第832話 ホルボス邸宅でお勉強会を再開する
飛空艇からタラップで下りる。
やっぱり山の方はちょっと寒くて空気がいいね。
わらわらと学者さん達が寄ってくる。
アリアーヌ先生も基地の方にいるな。
「どうしたんだいマコト君」
「せっかくの日曜なので、こっちの邸宅で勉強会をする事にしたんですよ」
「ああ、テスト前か。アリアーヌ先生、憧れの蒼穹の覇者号のエンジンが見れますよ」
「わあい、見ましょう見ましょう、サーヴィス先生、エバンズ教授、解説してくださいよう」
「いいとも、光魔法エンジンは変わり種だからね、いろいろな特殊ギミックがあるんだ」
おい、学者ども。
「サーヴィス先生、私たちは夕食に合わせて王都に帰るので、一緒に帰りましょう」
「え、いや、その、今、エバンズ教授が入って研究が良い所なんだよ、今はちょっと無理」
「テストはどうするんですかっ、錬金のテストだってあるんでしょ?」
「いやその、ええと、頑張ればなんとかなるよ」
「火曜日にアダベルに乗せて貰って帰ろうとか考えてるんじゃないでしょうね。あの子もむらっ気だから、あてにはなりませんよ」
「いやそのだねえ」
駄目だなこの先生は、帰りはカロルにチェーン君でがんじがらめにして船に積もう。
私が目でいいかい? とカロルに問うと、いいともさ、とカロルもうなずいた。
「まあ、エンジンを見ましょう、アリアーヌ先生」
「そうっすねーっ、いやあ、ここは学者天国っすー」
「何度見ても惚れ惚れするような、魔法陣ですよ、回転駆動の切り返しシステムなどは芸術的とも言えましょう」
訳のわからない事を言いながら学者さん達はタラップを上がっていった。
「浮世離れしてんな」
「魔導学者は……、そういうもの……」
まあ、ジョンおじさんも御同類だしな。
エルマーも卒業したら、ああなるのであろう。
さて、長めの洞窟を通ってホルボス基地から邸宅の地下礼拝堂へと入る。
礼拝堂は良い雰囲気なんだけど、私が住んでる訳じゃ無いから礼拝はしてないな。
今度泊まったら、トール王子とティルダ王女と甲蟲騎士団にミサを受けさせるかな。
まあでもホルボス村にも教会あるしなあ。
礼拝堂につながる階段にリーディア団長が下りてきた。
「お帰りなさいませ、マコト様」
「リーディア団長、ディラハンはどうですか?」
「依然としてガラリアの結界の外をうろうろしてますね」
「迎撃は出来ないんですか?」
「逃げ足が速いですね、こちらが動くと森の奥に逃げます」
んー、なんとか蒼穹の覇者号が出ている時に、ディラハンと出くわせばレーダーに登録して追えるのだがなあ。
うろうろしていると煩わしいね。
意外に強そうな魔物だし。
しかし、魔物使いはどこにいるのだ?
魔物には念波で命令出来るけど、視認できる距離じゃないといけないはずだ。
ディラハンよりもテイマーの方が捕まえやすいと思うのだけどね。
ガラリアさんにも見つかって無いんだよな。
などと考えながらリーディア団長と共に邸宅に上がる。
「まあまあ、聖女さま、お帰りなさいませ、派閥の皆様もようこそ」
「ただいま、ジェシーさん」
諜報メイドのジェシーさんが両手を広げて歓迎してくれた。
「トール王子とティルダ王女たちは?」
「森に探検に行きましたよ、水晶の出る洞窟があるんですって」
「子供だけで危なくない?」
「アイラさんが一緒に行っておりますよ」
蜂の騎士さんか。
それなら安心かもね。
「水晶の洞窟は、ガラリアの結界の中ですし、ディラハンは入れないですよ」
まあ、アダベルも居るから大丈夫かな。
しかし水晶か、私も欲しいな。
今度みんなで行ってみよう。
「子供が居ないならダイニングホールは開いてるね、みんなでお勉強をしにきたんだ」
「あらあら、それはよろしゅうございますね、お三時にはプリンでも焼きましょうか?」
「プリン!」
おや、コリンナちゃんが食い付いた。
プリン好きなのか。
「ジェシーのプリンは美味しいですよ、トール王子とティルダ王女も大好物になりました」
いいねえ、二人には美味しい物や楽しい思い出を沢山体験して、大人になっていって欲しいね。
ダイニングに入って大時計を見た。
今は一時半ごろ、一時間半勉強したらおやつだな。
「おやつを食べて、お風呂に入って、五時まで勉強して帰るかな」
「男子の風呂は?」
……。
男子の入浴なんざ考えてもねえですよ。
村の共同浴場に行けや、とか思ったのだが、せっかく邸宅には立派なお風呂があるからなあ。
「先に入る? 男子のお風呂はそんなに時間が掛からないでしょ」
「お、良いな、邸宅風呂は初めてだ」
「村の……、共同浴場も……、良いが……、邸宅のも入りたい……」
男子はカーチス兄ちゃん、エルマー、ライアン君にオスカー、あとブリス先輩か。
聖女派閥には女子が多いけど、男子も増えてきたね。
「じゃあ、先に入ってきなよ」
「おお、ありがたいぜっ、行こうぜエルマー」
「そうだな……、カーチス……」
「温泉はいいねえ、オスカー」
「そうだな、心の洗濯だ」
「では、行きましょう」
ブリス先輩がそう行って、男衆は風呂場の方へと歩きだした。
ゆっくり暖まれよ~。
さて、私らは勉強だ。
ダイニングの大机に教科書やノートを広げてプリンが出てくるまでひと頑張りだ。
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