第825話 五時まで勉強したので男爵家に向かうぜっ
五時まで勉強したので終了である。
あー、よく頑張ったなあ。
うむうむ。
「んじゃ、男爵家にちょっくら里帰りだ、また明日の朝に会おう」
「明日も勉強会か?」
「当然だ、カーチス」
カーチス兄ちゃんがしょっぱい顔をした。
学生の仕事は勉強だぞっ。
「クラーク博士によろしくね、マコト」
「あいよう」
カロルに返事をして私は席を立った。
みな、教科書やノートを片付けて帰り支度だな。
私は集会室を出て、校門へと歩く。
空が暗くなってきたね。
校門を出たら大神殿方面へと歩く。
バッサバッサと音が聞こえたので見上げるとアダベルが大神殿の方へ降下している所だった。
孤児達もホルボス山から帰ってきたか。
着陸するドラゴンは格好いいなあ。
ひよこ堂の前を通る。
夕方のお客さんがほどほどに入っているな。
お、キルギスくんがパン屋の制服と帽子をかぶって接客をしておる。
クリフ兄ちゃんのお下がりか、似合ってるなあ。
可愛いぞ。
クリフ兄ちゃんと目があった、兄ちゃんは微笑んで店から出てきおった。
「マコト、男爵家に行くのか」
「そうだよ、キルギスくんはどうよ」
「なかなか良い感じだな、真面目に働くし、可愛いから奥様方からの評判もいいぜ」
好評ならば何よりだ。
「なんか俺も弟が出来た感じで嬉しいよ。お母さんが晩飯を食わせてから大神殿に帰らすって言ってるが、問題ないよな」
「ああ、いいなあ、お母ちゃんのご飯」
「お前もたまには帰ってこいよ」
「寮でご飯が出るからねえ」
「なんか凄く美味いらしいな女子寮の飯」
「すんごい美味しい」
「そいじゃ、キルギスの事はまかせとけ」
「わるいね、聖女さまのトラブルのせいで」
「気にすんなって、お前はお前の仕事を頑張れ」
「おうよ、じゃあねえ」
クリフ兄ちゃんに手を振って別れた。
ああ、いつも変わらない実家が近いのは良いね。
暗殺者にひよこ堂が襲われたらかなわないからなあ。
ジーン皇国に聖戦起こす恐れがある。
ポコポコと歩いて大神殿へと通りがかる。
大階段からアダベルが飛び跳ねるようにして下りてきた。
「マコトー!」
「アダベル、お帰り、今日は何したの?」
「広場でみんなでかくれんぼしたり、縄跳びしたりしたぞ、楽しかった」
「そうかそうか、楽しそうで何より」
「何より何より」
アダベルは手を上げて不思議な踊りを踊った。
MPが吸い取られそうである。
「そいじゃ、また明日-」
「あ、そうだ、帰りにひよこ堂を覗いて行きなさいな」
「お、なんか新作パン?」
「ちがうけど、面白い物が見れるかもよ」
「そうか、クリフが何かしてるのかな、行ってみる-」
アダベルはピューと駆けて行った。
まったく元気だなあ。
大神殿を通り過ぎて、一筋向こうで路地裏に入って少し行くとキンボール家である。
「ただいまー」
「これはこれはマコト様、おかえりなさいませ」
キンボール家の家令さんが出迎えてくれた。
学者の家で法衣貴族だが、一応男爵家なので、家令さんとメイドさんと庭師さんと馬丁さんがいる。
贅沢に思えるが、貴族の使用人というのは前世の家電に近い存在なんだよな。
下級貴族でも使用人は何人か居るものである。
「あら、マコトちゃん、お帰りなさい」
「帰ったね、マコト」
男爵家の両親が居間でくつろぎながら出迎えてくれた。
あ、しまったジャンヌお義姉様を誘うべきだったかも。
まあ、一緒に行きましょうと言わなかったのだから、何か用事があるのだろう。
私はソファーに座って両親と談笑する。
ああ、キンボール家はくつろげるなあ。
「ホルボス山にディラハンが出たようだね、大丈夫なのかい」
「甲蟲騎士団が居ますからね、あと魔法塔から雷撃魔術師を呼んでもらいましたよ」
「雷術……、アリアーヌ師かな?」
「そうです、高名な方でしたか」
「雷術師は珍しいからね」
おお、アリアーヌ先生は名前が通ってるのか。
「アンデッドだなんて、怖いわね」
「ハンナ、ディラハンはアンデッドではないよ、妖精や妖魔のたぐいだね」
「あら、マコトちゃんの光魔法は効かないでは無いですか」
そういや、そうだな。
それでディラハンか、とか思ったのだが、元よりアンデッドはテイムが出来ないか。
アンデッド使いは死霊術者だな。
ジュリエットさんのお父さんが専門であるな。
「そう言えば、ジーン皇国の皇弟が私に暗殺者を出したそうです。こちらにも聖騎士を護衛に付けて良いですか?」
「ああ、リンダ師が夕方来て、明日から騎士を付けると言っていたよ」
おお、リンダさんは気が回るな。
正直助かる。
「暗殺者なんて怖いわね、ひよこ堂の方は大丈夫なの?」
「あちらにも護衛がついてます」
キルギスくんは夜も護衛してくれるのかな?
聖騎士と交代するのか?
とりあえず、聖騎士団が護衛してくれるのは助かる。
変なのが来てもリンダさんが行けば倒してくれるだろう。
学園内の防備は堅いし、王都に暗殺者が入るのも大変だろうし、大丈夫かな?
「聖心教は皇弟閣下を破門するそうだね」
「お聞きになりましたか、効果はどんな物でしょうね」
「皇弟破門のニュースで大陸中が跳び上がるだろうね。それくらいの重さの処置だ」
破門だもんなあ。
皇弟さんには悪いが、正直助かる。
良い見せしめになりそうだ。
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