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第829話 五本指は王都へと向かう(小指視点)

Side:小指ローゼ


「聖女の首を上げる可能性はどんなもんかな」

「うひひっ、そうだねえ、甘く見積もって五%ぐらいさね」


 五本指の中で一番頭が良い薬指のミリヤムが私の疑問に答えてくれた。

 良く晴れた朝の街道はくねくねと森を抜け山中へと続いていた。

 私とミリヤム、そして中指のクヌートは平民の服を着て、三人の親子連れに化けて街道を歩いている。


「五%かあ、出来るならー、聖女さんを裸に剥いて地面に跪かせて命乞いをさせたいんだけどなー」


 相変わらずクヌートは変態でイカンね。

 お父さん役なんだからしっかりしろ。


「聖女は一番奥のターゲットだよ、そんな大勝利の可能性はほとんど無いねえ」

「つまらないなー」



 そんな事をしても意味は何にもない。


「いひひっ、私らは八割方全滅だろうねえ、王国、聖騎士団、と私らを警戒する奴らが沢山いるし、『城塞キープ』のバックアップも無くなって王都に入るのも大変だからねえ。いやはや無謀無謀」

「どこまで行けるかなー」


 親指のブルーノと人差し指のハイノ爺さんは離れて歩いている。

 ブルーノは冒険者風の姿で、ハイノ爺ちゃんは職人姿だな。


「美味しい敵はー、聖騎士団のリンダ・クレイブルと、近衛騎士団のジャック・クラウザーと、リック・ラスボーンかあ、んー、何人か殺したいなあー」

「ひひっ、一人でも殺せれば暗殺講社の名も上がるってもんだよ」

「ミリヤムは暗殺講社の名誉なんか何にも気にしてないくせに」

「まあそうだがね、いひひっ」


 暗殺講社はジーン皇国で暗殺を請け負う団体だ。

 主にスラムの貧民から子供を買って暗殺者に育てて商売をしている。

 私たち五人は講社に育てられた暗殺者ではなく、スラムでゴロツキ相手に名を上げて外様としてスカウトされた。

 腕利きのゴロツキは冒険者ギルドに入り迷宮に行くので私たちのような外様はあと一グループしかいない。


 私たち五人は魔族と人間のハーフなので冒険者登録が出来ない。

 魔界と人界の狭間に生きている半端者だから、どっちに行っても仲間はずれだ。

 人々が冒険者になって迷宮で魔物を狩るように、私たちは暗殺者になって都市で人間を狩る、そういう事だ。


 昼前、街道に人気が無くなった。

 なんだろう。


「ひひっ、お昼だから宿場街でみなさんランチかねえ」

「俺らの飯はー?」

「ひひっ、朝に食べただろう、次は夜さ」

「夜かあ、宿屋はー?」

「ひひっ、解ってるくせに、夜中まで歩いて適当な藪で寝るよ」

「いつも通りかー」


 ハイノの爺さんが近くに寄ってきた。


「悪者が見ておるぞ」


 私たち三人は周囲に目を配った。

 確かに前方の林から殺気がするな。


「山賊?」

「ああ、ああ、山賊はいいなー、うん、凄くいい、お金もってるかなー」


 そういうとクヌートは影に声をかける。


「行ってきて食い殺しちゃってー、あ、一人は生かしておいてねー」


 バウバウと影犬から返事があって、クヌートの影が三つに分かれ風のように地面を走って行く。


 歩いて行くと、林の中から悲鳴と絶叫と影犬の吠え声がした。

 影犬の影が戻って来てクヌートの影と合体した。


「おつかれさまー」


 私たちが林に入ると、バラバラになった五人の死体と両足を砕かれた一人の若者がいた。


「ひひっ、山賊?」

「なんだっ、お、俺たちを何だと思ってるっ、カエル一家だぞっ!! 報復が怖く無いのかっ!」

「こわくないなあー、だって君たち弱いもの-、アジトはどこー?」

「し、しらんっ、誰が言うかっ!!」


 ミリヤムが膝を付いて若者を見た。


「痛そうねえ、ひひっ、教えて教えて教えてよお」

「た、助けてくれ、し、死にたくないっ」


 ミリヤムは杖から液体を彼の右腕に垂らした。

 絶叫と共に煙が上がり腕が文字通り溶けた。


「アジトを教えて教えて、ひひっ」

「や、やめろーっ!! やめてくれーっ!!」

「カエルさんのアジトを教えて教えて、ひひひひっ」


 左腕に液体が滴った。

 右手の液体に火が付き燃え上がる。


「や、やめろっ、お、教える教えるから助けてくれっ、う、裏の山の中腹の洞窟にアジトはあるっ」

「ん、ありがと」


 白状してくれたお礼に私は若者の首を抜き打ちではねて、納剣した。

 チーンと澄んだ音がした。


 ブルーノとハノイ爺さんが林に入って来た。


「山賊か?」

「そう、アジトを襲って金品を奪おうー」

「ひひっ、カエル一家だって、面白い名前だね」

「まあ、良いか、食糧を買う手間が省けそうだ」


 クヌートは影犬を出して死骸を食べさせていた。

 しばらくすると何も無くなった。

 血の痕跡が少し土に残っているだけだ。


「昼食が食べられる-、人並みだあー」

「いひひ、楽しみだねえ」


 私たちは裏山を上がって行く。

 踏み分け道が付いていたから解りやすかった。


 大きな洞窟にカエル一家はいた。


「三十人ぐらい?」

「意外に大きい山賊だなあー」

「だ、誰だおめえらはっ!! な、何の用だっ、おうっ!!」

「ひひひっ、カエル親分、ガマガエルっぽい、ひひひっ」

「なんだとおっ!!」


 チン。


 カエル親分の首を落とした。

 仲間がどんどん山賊達を殺していく。

 洞窟の前はもの凄く血生臭くなった。


「弱い奴ばっかりだなあー、つまらないなあー、もうちょっとこう何とかならないかなー」

「山賊なんてそんなもんじゃよ、クヌートや」


 ブルーノが食糧を見つけた。

 ハムとパンとソーセージ。

 鳥や豚も居たが解体するのは面倒臭いので放置した。


 洞窟の奥には女と子供が沢山檻に入っていた。


「た、助けに来てくれたのっ!!」


 私たちは顔を見あわせた。


「私は近くの街の大商人ギリアムの娘よっ! 助けてくれたら褒美、褒美がでるわよっ!」

「ごめん、そういうのはやってないんだ」

「え?」


 ミリヤムが杖を振った。

 クヌートが影犬を放つ。

 ハイノ爺さんが針を飛ばす。

 私とブルーノは檻が邪魔なので手を出さない。


 洞窟に生きている人間は居なくなった。

 豚と鶏だけが鳴いていたが、そいつらもそのうち死ぬだろう。

 と、思ったら影犬がむしゃむしゃと全部食べた。

 山賊の死骸も女子供の死骸も全部食べた。

 あいつらは大食いだなあ。

 洞窟に生き物の姿は無くなった。

 ぴぴぴと鳥の鳴き声だけが聞こえた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 救いようがなく育って、救いようがなくここにあるというかんじだ
[一言] 聖女の天敵としての魔王がいる世界だしね 早く聖女ビームとか聖女ファイヤーとか習得しないと でも聖女ミサイルとか聖女バルカンはあるな
[一言] うーん・・・さすがにコイツらはいくらお人よしの聖女様といえど助けちゃいけないよなあ・・・。 さすがにそろそろこういう敵が出てくるかあ。
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