方からアダベルの叫び声が聞こえた。

 どたどたと子供達がダイニングホールに入ってくる。


「おおっ、マコトたちが何か食べてるっ!! どうしたっ!?」

「お勉強会に来たのよ、今はおやつの時間」

「みなさまにもありますよ、手を洗って来て下さい」

「「「「はーいっ!」」」」


 みんな素直に返事をして浴場方面に走って行った。

 アダベルと、孤児達、トール王子とティルダ王女、それから村の子供の一連隊だな。

 そしてドドドと戻って来た。

 私たちはちょっと詰めて子供達を座らせた。


「水晶とれた?」

「とれたよー、ほら」

「私もーっ」


 トール王子とティルダ王女が取って来た水晶を見せてくれた。

 おお、結構大きいね。


「いっぱい生えていたよ、でもあんまり取ると無くなるから一人一本だって村長が言ってた」

「村人のお守りにしてるんだよ。磨いてペンダントにしたりするんだ」


 村の子供のセルジュがペンダントにした水晶を見せてくれた。

 良い青色の水晶ね。


「いいなあ、加工の仕方を教えてよ」

「明日、鍛冶屋のじっちゃんの所に行こう、道具を貸してくれるよ」

「いいねいいね、楽しみ楽しみ」


 アダベルも、孤児達も、王子王女も、ホルボス村ライフを楽しんでおるな。


「私たちもテストが終わったら取りにいきましょうよ、マコト」

「そうだね、水晶いいね」

「私はブローチにしたいですわあ」

「小さな物を髪飾りにしてもいいですわね」


 さすがはお洒落組、お洒落な発想をするな。


 メイドさんたちが子供達にプリンとお茶を運んできた。


「ぎゃー、美味しそう、なにこれなにこれっ!」

「プリンですのよ」

「プリーーンッ!! どんな味だろう、超美味そうっ!!」

「こ、これが王都で食べられるという高級お菓子、プリン!」

「知っているのかセルジュ!」

「名前だけ、名前だけは、王都見物に行った姉ちゃんに聞いたぞっ」

「ジーンのプリンと違うね、お兄ちゃん」

「熱々だね、ジーンのプリンは冷たかったね」


 子供達はぎゃいぎゃい言いながらプリンに盛りあがっていた。


「「「「「うまーーーいっ!!」」」」


 そして、声を揃えて吠えた。


「なんだろう、思ったよりも堅い外殻を割ると滑らかなクリーム状の生地が出て、割られた外殻と一緒に口に入れるとほろほろと口の中でほどけて消えて、なんという甘みのイリュージョンなのかっ!」


 ラウル、君は村の子なのに美食評論家か。


「おいしいっ!! 甘くてほかほかで冷たいプリンよりも好きっ!」

「うん、アップルトンのプリン美味しいねっ!!」

「ジェシーさんはお菓子を作るのが上手いのよ」

「大神殿でも良く食べてた」

「ほほほ、ありがとうね」


 アダベルは無言でガッガとスプーンを動かしていた。


「これは美味しいっ!! 三食食べたいっ!」

「プリンばっかり食べると駄目よ」

「肉をがっつり食べてから、それからプリンだな!」


 あいかわらずアダベルは腹ぺこドラゴンだなあ。

 うん、みんなで美味しい物食べると楽しいね。

よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。

また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 焼きプリンが食べたくなりました。
[一言] 100年で1mmとか言われるしね 天然物に拘らなければ魔法で育成できるかもだけど
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ